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Dead! Dead!! Dead!!!  作者: quklop
観測者による主観的観測記録
15/98

考えさせられました。

「例の生物をウチの研究所に搬送した。

後は奴らなら喜んで解剖なり解析なりしてくれるだろう」

「確かに喜びそうですね。

無駄に痛めつけられたりしないと良いですけど…」

「お前に人間の情があったとはな、松浦よ」

「解析結果に影響が出そうですから。

ほら、この前の新型ゾンビ開発の時も…」

「あ、そう」


松浦の淹れた緑茶をずずずと啜る二人。


「例の少年と同じ体質を持つ謎の生物か。

…偶然とはとても思えんな」

「店長、そろそろその両者には何か固有名詞を付けるべきかと思います。

読者の方がわかりづらいと思うので」

「ああ、そうだな。

じゃあ取り敢えず生き物の方はポチとでも呼んで、少年の方は……そうだな、目のクマが濃いから熊吉とか、どうだ?」

「ポチ………犬ですか。

私にはどちらかというと猫に近い生物に見えました。

ですのでここは定番のタマを推します。

少年の名前は、まあどうでもいいでしょう」

「熊吉は確かにどうでもいいとしても、アレが猫というのは、何かおかしいんじゃないか?

やはりポチだろう」

「店長、有給たまってるでしょう?

眼科にでも行って来た方がいいですよ。

あれがポチだなんてあり得ません。

全く持ってナンセンスです。

やはりタマでしょう」

「いいやポチだ」

「いいえ、タマです」

「ポチだ」

「タマです」

「ポチだろ」

「タマだっつってんだろ」

「ポチ」

「タマ」

「ポチ!」

「タマ!!」

「「ポチタマ!!!」」


間を取ってまさおなどにしてみては如何だろうか。


「……………」

「……………」

「俺たちは一体何に熱くなっていたんだろうな?」

「さあ?」


無視しないで頂きたいのである!


「まあ、良く良く考えてみると、敵や実験動物に名前を付けるというのも、愛着が湧いてしまう場合が有るのであまりよろしくない。

適当に実験体Aとか、A太郎とでも呼べば良いだろう」

「異論はありません。

でもちょっと長いので、A太郎は縮めてA太にしましょう」

「ああうん、いいんじゃないか?

何でお前がそこに拘るのか、俺にはわからんが」


ところ変わってここはアレクサンドリア孤児院。

A太は人目も憚らずブアッークショイと盛大にクシャミを撒き散らしていた。


「おおっと、大丈夫かいA太君?

今日は大分無理をさせてしまったからなぁ。

風邪かい? 近くにマツミヨがあるから今買ってこようか?」

「んーとね、多分風邪じゃありませんよ。

病気とかにはまずならないと思います」

「そうかい?

まあ、不死身の英雄だからな。

そのくらいはそうかもしれないな。

ハッハッハッ!

…でも、今日はキチンと休んでくれよ。

もし万が一病気になられたりしたら、ミス瑞希に会わせる顔が無いからな」

「ああっと…あの人に顔を会わせられない人なんて、あの人自身くらいだと思いますよ。

そんな責任とかは考えなくても…」

「A太君」


真っ直ぐな目をしている。

そう、A太は思った。


「悪かった。

さっきのは、まあ、言い訳みたいなもので、要するに俺は、君が苦しい思いをして欲しくない、ただそれだけなんだ」

「僕が?」

「そうだ。

…そりゃまあ病気になって欲しい人なんていないさ。

世界中の誰もが病気なんかにならなければ、そりゃもうハッピーさ。

だけど、それは無理な話だ。

今も世界の何処かで誰かが苦しみ続けているし、命を落としてもいる。

だけどせめて、自分の知っている人には、一人も病気なんかには罹って欲しくない。

自分勝手な我儘さ。

だが、人間として持つべき当たり前の我儘だと、俺は思う」

「そう、ですね。

はい…」

「それに君は、何だか危なっかしくてな。

死なないからといって、自分を軽視し過ぎているんじゃないかい?

そりゃ、あのジャックとかいう奴の時は嬉しかったが、出来ればもうあんな無茶はして欲しくない。

だから、君に対してはちょっと特別かもしれんな」


はっはっ、と、小さく照れ臭そうに笑うバース。

A太はすっかり元に戻った自分の右腕

に視線を落として黙り込んだ。


自分はどうだろうか?

例えばこのバースさんに、僕は苦しんで欲しくないと心の底から思えるんだろうか?

そもそも僕は、人間なんだろうか?


A太の意識は、思考の渦の中へと落ちた。


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