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第7話 お洋服を買おう

 結局あの後、ご飯を作るために家に帰るまで約3時間、みっちり悠斗の猫耳談義に付き合わされた。 助けてもらった負い目があるので、朝みたいに邪険に扱えず、真剣に聞くはめになった……。



 猫耳ってなんだよ……。ゲシュタルト崩壊しそう……。


 そもそもボクは猫より犬派なんだよね。昔飼ってた英国出身の牧羊犬、シェットランドシープドッグのジョニーを思い出すよ。 


 クリクリした円らな瞳に、もふもふと豊かな体毛。そして嬉しい事があったらぴょんぴょん跳ねる耳と尻尾!! 最高に可愛かったなぁ! ウチの犬はっ!!



 …………あぁ、ボクも犬耳に関してなら結構語れそうだ……。



 ま、まぁ何はともあれ、今日は土曜日。悟兄とスイートパラダイスに行く日だっ!楽しみ過ぎて昨日なかなか寝れなくてちょっと寝不足だよ。


 ベッドの上で足をバタバタさせていると、悟兄が入ってきた。


 


 「準備できたか。 服買いにいくぞー。」


 あぁ……。うん……。 そうだった。それがあったんだよね。



 結局電車で50分ほどかけて、隣の県の都会のファッションビルに着いたボクと悟兄。ここは女性モノが中心だけど、ボクが好きなメンズ向けのセレクトショップも結構入っていて、悟兄とよく買い物に来る場所だ。 


 今のボクは、ライトブルーのナイロンパーカーに細身のネイビーのチノパン、足元にはNのマークの入った某有名スニーカー。チノパンの裾をロールアップして、柄入りの靴下をチラ見せさせている。眼鏡は外して、髪はゴムでポニーテールに纏めた。 


 悟兄は上品なテーラードジャケットに、デニムシャツ、薄手のスラックスとブラウンのウイングチップ入りの革靴。


 スーツファッションをデニムシャツで上手い事カジュアルダウンさせていて格好いい。大人の男の私服って感じだ。憧れるなぁ……。


 

 そもそも悟兄は素材がいいのだ。180を超えるぐらいの身長に、肩幅が広くてがっしりした体型。目はちょっと鋭くて怖い印象を与えがちだけど、笑うと目尻が下がって可愛い。


 顔も濃いめで、スーツを着るとすごい味が出る。悠斗はヤクザみたいとか言ってるけど、そんな怖いかな? 


 真面目で気が利いて、散髪とか器用な事もこなす悟兄を見てるせいか、とても怖いって感想は出てこない。 むしろ大型動物みたいで可愛い。


 ああ、でも怒った時は本当に怖い…………。そ、それは間違いない。


 


 「ねぇ……あの娘、服装ボーイッシュだけどめっちゃ可愛くない?」

 「やばいよね。となりの人もワイルド系でちょーイケメン!でもカップルじゃないよねー? どんな関係だろー。」


 2人で並んで歩いていると、学生のお姉さん達がそんな会話が聞こえてくる。あはは……。


 

 「ちょっとお前、あの娘に声かけてこいよ!」

 「いや、行きてぇけど隣の男邪魔だわー。」

 

…………。


 さっきからやけに視線感じる。なんで男物着てるのにこんな注目されてるの……。悟兄と歩いてるからかなぁ。


 ていうか男物でも女の子に見えちゃうのね。ぐすんっ。 




 ……ん? ちょっと待てよ?


 「ねねっ! 悟兄。 先にボクの服買いに行っていい?」

 「お? やけに積極的だな……。」


 そうだよ。女物でも、ボクがいつも買ってるショップのレディース物を買えばいいんだよっ。アウトドア、アメカジ系で纏めたらヒラヒラした女の子っぽい服着なくて済むよ! 



