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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
16/98

知りました。

存分に芽衣が腕を振るった夕飯を食し、シャワーを浴び、充てがわれたベットの中にA太は倒れこんだ。


「あ、そういえば僕は眠る必要が無いんだった」


眠気も疲れも無いまま、ただひたすら暗闇の中で目を閉じ続けるA太。


「………飽きた!」


ガバッとA太は布団を跳ね除けた。


「研究所に居た頃はどうしてたっけ?」


寝床という物の存在を知ってはいたが、今までそれを貰ったことも利用したことも無いA太であった。


「ずっとゲームしてたっけな」


与那城瑛太の維持費の多くは、電気代に費やされていたのである!


「この部屋なんもないや。

取り敢えず外に出るかな」


なるべく音を立てないようにドアを開け、抜き足差し足で歩くA太。

足元を凝視して、音を出さない事に全神経を注いでいたからこそ、A太は自分の頭の先に麗華の頭があることに気がつかなかった。


コツン。


「………………」

「あれ?」


ようやくA太は顔を上げ、振り向く麗華と目を合わせる。


「ああっと、ゴメンね。

それにしてもどうしてこんな時間に?」


時刻は既に二時を回っていた。


「………貴方も、寝なくていいの?」

「質問を質問で返すのは狡いよ」

「………そうね」


結局二人は、お互いの質問に答えを返さぬまま、ただぼんやりとそこに立っていた。


暫くして、麗華が唐突に歩き出す。

特にすることも思いつかないので、A太は何と無くその後を追った。


辿り着いたのは、アレクサンドリア孤児院の屋上だった。


壁にもたれかかって、麗華が溜息を一つ吐く。


「………どうしてあの時、私を助けようとしたの?」


まるで独り言のような声の小ささで、麗華がポツリと呟く。


「実は、あの後からそれについてずっと考えていたんだけど……正直よくわかんないんだよね」

「………そうだと思った。

あの時の貴方は、余りにも自然で、そう、まるで草や木や花のようだったから」

「ははっ、なんだか詩的な表現だね。

麗華ちゃんって、けっこうポエマーさん?

そんな素敵な言葉は僕には勿体無いよ」

「………そんなことない。

ううん、私にはそうとしか表現出来ない。

あるべくしてそうあった……というか、本当に自然物のようだった」


A太は今日の自分の行動を思い返す。

突然ジャックが現れ、今日知り合ったばかりの女の子を襲い、それを自分が助け出す。

その一連の出来事の中に、一体自分の感情はどの程度介入していたのだろうか?


A太は少しの間悩んだ末、一つの答えに辿り着いた。


「バースさんがさ、言ってたんだ。

自分が知っている人間が苦しんでいると悲しいって。

そう思うのはエゴだけど、そのエゴは人間として当たり前のように持つべきものだって。

僕だって、人間だからね。

当然君が傷つくと僕は悲しい」


人の出した答えを借りて、人間の真似をする。

それが今のA太が出せる精一杯の答えだった。


「………本当に、貴方は私を知ってる?」

「う………。

ゴメン、自信は無いかも」

「………いいの。

多分、これから嫌でも知ることになる」


麗華は自嘲気味にふふと笑って見せた。

それが終わると、麗華はまた壁にもたれかかって俯く。


「………ごめんなさい」

「何が?」

「………貴方に意地の悪い事を沢山聞いてしまった。

本当だったら、他に何も言わずにありがとうというべきなのに」

「言わないの?」

「………………言えない。

勿論感謝はしてる。

多分、一生分位には。

でも、貴方にありがとうって言うのは、何だか神様にお供え物をしてお金を下さいって頼んでるみたいで」

「ははっ、なんだそれ?」


A太のははっ、という独特な笑い声が、しんと静まり返った夜をほんの少しだけざわつかせる。


「あんまり喋んない印象だったけど、案外話してみると色々言うね、君」

「………そう。

お喋りなの。

また一つ知ってくれてありがとう」

「いえいえ、どう致しまして。

って、何がだろう?

ってか、言えるじゃないか、ありがとうって」

「………これは違うの。

これは人間の貴方に対してのありがとうだから」

「なんかどんどん僕の設定が付け加えられていくね。

もうわけわかんないや。

ははっ。

…でも、もしかしたら知るって、勝手に設定を付け加えるようなものなのかもね」


麗華は体を起こすと、どこか遠慮するように、A太の顔を仰ぎ見た。


「………最後にもう一つだけ、知ってほしい事があるの」


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