着きました。
「へぇ、じゃあ僕のいとこって事になるのかな?」
「………そうみたい。
アレクサンドリア麗花。
………宜しく」
「ハーフさんなんだ。
ギャルゲーなんかだと、メインヒロインよりも人気が出るサブヒロイン枠だよね!」
「………ぎゃる、ゲイ?」
「僕は与那城瑛太ってことになってるんだ。
宜しくね」
「………?
宜しく」
何だかんだでお互いの誤解を解いたA太は、少女の案内でようやく目的地に辿り着く。
「………ここ、私の家」
看板に書かれた『アレクサンドリア孤児院』の文字。
その風貌は孤児院というよりは、西欧風の豪奢なお屋敷のようだった。
景観ぶち壊しである!
巨大な庭の奥、これまた巨大な玄関の前に自動小銃を構えた屈強な男の姿。
「むっ!?
そこの貴様、俺の娘に何をしている?」
彼こそがアレクサンドリア家の大黒柱、バース・F・アレクサンドリアである!
「返答次第ではこいつをぶっ放すぞ!!」
バララララララ!!
「あびゃびゃびゃびゃあ!?」
「父様!
もう既にぶっ放しています!」
「おっと、ソーリーソーリー。
モデルガンを持ってきたつもりが本物と間違えてしまったよ。
ハッハッハッ!」
バラララララララララララン!
「笑い事ではありません!
いえ、それより撃つのを止めて下さい!」
…数分後。
「ヘイ、ボウイ。
立てるかい?」
「おっとこいつはどうも」
差し出されたバースの手を取るA太。
「………父様、もう少し驚いても良いと思います」
「ん?
何にだい、麗花」
「………何でもありません」
麗花が事情を説明する。
「!?
なんだとぅ?
あの、ミス瑞希の子供……!?
そんな馬鹿な…」
「………そっちには驚くんですね、父様」
「んしかし、そういう事なら安心してくれ。
なんてったってウチは孤児院だからな!
ハッハッハッ!!
ま、金は取るがな!
ガッハッハッハッハ!」
バースの笑い声に釣られたのか、孤児院から子供達がちらほらと顔を出す。
A太は子供達にとある特徴がある事を瞬時に見抜いた。
「ところでバースさん…」
「おう、なんだ?」
「あの子達が着ている服は、一体……」
子供達は、圧倒的に幼い少女の比率が高く、また、少女達は全員が画一的な服装をしていたのだった。
レースのついたカチューシャ、モノトーンのブラウス、純白のエプロンと黒いオーバーニーソックス。
そう、所謂メイド服である。
しかも、本来のそれとは違う、所謂オタクの方々が喜ぶような露出度の高い代物だった。
「あれは、だな。
ウチの制服だ。
勿論…」
仁王立ちでバースは堂々と言い放つ。
「俺の趣味だ!!!」
「……バースさん」
「……ボウイ」
二人は固い握手を交わす。
それはさながら死線を何度も切り抜けた戦友同士のように。
「………もうついていけません」