 悟兄の手を引きながら、エレーベーターに乗るボク。そう考えたら楽しみになってきた。レディースなら男の服より3割ぐらい安いからお得だし。この体になって、服のサイズちょっと合わなくなったから良い機会だよ!



 男女両ブランド置いてる7階のボタンを押そうとするボク。




 「分かってると思うが、カップルとして食べに行くんだから、俺の服装に合わせた格好してもらうぞ?」

 「そ、それって……つ、つまり、どういう?」

 「フェミニン系かキレイ系かガーリッシュ。」

 「あはっ、あははははっ……。」


 ダメだ。終わった。悟兄はボクにシフォン生地のフリフリのスカートを着せるつもりだ……。


 放心したボクを引き連れながらがっつりガーリーなショップが集うフロアを闊歩する悟兄。


 は、恥ずかしいよっ。着る前からもうダメだ。女物が揃うエリアを歩く時点で恥ずかしいっ。目のやり場に困るよ!なんで悟兄はそんな堂々としてるのっ!?


 

 「ここ入るぞ。」

 

 無言で歩いていた悟兄が一つのセレクトショップで足を止めるとボクに入るように促してくる。


 「ふ、ふぇぇ……。」


 透明感溢れる内装。フェミニンだけど、少女趣味すぎない。大人と少女の間ぐらいを意識した、セレクトショップ。


 大学生ぐらいに人気がありそうだ。うん。は、入りたくないよぉ……。


 「ほらっ、いくぞ。」


 立ち竦むボクの肩を持つと、爽やかな笑顔で店に入れと促す悟兄。……鬼だ。



 ……ええい! 男は度胸だ。 異世界では、お、お姫様みたいな格好でお天道様の下を歩いていたんだっ! がんばれボク!!



 「いらっしゃいませ~。」


 意を決して店の中に入るボク。綺麗な女の人に上品でよく通る声で挨拶をされる。な、なんか悪いことしている気になってくるよ……。



 出来るだけ店員と関わらずにパパっと決めちゃおう。そんな事を考えてると、悟兄がさっきの綺麗な女の店員さんと何か話してる。


 「あの、今日は妹が女の子らしい格好に興味があると言うので連れてきたのですが、一通り似合いそうなものを揃えてやってくれませんか?」

 「そ、そうでしたか。 妹さんはどちらですか?」

 (ちょ、ちょっと悟兄?!)

 「あそこでブラウス見ながら震えてる奴です。 女っぽい服装をした事が無くて緊張してるみたいで。」

 「あら、とても可愛らしい妹さんですね。」


 2人してこっちに歩いてくる。や、やめてっ。来ないでっ!


 店員さんはボクの目の前まで来ると微笑みながら、ボクの顔を見つめてくる。ちょ、ちょっと近いよっ。


 綺麗なお姉さんに至近距離で見つめられて、顔を逸らしてしまう。恥ずかしいよ!


 「垂れ目がちで大きな瞳、卵型の小さな顔、小ぶりだけど、すっと通った、お鼻……。 その下に咲くさくらんぼ色の形のいい可愛いお口…………。」

 

 な、なんかブツブツ言い始めたっ!! この店員さん怖いよっ!

 

 「すごく女の子らしくて可愛いお顔なのに、服装がボーイッシュ系でもったいないですね。 私と一緒に可愛いコーディネートを考えましょうね?」


 

 少し上気した顔でボクの手を握る店員のお姉さん。


 「は、はぃ……? あ、あの……? ぼ、ボク……自分で……。」

 「優希お金渡しておくな。俺は上で自分の服見てるから終わったら連絡してくれ。」

 「ちょ、悟兄?! いてくれるんじゃ……?!」

 「それでは此方にご案内致しますね~。」

 

そのままボクと数着の衣類を引き連れて試着室へ向かうお姉さん。後ろでいい仕事をしたとばかりにドヤ顔の悟兄。


 あぁ……売られていく子牛ってこんな気持ちなんだろうなぁ……。



 そのまま服を渡され試着室に入れられるボク。うーん。着たくないよぉ……。渡された女物の衣類を眺めしばらくぼーっとする。


「お客様。 どうしょうか?」


 カーテン越しに服の様子を聞いてくるお姉さん。な、何もしてないや…………! とりあえず着替えないとっ!!


