表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
66/98

振り返る事にしました。

「なあ、バースさん。

躯呑も、消えちゃったよ」


A太の力ない呟きは、独り言で終わった。

バースも他のそれと同様に、まるで人形のように動かなくなってしまったからだ。


「わかった。

じゃあもう、忘れる事にしよう。

僕は人間じゃないからね。

忘れたっていいのさ」


色々なものを置き去りにして、A太はリビングから外に出る。

廊下の赤黒い染みがA太の視界に入った。

その先に行くには、それを踏み越えなくてはいけない。


「……ああ、もう、わかったよ。

わかってる。

僕は人間が好きだ。

人間じゃないけど、でも人間に限りなく近い何かになれたらと思っている。

だったら、人間の真似をできる限りしなくちゃいけないんだ。

そうだろ?」


「人間は自分の親の血痕を踏みつけたりしないし、トラウマは一生忘れない。

僕は人間のそんなところが好きなんだ」


振り返ってA太はリビングのドアに手をかける。

微かに軋む音。

溜息のような呼吸。

ドアが開いた。


「木葉」


返事は無い。


「沙希」


やはり返事は無い。


「荘司郎君と躯呑ちゃんと鈴音ちゃんは居ないから、えっと良……なんだっけ?」

「なんで俺の名前だけうろ覚えなんだ」


返事があった。


「君の名前だけ特に特徴が無いからさ。

もう少し躯呑ちゃんを見習いたまえ」


ニヤリと笑う良治。


「それは俺の親に言え。

ったく、失礼な奴だな。

でも、確かにそんな奴だった」


A太も笑う。

いつもの気味の悪い笑顔だった。


「なんで俺らの名前を呼んだんだ。

つい、声出しちまっただろ。

俺らの事なんか忘れて、さっさと生き返れよ」

「忘れたくないからだ。

いや、忘れようもないと思うけどね」

「身勝手な奴め」


良治は喋り疲れたかのように、ゆっくりと溜息を吐く。


「ありがとうな。

このままずっと、生きてるのか死んでるのか分からねぇ状態でいるところだった。

……あ、そうだ。

最後に教えてくれよ。

荘司郎が与那城から帰った時、どうして変にはぐらかしたりしたんだ?」


少しの躊躇いの後、A太はそのまま伝える事にした。


「与那城瑞季。

僕を作ったあの人は、荘司郎君が日記を持ってくる前には、もうここにいたんだ。

けど、それをみんなの前で直接伝えるのは、その……」


ぷっ、と良治が小さく吹き出す。


「なんだ、そんなことかよ」

「そんな事って!?」

「もっと色々、裏で悪い事してんのかなって思ってた。

お前、案外人間くせぇんだな」

「良治君の中の僕は、いったいどんな化け物だったんだよ」

「叔母さんを殺したのは実は僕でしたー……まである」

「ないよ」


人差し指で頰を一掻きする良治。


「そっか、ちゃんと考えてくれてたんだな。

だったら、後の事任せても問題ねぇか。

木葉と沙希の話も、ちゃんと聞いてやってくれよ。

それと、芽衣の奴はいつもの寝室で寝てる。

最後に、荘司郎だが」


最後まで言い終えずに、良治は元々そこに居なかったかのように消え失せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