食べられました。
さて、ここは川峰県素穂市の舟四里町。
所々自然が豊かだったり、場所によっては高層ビルが立ち並んでいたり、たまに石畳みが敷かれていたりと、もうわけのわからない町である!
「ねえ、取り敢えず最後に『である!』って付けとけば、何書いても許されるとか思ってない?」
ところでこの街は現在ある大きな問題を抱えている。
外来種のゾンビの異常繁殖だ。
彼らは夜になると人を襲い貪り食うため、死人は出るわ経済は冷え込むわ兎に角大変なのである!
「見つからない…」
交番の前を通り過ぎること、かれこれ128回。
もう既に日は落ちていた。
ゾンビが動き出し、それを狩るために警官達が準備運動を始め、そして戦闘中の美人婦警のパンチラが拝めないかと邪な男達がアップを始める。
そんな時間である。
「何かさっぱり人がいなくなっちゃったなぁ…」
そろそろ130回目に到達しようというその時に、A太は視界の端に奇妙な物を捉える。
「うへぇ、何だあれ!?」
萎びた団地の一般家屋。
それとそれが建ち並ぶ隙間に置かれた青いゴミ箱。
その中から蓋を押しのけ、奇妙な物体がのっそりと立ち上がった。
人型をした動く腐肉。
そう、ゾンビである!
「あー、腹減ったなぁ。
最近子供食ってねぇなあ。
どっかに落ちてねぇかなぁ」
捉え方によっては犯罪の匂いがするゾンビの発言。
そう、この小説のゾンビはゾンビ映画何かでよく出てくるような物とは違い、しっかりとした知性を持ち人語を操ることができるのだ!
「うほっ、いい匂い」
ゾンビがA太の存在に気がつく。
更にその後方5メートルで、東町家の奥さんのお風呂を覗こうとしていた一人の男性警官がゾンビの存在に気がついた。
更に更にその後方420メートルから謎のスナイパーが、スナイパーライフルのスコープで男性警官の肉付きの良い尻に熱い視線を送っていたりするが、それはまた別のお話である。
しかし、ゾンビを見つけても警官は動かない。
何故なら警察は事件が起きないと動けないからである!
「な、何かこっち来たあ!?」
ようやく自分がゾンビに襲われかけている事を自覚するA太。
慌てて走り出すが、日頃の運動不足が祟り何も無い所で転ぶという、誰も喜びそうにないドジっ子アピールを披露する。
絶対絶命!
「いぃいただあぁぁきぃまあぁぁああすっ!!!」
「ぐぬあーっ!?」
肩口からガブリと食われるA太。
飛び散ったピンク色の……おっとこれ以上は18禁である!
「くふぁーっ。
うまかったぁ」
満足そうに腹をさするゾンビ。
警官はようやく動き出した。
しかし取り出したのは拳銃ではなくトランシーバー。
発泡許可を取るためである!
油断してその場で寝転びだすゾンビ。
「?」
ゾンビは腹の中の違和感に気がついた。
内側から外に何かが押し出されるような感覚。
食われたA太の肉が、本体に戻ろうとしていた。
「おっ、おっ、おっ?」
こうなってしまっては、もうこの哀れなゾンビになす術は無い。
「おゔぉっぽろぎゃぶぁっひいえぇい!!??」
一体彼がどうなってしまったのかは、この断末魔で皆さんに想像してもらう事にしよう。
実は私は、グロテスクなものに耐性が無いのである!
「ふう。
流石に食べられるのは始めての経験だな。
でもちょっと面白かったかもしれない」
元通りの身体に戻っていくA太を見て、男性警官は唖然とする。
「き、君は一体!?」
「あ、丁度良かった。
あの、交番っていう物を探しているんですけれど…」
A太の壮大なる旅は、まだ始まったばかりである!