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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
65/98

忘れられない事ばかり起こります。

「あーあ、また来ちゃったよ」


がっくりと項垂れるA太。


「五万二千三百二十一」


自分が死亡した回数を地面に刻む。


「キルレシオ0.0008くらいかな」


くだらない事を呟いて、この道の先にあるものについては考えないようにする。


いつもの鼻歌を歌いながら、A太は歩く。

20回程繰り返したところで、それなりに正確だった音程がズレ始めた。

A太の視界の中一面に、アレクサンドリア邸が広がる。


胃の奥から何かが競り上がって来る感覚に耐えながら、A太はアレクサンドリア邸の玄関を潜った。


「おや、おかえり瑛太君」

「……ただいま」


相変わらずバース達は食卓に座って、おままごとでもしているかのように、見えないクッキーを貪っていた。


鈴音がいない事にA太は気がつく。


「おお、tasty.

I'll so good.

Holy shitを退屈するんだ」

「あの、バースさん。

鈴音ちゃんは?」

「すずね?

何だね、そいつは。

きっといい音がするだろう」

「……なんだよ、それ」


A太はバースに掴みかかる。


「アンタ、おかしいよ!

そりゃ、家族がみんな殺されたら、狂いたくもなるかも知れないけど、けどさ!」

「………」

「自分が狂った原因を忘れるってなんなんだよ!

鈴音ちゃんが、みんなが死んだから、何も抵抗できずに殺されたから、死ぬ程哀しくて狂ったんだろ!?

みんな狂ってるよ。

僕からしたらみんな狂ってる。

でもバースさん!」


バースはベルトに拳銃を差していた。

A太はそれを抜き取って、バースの額に突き付ける。


「自分がどうして狂っているのか、それを何処かで分かっていながらみんな狂っていたんだ。

それが、人間なんだと僕は思った。

でも今のバースさんは、どうやら人間じゃないらしい」


A太は手を震わせながら、人差し指に力を込めた。

しかし、引き金を引ききる事は出来ない。


「……どうして」


拳銃の銃口を躯呑の手のひらが握りこんでいた。


「どうしてって、自分の親が殺されそうになったら、こうするしかねぇだろ?

いや、親じゃあないんだけどさ」

「躯呑!?

喋れるのか?」

「取り敢えずその物騒なの仕舞っておくれよ。

ちゃんと全部話すからさ」


A太はバースのベルトに拳銃を戻す。


「この人もなんでこんなところにまでこんな物持ってきちまったんだろうな」


ふうと溜息をついて、テーブルの上に足を組んで躯呑が座る。


「悪いけど時間があんま無いんだ。

伝え切れるかわかんない。

なるべく適当にやるよ。

まず最初に、鈴音は消えたよ。

なんつうかな、ここではまともにその人らしく振舞うと、消される仕組みになってるらしいんだ。

だからみんな怖くて黙りこくってる。

アンタ以外のまともな奴は自分で自分の首切ったりしないだろ?

それと同じ事さね」

「だったら君は……」

「んで、バース先生は確かにイカレチャッテルけど、あの銃のメンテナンスだけはいつも欠かさないんだ。

なんか残ってるんだと思う。

どうにかして……ってもう時間かよ」

「待ってくれ!

消えるって、一体、何処に……」


ごめん、と小さく呟いて、躯呑はA太の頭の後ろに手を回した。

そのまま顔を近づけて、唇の先と先を合わせる。

柔らかい感触がA太の脳に伝わる前に、躯呑は体を離した。


「一回はやってみたかったんだ。

……瑛太でよかったよ。

最後にあたしの本当の名前、教えたげる」


「螺8B層苑躯呑@類。

笑っちゃうだろ?

バグってたんだ」


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