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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
58/98

夜の始まり。

「みんな、みんなどうかしている」


このまま作戦に移るのは危険だと考えて、A太は暫定的にこの集団を仕切っている松原の元に向かう。

事務室の扉を開くと、松原が頬杖をついて窓の外を眺めていた。


ゆっくりとA太の方へ振り向く松原。


「改めてありがとうな。

少年がいなければ、俺たちはなんだかんだで死んでたかもしれない」

「あの、僕はまだ正確には理解していないけれど、みんなの様子がどこかおかしい。

いや、どうかしてる。

少し決行の時間を延ばした方が良いと思います」


にやりと松原が大きな顔を歪ませる。

銀歯がちらりと光った。


「おっさんには、どうもしていないように見えてるんだよな。

ただ、俺らは改めて自分を再確認した。

あの少女が使った良くわからん魔法でな。

そしてこの世界の姿もハッキリした。

俺のやるべきことも。

やっぱ間違っちゃいなかったんだよ」

「僕には間違いだらけに見える」

「少年、俺も最近になってわかったことだがな、人間に間違いなんてねぇんだよ。

俺達が今殺そうとしてる奴らだって、間違ったことをしてるわけじゃない。

ただ、やってることが気にくわない。

お前もそうだろ?」

「僕は、ただ生きるために殺すだけです」

「つまり、お前は死にたくないから殺す。

奴らに殺されたくないから、奴らを殺すんだ」


松原が湯呑みから茶をすする。


「それには、正解も間違いも無い。

やっぱそうだったんだよ。

誰も気なんて狂っちゃいないし、正気なんてものも最初から無かった。

ただ、あいつらは少し素直になっただけなんだ。

お前には、そういうの無いのか?」

「僕は、人間じゃないから」

「じゃあ人間なんてものもねぇさ。

何もねぇんだよ、ここには。

ただ、数式が勝手に動いて新しく別の数式を作り続けてるだけだ。

そんなことより大事なのは、お前がどうしたいか。

それだけだろ。

世界の仕組みだって、それと比べちゃあどうってこと無いもんだろ」


A太は考えた。

自分は何をしたいのか。

何をしたいが為にここにいるのか。


A太は気がついた。

自分が人間に憧れていたことに。


「そういえば、研究所で見ましたよ。

人間になりたがる妖怪のアニメ。

凄いなって思いました。

だって、僕には人間がどういうものなのかすら良くわからない。

なりたくったって、僕には……」

「じゃあ、丁度いいんじゃないか?

今の俺達は、多分この世界で一番人間臭い」


松原は全員を呼び出した。


「今更だけどよ。

こんなおっさんが本当にまとめ役で良いのかよ」

「我々が一番この問題に長く取り掛かってきました。

問題無いでしょう」


誰も言葉を発さない。


「よし、わかった。

俺達にはそれぞれ理想がある。

それがようやくハッキリした。

そしたらそれを実現するための手段がたまたま全員同じだった。

それだけだ。

だが、これ程面白いこともそうそう無い。

御託はここまでだ。

そんじゃ、とりあえず神様殺しに行こうぜ」




「よし、全部持ったか?」

「僕、こういうの趣味じゃないんだけど」

「………」

「私には何も無いんですか? 

魔王様?」

「貴様は我輩の為に生き残ることが仕事だ」

「釜谷さん?

そういうのはファンの見ていないところでやっていただけると、無駄な殺生が減るのですが」


ある者は夜の散歩に出掛けるかのように、またある者は会社に出勤するかのように、また違う者は夢遊病患者のように、与那城研究所へと歩き出した。




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