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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
57/98

盗み聞きしました。

「死にたくない」


生還したA太が始めに発した言葉である。

もう二度と死にたくない。

生まれて初めてA太はそう思った。


A太は口を便器の上に近づけた。

その後で吐くものが無いことに気がついて、A太は首を引っ込めた。


「自分が何者か、本当にわかってる?」


A太がトイレの外に出ると、楓の声がどこからか漏れ聞こえてきた。


「………わかっている」

「そう……私はわからなくなった。

ううん、その話は今はどうでもいいの。

私の感情は関係無い。

あなたは、この世界からバグを取り除く修正プログラム。

そうですね?」

「………そう」

「あ、ごめんなさい。

わたし、あまり人間と話したことがないから……今凄く酷いことを言ったかもしれない」

「………つづけて」


「えっと、あなたがさっき使ったguelnila。

アレがなんなのかわかります?」

「………私の敵。

そして私そのもの」

「え?

う、うん、そうですね。

guelnilaはあなた達……じゃないんだよね…この世界の住人である私達、自動プログラム記述ユニット、つまりここの人間が作り出したバグ。

だから、あなたはguelnilaを壊さなきゃいけない。

これは、合ってる?」

「………間違ってる。

khajatlughaは、guelnilaが私になることを認めた。

khajatlughaは………死んだ」


「良かった」

「………え?」

「あなたはもう私達の敵ではないってことね。

ふふ、良かった。

あ、でも、どうでも良かったのかな。

どうせ私は私じゃないんだから、あなたに殺されても。

……ううん、違う! 違うの!!

私の感情は関係無い。

私は魔王様の奴隷。

もう、それだけで良い。

そっか、ありがとう麗華ちゃん!

私、あなたのおかげで気がついた。

私は魔王様の奴隷だったんだ。

それしかないんだ!

それって、とても、素敵。

魔王軍万歳!

ありがとう麗華ちゃん!

ありがとうkhajatlugha!

死んでくれてありがとう!!」


乱暴な勢いで、楓がボイラー室の扉を開けて外へ飛び出す。

A太は部屋の中を覗き込む。

そこには、ついさっきまでA太が嫌というほど見た、生気を失ったあの目つきをした麗華がたたずんでいた。


「………死んでしまったの。

私の全てだったあの世界が、全て死んでしまった。

貴方は、残り香」


ふらりと麗華の体が揺れて、A太にもたれかかる。

執念の塊のような、熱く、荒い吐息がA太の耳朶を舐め回す。


A太はそれを振り払った。


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