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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
8/98

完 ジャックされそうです。

「ああ、不快だ。

そんな時は人間を殺すに限る」


ジャックは舌舐めずりをすると、もう既に意識を失ってしまった麗花の細い首に手をかける。


「待て!」


A太がジャックの腕にしがみつく。


「なんでしょう?

今私は不快なんです」

「殺すなら僕にして下さい。

貴方を不快にさせたのは僕だ。

この子は何もしていない。

それに、さっき見て貰った通り、僕なら何度だって殺す事が出来る。

存分に殺せますよ」


声が上ずりそうになるのを必死に抑えて、A太がジャックに訴えかける。


「成る程……筋は通っていますね」

「でしょう、だからその子は…」


A太の言葉をジャックが遮る。


「私はね、休日なんかは良く雑貨屋に行ったりするんですけど、絶対に一つだけ買わない物がありましてね。

なんだと思います?

無限に潰せるプチプチの類です。

いえね、梱包材のプチプチはいいんですよ。

寧ろ大好きです。

でも、無限プチプチは許せない。

潰しても、何も残らないからです。

最初のうちは楽しいかもしれない。

でも、飽きたらそこでお仕舞いなんです。

潰した記録すら残らない。

無限プチプチを潰す事に使った全ての時間が否定されてしまう。

…そんな気がしませんかね。

つまり何が言いたいのかと言うと、貴方を殺してもつまらない。

だって、貴方が死んだって誰も悲しまないのだから」


ジャックの長ゼリフの合間に、A太はポケットから注射器を取り出して、それの中身を後ろ手に注射していた。


(こんなの一生使わないと思ってたけどね)


「さあてと、それじゃあジックリと頂きますか。

ほらほら、見てくださいよ。

少しずつ首が締まっていきますよ!」


しかし、ジャック以外誰もそこを見てなどはいなかった。


A太の腕に、バースの機関銃の弾が次々と送り込まれている。

毎秒100発という恐ろしい速度で発射され続ける弾丸は、一発もA太の腕を貫通することなく、次々と腕の中に飲み込まれていった。


説明しよう!

A太が打った注射器の中身は、超強力な毒薬である。

ありとあらゆる毒物に抗体をもつA太ですら、常に即死し続ける程の恐ろしい毒なのだ!


この毒薬には副作用がある。

A太の持つ再生能力を限界まで高めるのだ。

つまり、今のA太は死んで生き返ってを、周囲が観測出来ない程の速さで繰り返しているという状態だ。


加えてバースの機関銃だ。

弾丸を腕に当て続ける事により、腕の細胞を集中的に死滅再生させる。


これらが組み合わさると何が起こるのか。

それは進化である!

A太の腕は死と生の末に、現存する生物では本来あり得ない筈の進化を成した。


大量の鉛を飲み込んだせいか、鈍い銀色に輝くそれは、表皮を目に見えない膜が覆っている。

反物質とでも呼ぶべきその膜に最後の一発の弾丸が触れると、まるで手品のように弾丸はこの世から消え失せてしまった。


これならいける。

A太はそう確信すると、ハッキリとしない意識のまま、麗花を掴む腕を千切るべく、ジャックに殴りかかった。


ジャックは楽しんでいた。

キュウという、麗花の口から漏れる音。

少しずつ色を失って行く頬。

体温。

硝煙の匂い。

それら全てに全神経を集中して楽しんでいた。

戦いの場においては似つかわしくない油断。

それも当然であった。

何故ならこれは、余りにも強大過ぎるジャックにとっては、戦いなどではなく一方的な殺戮でしかないからだ。

自分を殺すどころか、あの矮小な人間どもは自分の髪一つ抜くことが出来ない。

ほんの数秒前まではその筈だった。


「ぎいえあああぁぁあ!?」


A太の腕が、ジャックの腕を肩ごと消し飛ばす!


握力を失ったジャックの掌から、麗花が解放される。


「い、いだいッッ!!

いいいいいだあああああぁぁぁイイいいいいい!!?」

「その様子だと、骨折とかした事なさそうだね。

…流石に可哀想だから、楽に終わらせてあげるよ!」


ズボッ。

首から上を失ったジャックの体は、痙攣したカエルのような格好のまま、ぐしゃりと崩れ落ちた。

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