落ち込みました。
急激に進化を起こしたせいか、A太の右腕は急速に退化し、元の肌色へと戻りつつあった。
A太が再び右手で物を持てるようになる頃には、リビングも元通りの整然とした様子に変わっていた。
なんだか良くわからない会話をしているメイド服の少女達。
A太、彼女達を眺めふと疑問に思う。
ここは孤児院である。
彼女達は孤児だ。
親はいない。
ならば、一体誰がこのアレクサンドロス孤児院にお金を払っているのだろうか?
その疑問にはバースが答えた。
「ううむ、正確に答えるのは難しい質問だが、あの子らを気に入ってる人達の募金で成り立ってるっていうのが、一番それらしい答えかもな」
「気に入ってる人達?」
「実を言うと俺にも良くわからないんだが、例えばA子ちゃんが色々あってウチに来たとするだろ」
「ネーミングに悪意を感じるのですが…」
「取り敢えずそのA子ちゃんを暫くウチに置いておくとする。
すると一日も経たないうちに、身元不明のどこかから手紙が届く。
丁度その子一人を一ヶ月養って、その上で少し利益が出るくらいの金額が同封された手紙だ」
「…それ、滅茶苦茶怪しいお金なんじゃないですか?
世間知らずの僕でも、なんかいやーな感じしますよ?」
「ハッハッハッ!
まあどんな奴らに襲われたところで、俺たちなら返り討ちに出来るさ!
その時は宜しく頼むぜ」
グイッと親指を立てるバース。
何故だかA太は悪い気がしなかった。
「で、そんな手紙が、一ヶ月毎に来るわけだ。
それが全員分」
「全員?」
「まるで示し合わせたみたいに、彼女ら一人につき一人の誰かが手紙でお金を振り込んでくれるんだ。
俺たちからは何のアナウンスもしていないのにな。
あの子ら一人一人に謎のスポンサーが付いてるって感じか?
まあ、怪しいのは確かだが、その怪しい金のお陰でうちは成り立ってる。
君の場合はちょっと勝手が違うようだがな」
しゅんとなるA太。
そこを突かれると痛いのであった!
「おいおい、そんな顔するなよ。
あんな変態野郎をぶっ倒してくれたんだ。
君がいなきゃここはやばかった。
本当に感謝してるんだぜ!
…ま、金に関しちゃ話は別だが。
それだって、君ならゾンビハンティングですぐに稼げるさ!」
「ゾンビハンティングといえば、あのジャックとかいうゾンビは、今からでもお金に出来るんですかね?」
「あー、と、その……無理だな!」
再びしゅんとなるA太。
「ど、ドンウォーリーだ、瑛太君!
きっと、うん、そのうち良い事あるさ!
…そうだ! まだ色々あってバタバタしてたから、まだあの子らの名前も知らないだろう?
案内するぜ!」




