表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
22/98

我輩が魔王である。

「魔王様、アレですね」

「ああ、儀式を執り行う」

「え? ええ?」

「大家はテレビでも見て待っていてくれ。

行くぞ、芳乃」


部屋に一人取り残される志倉。


「ひ、一人に、なっちゃった」


玄関からポーズを決めてシュタっと飛び出す恭蔵。

そして一言。


「で、井上だかなんだかの部屋はいずこか?」


今一決まりきらないのであった!


「302号室ですよ、魔王様」

「ほう、良く知っていたな」

「入居した初日に、各住人の氏名年齢と部屋番号、ついでに体重とスリーサイズを把握しておきました。

そうでなければ魔王様の下僕など、とても務まりません」

「でかしたぞ。

因みに大家のスリーサ…」

「302号室の場所がわからない?

まったくこれだから魔王様は…。

ほら、こちらですよ」


恭蔵の腕を引っ掴み、強引に引き摺る楓。

その原動力は主に志倉への嫉妬である。


302と書かれた扉の前に立つ恭蔵と楓。


「ほう、これが奴の住処か。

随分としみったれているな」

「ウチと何ら変わりありませんけどね」


恭蔵は意外にも現世の作法に倣いドアベルのボタンを押す。

出てきたのは、神経質そうな顔つきの、頭の禿げた小太りの男だった。


「あぁん? なぁんだぁてめぇら?

いっつもいっつも変なこと騒ぎやがってうるっせぇんだよ…」


楓が片膝をついたのを合図に、恭蔵が呪文めいた言葉を呟きだす。


「conktfuvufut

…rsgy…zot……」

「なんだよブツブツうっせーな。

いいたいことあぁるんだっあら、ハッキリ言えやおぉら!」


男が恭蔵に詰め寄る。

しかし、恭蔵は我関せずといった様子で呪文の詠唱を続ける。


「gbutoquseile………スタック」


一旦言葉を切って、恭蔵は背を屈めた。

そして片膝をついた楓の額に自分の額を当てると、最後の単語を吐き出す。


「…guelnila」


それは砥がれたナイフのように、男に鋭く突き刺さった。


男の体組織が瞬く間に組み変わり、井上という一人の男は、名前すら無い奇形のゾンビへと産まれ変わる。


「…俺、俺は、誰だ?

どうして腕が無いんだ?

脚が四本もあるんだ?」


井上たり得る全てを失った彼に、楓が新たな役を吹き込む。


「貴方はこの魔王様の配下として産まれ変わった魔物です。

魔王様の世界征服の助けとなるべく、全ての与那城と名のつく人間を殺しなさい。

さあ、外界へと旅立つのです」


フラフラとした奇妙な動きで、おおおと鳴き声を漏らしながらゾンビは闇へと溶けた。


「やりましたね魔王様。

成功です」

「…ああ、そうだな。

大家は喜んでくれるだろうか?」

「はい、必ず」

「そうか。

……そうであるな」


かくして井上は、その所業を露わにされる事すらなく、何処か暗い所へと消え失せてしまうのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