「お客様~…………。 ちょっと失礼しますねー? …………ッ!?」


 慌ててズボンを脱いでスカートを履こうとしていた時に、カーテンが開けられお姉さんに覗かれる。か、勝手に開けないでよぉ…………!!


 「その下着はなんですか…………!!」

 「へっ…………?」


 普通のボクサーパンツなんだけど、何かおかしいかな……?


 「まさか、お兄さんの…………。」

 「い、いやボクの下着ですっ!!」


 


 少し鼻を押さえながら、そう言うお姉さん。それを慌てて否定するボク。どうしてそんな発想になるの!?


 「ふぅ…………。 それはそれで残念ですが、とにかく男物の下着を履いているなんてあり得ません。 女っぽい服装をしたことが無いと聞きましたがこれ程とは…………。」


 呆れた様子のお姉さん。そうか、女の子として見られてるなら、この下着はオカシイのかな。


 「仕方ありません…………今日は私が女の子の身だしなみを徹底的に教えて差し上げますっ!! もちろん下着も含めて!」


 …………やだっ! 絶対女の子のパンツなんか履かないんだから!!


 

 「…………そんな目をしてもダメです。 まずは下着を揃えましょう。さぁ行きますよ?」



 にっこりと微笑むお姉さん。いつの間にかボクに服を着せると、無理やり手を引いて店の外へ…………。




 向かった先は、目に優しくない内装の…………。





 2時間後――そこには、白い総レースの7分袖ブラウスにネイビーの膝上丈のティアードスカート、ピンクのパンプスにネイビーのドット入りシュシュで髪を纏めたボクの姿があった。


 どれも生地薄く、身を守るには心もとない服装だ。スカートが少し短くて、無意識のうちに手で抑えて伸ばそうとしてしまう。いや、伸びるわけないんだけどさ……。

 

 ほんのり化粧もしてあって、チークで頬がうっすら赤くなってる。めちゃくちゃ女の子っぽい格好になっちゃったよっ!? どうすんのさこれ……。


 「素材がいいから化けるとは思っていましたが、これ程とは……?我ながらいい仕事をしました……。」


 

 なぜだかツヤツヤと肌を潤わせながら満足気に頷くお姉さん。や、やりすぎだよ……。お金だけ渡して、自分の服を見に行った悟兄が恨めしい。


 「い、色々、ありがとうございました…………。」


一応真剣に選んでくれたお姉さんにお礼を言って会計を済ませると、逃げるように店を出るボク。

 

「下着はちゃんと教えた通りに着けるんですよー!」

 「…………。」



 下着について多くは語るまい。とりあえず色んなお姉さんに体ペタペタ触られた挙句、如何にもな下着を数着買わされた。体は自由に出来ても心までは屈してないんだからっ!!


 …………ちなみに着ていた男物の服は、家に郵送してもらう事にした。


 恥ずかしくて、下着とかの細かい描写は断念しました。期待してた人はごめんなさい。


 優希はアウトドア系をモノトーンで纏めて、靴下、バッグなどの小物で外すのが好き。 


 悟は一点違うジャンルを取り入れて、こなれた感じを出すのが上手。


 今回服を買った店は、ローリーズみたいに大衆化されてはないけど、ジル程洗練されてはいない。 悟のセンスが見つけた隠れた良店といった所でしょうか。


 ファッションビルに関しては大阪での説明になるけど、難波パー○スというよりは、梅田のH○Pやル○アみたいなものを想像して頂ければ。


 本編で語ると冗長+自己満になってしまいそうだけど、自分の描写力ではイメージが掴みにくいと思うので一応の補足。

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