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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
61/98

世界はどこにあるのか?

「………ここは」


恭蔵は困惑していた。

突然、志倉との再開を果たしたと思えば、白い靄とポッキリと折れてしまいそうな細い石橋しか存在しない、この奇妙な空間に飛ばされたのだから無理も無い。


「おい、芳乃。

いるのか?」


恭蔵が楓と出会ってから、恭蔵の呼び掛けに楓が応えを返さない事はなかった。

しかし、今回ばかりは静寂だけが恭蔵に返事をする。


暫くしてようやく恭蔵は、自分の死に間際の事を思い出した。

体を掻きむしって、幻覚の炎を振り払う。


「クソッ!

熱い!!

なんなんだ!?」


痛みが治まって、少しずつ恭蔵が自分が置かれている現状を整理し始める。


志倉に体を焼かれた事。

それが夢などでは無く、紛れも無い現実だったこと。

自分が確かに死んだこと。

その後意識が戻ったら、見覚えの無いこの謎の空間に自分がいたこと。


それ以上はわからなかった。


「そういえば、あのデータにダストボックスという項目があったな。

俺は、捨てられたのか?

……芳乃。

いないんだろう?

頼むから返事を返してくれるなよ!」


やはり返事は無い。

そのことが恭蔵に安堵をもたらした。


「こうしていても仕方がないか」


恭蔵は橋の下に足を滑らせないように、慎重に前へと進んでいく。


歩きながら恭蔵は考える。

志倉は何故自分を殺したのか。

そもそも何故あの場所にいたのか。

……なぜマンションに火をつけたのか。


あまり考える時間は無かった。

何故なら志倉本人が恭蔵のすぐ目の前に現れたからだ。


「大家……」

「志倉です。

いい加減覚えて下さい。

…………なんて、昔みたいなやり取りがまた出来るとは思いませんでした」

「志倉。

俺が、怖いのか?」

「怖……かったです」

「なら良かった」


お互い気まずくなって、言葉に詰まる。


「いつもみたいに我輩って言わないんですか?

なんか違う人みたい」

「芳乃がいないからな。

魔王である必要も無い」

「それは悲しいなぁ。

アレ結構好きだったんですよ。

まあ、死んじゃったから、それもこれも、こんな気持ちもどうでもいいのかも知れないけれど」

「待て、早まるな。

まだこうして自分の意思で会話ができているだろう。

心を捨てるな!

そう忙しないからお前はあんな事を……あ、いや」

「怖かった。

本当に恐ろしかった。

私も皮を内側からひっくり返されて、腕を足の位置にくっつけられて、滅茶苦茶な腐った生き物にされるって思った。

本当に、本当にごめんなさい。

そこからは良く覚えてないの。

覚えてるのは、熱かったってことだけ」


結局のところ原因は、魔王として人間を魔物に変えた自分にある。

恭蔵はそう考えた。


「はは。

なんだかんだで悪行は巡り巡って自分に返ってくるものだな。

嫌な仕組みだ」


「そうだね。

ごめんね。

私はせいぜいこの世界の歯車にしかなれなかった」


唐突だった。


「あ、消される」

「消される?」

「どうしよう。

釜谷さん。

もっと、もっと怖いのが来るよ。

怖い、怖い、怖い、こわ」

「」

「」

「」


「……………クソッタレ」


恭蔵は上を見上げる。


「おい、聞こえているか!

お前らがどこの誰かは知らないが、俺は俺が誰だか知っている。

俺はそっちからしたら、せいぜい数行の英数字の組み合わせでしかないのかもしれない。

だが、俺だって、俺にだって俺の世界があった。

そこには俺がいて、芳乃もいた。

俺を消すのはさぞや簡単だろう。

だが俺からしたら、それはとんでもないことさ!

だって、俺がいなくなったら、芳乃はどうなる?

俺の世界征服は誰に託せばいいんだ?

あああ、クソッタレ!!

怖いさ。

怖いに決まってるだろ!

長いな。

よくこんな長ったらしい戯言を聞いてくれたもんだよ。

ありがとう!

最後に言わせてくれ」


恭蔵は思いっきり息を吸い込んだ。

涙が何処かへと消えていく。


「インマイヘッド!!」


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