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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
67/98

嫌気がさしました。

「私、もうやだ!」


徐々に人が減っていくリビングの中、木葉が突然に声をあげる。


「だって、私じゃ無いんだもん。

私じゃない私なんて、ずっとここに残ってても仕方ないよ」

「木葉……」


木葉がさっきまで座っていた、年代物の椅子を蹴り飛ばす。


「木葉までこうなってしまえば、私が残る必要もありませんわね」


沙希は音を立てずに、飽くまで上品に椅子から立ち上がった。


「全く、はしたないですわよ」

「はしたなくもなるよ!

人生ってマジクソゲー!!」


A太に抱きついて涙と鼻水を服に擦り付ける木葉。


「もっと色々したかったよ!

私、キスもまだなんだよ!?

なんで死んじゃったの?

私が弱いから?

私が瑛太みたいに強くなかったから?

ねぇ、教えてよ……」

「そう……かもしれない。

事実、僕はあいつらのうちの一人を倒した……筈だ。

でも、君が自分の弱さを恨むなんてのは、間違ってるだろ。

だって、僕以外、あいつらに勝てた生き物今のところいないんだ。

君が弱いんじゃなくて、あいつらと僕がおかしいんだ」

「でも……」


「木葉!」


沙希の良く通る声が、ピシャリと木葉の鼓膜を打った。


「貴女はあの時最後の最後まで抵抗しようとした。

私は、私にはそんなことできなかった。

貴女は充分に強かった。

……この話はお終い。

今は、なるべく瑛太様の重りにならないよう、穏やかに逝く事を考えましょう」


そう言うと、沙希はその言葉の通りに穏やかな微笑みを浮かべた。


「随分、落ち着いてるんだね、沙希ちゃんは」

「瑛太様が、ここにいるからこそですわ。

一番好きな人の側で消える事が、出来る、なんて、わた、わたし、は……」


音もなく、沙希が消えた。


「……すごいなぁ、沙希は。

最期まで笑ってたよ。

私、泣き虫だ」

「うん」


A太はそれ以上何も言えなかった。


「バースセンセのこと、お願いね」

「できれば嫌だけど、わかった」

「ぜ、絶対だかんね!?」

「わかってるって」

「嘘ついてない?」

「嘘はつかないよ。

僕は人間じゃないからね」

「なにそれ、わけ、わかんないよ」


A太は、丁度木葉の顔が有った辺りを撫でてみた。

何の感触も帰ってこなかった。


「さて、バースさん。

この部屋にはもう、僕と貴方以外には誰もいない。

本当は狂ってなんていないんだろう?」

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