見られてます。
「随分長く死んじゃってるみたいですけど、何してるんですかね彼?」
麗華の視界が端の方から次第に内側へと暗転していく。
「………町を見てくるって言って出掛けてた。
なんで死ぬのかがわからない。
へええ、ま、どうでもいいですけどね。
………じゃあ聞かないでよ。
はいはい。
さて、そろそろ…それでは心の準備を」
麗華の視神経に鋭い痛みが走る。
「うぐッ!!」
火花が散り、接続が完了した。
「………何、これ?」
辺り一面に濃い霧がたちこめ、微かに見える石のような素材で出来た地面は歩くだけでポッキリと折れてしまいそうな程細い。
その下はただただ白く霞んだ何も無い空間が広がっているだけで、そこに落ちたら助からないであろうことは容易に想像できる。
A太はそんな中を悠々と歩いているようだった。
「黄泉の国的な何かでしょうねぇ。
ご主人は生きながらにしてそこをみた世界初の人間ってなわけです。
いやぁすごいすごい」
変わり映えのしない景色の中を、A太はひたすら歩き続ける。
麗華は視界の左下だけを元に戻して、壁掛け時計の時刻を確認した。
もう既に五分が経過している。
「………ずっと死に続けてるっていうこと?
でしょうねぇ。
でも、これだけ長く死に続けるって相当なダメージじゃないですか?
車に轢かれたとか、そういうわけじゃなさ…あら?
ご主人、あれ、見えます?」
カジャが麗華の視界にポインタを表示させる。
その場に似つかわしくない赤色の矢印が示す先では、少し広めの足場の上に、顔以外の部分を鎖でぐるぐると巻かれた女性が横たわっていた。
突如A太が走り出す。
「きぁッ!」
ずるりと足を滑らせ転落しかけたが、通路の端を掴んでなんとか持ちこたえるA太。
「落ち着いて下さいご主人。
例え落ちてもご主人が死ぬわけではないですからね。
………彼はどうなるの?
さぁ?
死ぬんじゃないですかね?
ってか、あの人、どこかで見たような…」
女性に近づくA太。
その女性は、
「………瑞穂姉さん…?」
与那城瑞穂、その人だった。




