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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
9/98

掃除できませんでした。

その様子を影から覗き見る者達がいた。

松原重敏と松浦宏。

ジャックをけしかけた張本人である。


植木鉢の影に隠れ、窓を覗き込む体勢のまま、店長の松原が悪態をつく。


「くそ、何やってるんだあいつは」


少年だけを狙えという指示を無視されて、松原は若干不機嫌になっている。


「いや、でも戦略的にはありだと思いますけどね」

「ん? どうしてだ?」

「見たところあの少年には物理的な攻撃は効かない。

ならば戦う気力を失わせるか、物理的に拘束するしか、あの少年に勝利する方法は無いわけです。

あの滅茶苦茶振りを見るに、拘束の方は氷漬けにでもしない限りは不可能でしょう。

もちろんそんな準備は無い。

となれば、精神攻撃をするしか無いわけですが、少年が身を挺して庇おうとしたあの少女を殺すのは、攻撃としては非常に有用な手段かと…」

「お前……こっちよりも戦闘要員の方が向いてるんじゃないか?」

「勘弁して下さいよ。

まだ暫くは人間として生きていたいです」


…………。

二人は同時に溜息をつくと、重い腰をゆっくりと上げて、トボトボとアレクサンドロス家の庭から去って行った。


「…どうすればいいんだよ、あんなの」

「……次は液体窒素でも用意しましょうか?」

「そうだな。

確かうちの店に消火器余ってたろ。

アレに詰めるか」

「…………」

「…………」

「「はぁ…」」


一方、アレクサンドロス孤児院のリビングでは、家族総出で大掃除が行われていた。

もちろん、ジャックの死体は孤児達を中に入れる前にA太が例の腕を使って片付けた。


気絶状態から回復した麗花も、今は戦闘で荒れた部屋の掃除を手伝っている。

幸い首に少し痣が残った程度で、後遺症は残らなかった。


「いやぁファンタスティックだったぞ瑛太君は!

千切っては直し千切っては直し、最後にはインファイトに持ち込んでドーンだ!!」

「すごーい、かっこいい!!」

「それでそれで?」

「…しんだの? そいつ」

「どうせまた嘘だろ。

そいつの死体も無いし」


バースはA太の武勇伝を孤児達に熱く語っていた。

そこに芽衣の飛び膝蹴りが入り込む。


「こらっ、アンタも遊んで無いで手伝いな!」

「………母様の言うとおり。

それに父様、彼が迷惑そう」


麗花の言うところである彼が手を振る。

どこからとも無くひゅーっと鳴る口笛の音。

この孤児院に来てから一時間足らず、彼は既にアレクサンドロス家にとって、子供達と麗花を救った英雄であった。


「おや、こんなところに。

ハッハッハッ!

瑛太君、棚の裏に無限プチプチが落ちていたぞ!

潰すかい?」

「今この手で押すと、二度と押せなくなっちゃいそうなんで遠慮しときます」


芽衣の蹴りが再びバースを襲う。

バースの呻き声を聞きながら、A太は鈍く輝く自分の腕に視線を落として、一人呟いた。

「どうしよう、これ」

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