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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
78/98

起床

ひたひたと歩く三人と一体。


「お願いします、ジャックさん。

必ず、確実に……」

「仰せのままに」


呆れた調子で溜め息を吐く麗華。


「………結局最後まで人任せ。

腐ってるわ、あなた達」

「ぶっ殺すぞ小娘」


自嘲気味に楓が微笑む。


「どう考えても、この中で一番人を殺すのに向いていないのは私。

人に任せるのは合理的な手段です。

私はあいつが死ぬところを見られればいいの」

「………貴女の目指すものが、またわからなくなった」

「私にもわからない。

けれど、これだけは言えます。

もう、二度と……」


楓の言葉が遮られる。


「着いたぞ。

だが、その前に、伝えなければいけないことがある」


荘司郎が楓をじっと見据える。


「なんでしょう?」

「さっきから物騒な話をしていたが、ここであの老人を殺しても、まるっきり無駄なのだ」

「え?」

「その、突然こんなことを言われても、ピンとは来ないかと。

だが、なるべく正確に伝えるとするなら、そろそろこの世界はリセットされるらしい。

確か……よし…だ? だかが来る前の世界に」


二人と一体は、お互いに顔を見合わせる。


「吉田さんって、どなた?」

「………リセット?」

「まるで要領を得ていない説明ですね」


荘司郎が犬のように頭を振る。


「ああもう!

与那城博士が直接話す。

だから、少し殺すのを待ってほしいのだが」

「いえ、その必要はありませんよゲストの方」


まるで最初からそこに存在していたかのように、ありふれた形の扉に寄りかかりながら伯瑛が手を振った。


「もう既に全工程が終了しています。

それが何かを理解するまでも無く、あなた方はそれに巻き込まれる」


無表情で、楓が手を振り下ろした。

ジャックが全細胞を凶器へと変換し、その身そのものを弾丸にして伯瑛に襲いかかる。

しかしその攻撃は伯瑛をすり抜け、その奥の扉を跡形も無く消滅させるだけに終わった。


その扉の奥の光景があらわになる。


「少し早くなってしまいましたが、今世界初披露ですね。

これが、生物の可能性の極北です」


シリンダーのなか 


「……え?

何、あれ」

「………瑛太?」


「良くご覧になってください。

これが極限に至るまで死と蘇生を続けた生命の姿です。

口と鼻は退化し、呼吸は全部位の皮膚でのみ行い、生命の維持に必要な食事も、体内の老廃物を再利用して、再度栄養源へと変換するため必要が無い。

感覚器官として、まず目につくこの頭部の複眼付き体毛ですが、これがまた素晴らしい。

この毛はスプリング状の組織で構成されていて、有る程度の伸縮が可能でして」


「うるさい!!!」


「同じ実験体同士の感情移入ですか?

いやあ、君も人間らしくなった」

「あなたは、また、そうやって、人を玩具にして。

ああ、ああああああああ」


「あまり時間が無いので、続けさせていただきます。

まあ体毛は兎も角として、何よりもこの生物のすばらしいところは、プラナリア由来の自己複製能力でして」


「ほら、こうやって切ると、幾らでも増えていきます。

しかも増えた部分によって重心が崩れてしまわないように、四本足の筋肉量が自動で可変するというのだから驚きです。

それにしても、ジャックさんと言いましたか、貴方には感謝していますよ。

貴方が実験体Aに与えた足。

アレが素晴らしかった!

此処まで既存の生物の枠を超えて形状が変化したのも、貴方様のお陰でございます」

「わ、わた、私がこの化け物を、産み出した?」

「左様でございます。

いやあ、無脊椎動物と既存の哺乳類に近い姿を行き来しながら、最終的にこの発条動物とでも言うべき姿に変化する様は、それは大層圧巻でございました。

リセット後の世界では、みなさんにはこの姿を是非とも目指して頂きたい」


「ほら、実験体A。

3億年前の生物達だよ」

「やめろ!

開けるな!

それを近づけるんじゃない!!」

「あああああああああ」

「うお……え」


「………きれい」


「おや、貴女はよくわかっていらっしゃる。

……動きだしましたね」

「………どこに行くの?」


「………待って、瑛太。

置いてかないで」


「………これ、瑞希さんの」


「………そう。

わかった。

手伝ってあげる」


「………大丈夫。

きっと、大丈夫。

だって、あなたは私とは違うもの」


「………あなたは、どんな形でもあなただった。

だからきっと、これから何が起きても、あなたはあなたでいられる」


「………本当に綺麗。

生き物が溢れていく。

みんな、生きてる」


「………またね。

また、会えるよね?」















じりじりじり。

機械の立てる音が頭にこびりつく。

薄く目を開けた。

いつもの薬品臭い部屋の中で、私は一人、数年ぶりにあくびをする。


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