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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
64/98

死にたくありませんでした。

『………松原重敏が死んだ。

今まともに動けるのは私とあなただけ』


A太は肩をすくめる。


「結構淡々とした調子でとんでもない事を言うね」

『………首謀者が死んだ。

やめるなら今』

「僕も首謀者だ。

もっと言うなら全員首謀者だ」


麗華が敵の移動をデータベースから確認する。


『………敵の座標が接近!

対象は一人』

「こういう話をしている場合じゃなさそうだね」


薄暗い通路の中、A太は自分の足を使って横に跳ぶ。

敵は着地の瞬間を狙って麻酔弾を打ち込もうとするが、A太が跳んだ先は片隅に積まれたダンボール箱の奥だった。


箱の中に吸い込まれる銃弾。

A太のうなじから10センチメートル後ろの位置で銃弾が止まる。


男が銃を抱えて走る。

A太が辺りを見回すと、ガラス窓が視界に入った。


A太は深呼吸を一つすると、頭から窓に突っ込む。

甲高くけたたましい音が通路に鳴り響き、ガラス窓に大きな穴が開いた。


そのままの勢いで、A太は窓の外に飛び出す。


「うあっ、と」


すんでのところで、窓のヘリを掴むA太。

窓の下にぶら下がる。


男が走る音が薄暗い通路の中に響く。

A太は反動をつけて壁を蹴り上がり、今度は窓の上に通されたパイプに掴まった。


割られた窓を見て、男が銃を構えながら下を覗く。

銃口が下を向いた。


A太がパイプから手を離す。

落下しながら麻酔弾のこめられた銃をひったくった。

A太の体重全てが男の両手を引きずる。

耐えきれず、男は手を離した。


落下しながらA太は銃口を敵に向ける。

身を乗り出した敵に向かって、A太は引き金をひいた。

弾の先端部分の針が、男の額に突き刺さる。

男は筋肉を弛緩させて、窓の外に体を投げ出した。


A太は後悔した。

できれば死にたくはなかったのだ。

死ぬ過程による恐怖や痛みよりも遥かに恐ろしいものが、今のあの世界には存在していた。


地面に頭を打ち付けるA太。

それでも必死に意識を保とうとするが、その更に上から落ちてきた敵の体に押し潰されて、A太は死亡した。

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