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第13話 魔術特性と魔法理論

 プロローグと第13話の2話同時投稿です。

 魔法の理論に関する説明。ややこしい上に分かりにくいです。

 「風守くん、今何が視えてるか言ってみて?」

 「あ、あぁ……!!緑色の淡い光が俺を覆ってる……!!」


 

 悠斗に魔法を教えると約束してから一週間が立った。稽古を付けると言った手前、女の子のボクと悠斗との連絡手段が必要だったけど、メルアドを教える訳には行かない。



 妥協案として、悠斗が部活の無い日を教えてもらって、放課後に町外れの河川敷に来てもらう事になった。



 今日で集まるのは3回目。悠斗は2回の講義で意図的に魔力を感じられるようになった。元々デモンの魔力が視えていたから、才能はあると思ってたけど予想以上だ。


 「風守くんは、風の加護が有るみたいね……。」

 「風の加護…………格好いい響きだな……。」


 魔法を使うには属性と指向性について理解する必要がある。


 

 属性は火、土、風、水、雷の5大属性が基盤。これは得手不手はあるけど誰もが扱える属性。


 それに加えて一般人は保持していない特殊属性の光、闇、無の3種類があり、全部で計8属性。


 

 指向性は魔法を使う時に与える形のようなもので、攻性、非攻性に分かれる。


 

 攻性に含まれるのは、攻撃魔法や魔力を用いた身体強化術《闘魔法》。

非攻性に含まれるのは、回復、防御、結界、加護、その他補助魔法。


 

 指向性で魔法の方向性を決定、属性を付与する事で具現化するこれが魔法の基本概念だ。 



 加護というのは所謂《得意属性》の事で、悠斗は風の加護があるから風系統の魔法の習得率が上がる。



 「風属性の加護があると、どんなメリットがあるんだ?」



 しばらくは、自分の魔力に浮かれていた悠斗だったが、落ち着いたのか、詳しい説明を求めてくる。学校の授業だとすぐ寝るくせに……。



 「魔力を使って敵を倒す戦闘術は大きく分けて2つあるわ。 攻撃魔法による魔法攻撃と、闘魔法による物理的近接格闘。この2つね。」


 「その闘魔法ってのがよくわからないんだよな。 魔法は何となくイメージつくんだけど。」



 理解が曖昧な悠斗に詳しく説明をする。闘魔法というのは、自身に存在する5つの魔力属性を強化する事で身体能力を強化する戦闘法だ。


 イェーンザイツの基本的な戦闘法で、得手不手はあるけど基本的に誰もが使える。各属性を強化するとそれぞれ――


 風属性は、敏捷性、回避能力 

 土属性は、タフネス、物理防御力

 水属性は、精神力、魔法防御力 

 火属性は、物理攻撃力 

 雷属性は、器用さ、命中精度


 ――が強化される。 風が得意属性の悠斗は、戦闘において敏捷性を重視するということだ。 


 他の属性の適正も加味しないと、どういう戦闘スタイルになるかは分からないけどね。


 


 


 「――つまり、風の加護がある君は敏捷、回避力の高い中衛向きだね。」


 「……んー中衛向きか。 バリバリの前衛が良かったんだけどな。」


 説明を聞きながら、少し不満気に口を尖らせる悠斗。でもまだ他の属性の適正を調べていない。


 魔法適性は基本的に10段階評価だ。 MAXである10をたたき出せるのは加護のついた属性のみだが、他の属性もイェーンザイツの一般人平均で3、滅多にいないが適正が高ければ9まで出せる。 逆に加護がついた属性でも本人の魔法の才が乏しいと低い値が出る。



 

 「まぁ加護は戦闘スタイルを大まかに分別するための、あくまで目安だからね。他の属性と指向性の偏りも調べるから、ちょっとおでこ出して。 」


 「えっ……?」


 「風守くんが、風の加護があるのは分かったけど、他の属性の適正値と、指向性の偏りを調べないと、どういう戦闘スタイルが合うかが分からないの。」



 「それは分かるけど、お……おでこって……?」


 

 戸惑う悠斗。そうか、こういう基本的な事も説明しないといけないんだった。自分にとって当たり前になってる事を1から他人に教えようと思うと、どこか説明が抜けがちになってしまう。



 おでこを合わせて魔力共鳴でステータスを計る。これは自力で魔力を感じ取れるようになった後に最初にやる事だ。



 ステータスを計って初めて、座学ではない実践形式の魔法訓練のプログラムを立てれるのだ。



 自分が先生の立場になって改めて思うけど、師匠の説明は上手だったなぁ。疑問に思う事が少なくて、分かりやすく丁寧な解説だった。あれでボクへの弄りが無かったら完璧な先生だったのに……。



 ……とにかく今は説明だ。



 「私の魔力を風守くんの魔力と共鳴させて、あなたの魔力特性をソナーのように調べるの。 おでこ同士が一番誤差が無いから、おでこ出してくれる?」



 「お、おでこ同士っ!? そ、それはっ……!?」


 

 慌て始める悠斗。うーん、珍しくハッキリしないな。もう面倒だからさっさとやっちゃおう。



 「ちょっと失礼っ……。」

 「~~~~!!?」


 ぐいっと一歩悠斗に近づく。そのまま悠斗の前髪を左手で払い上げ、自分のおでこを合わせる。目を瞑ってお互いの魔力を探る。


 

 「魔力よ、共鳴せよ――レゾナンス」



 ボクの放った魔力が悠斗と触れ合い共鳴する。ふふっ……悠斗らしく自由で爽やかな、こちらの気持ちも明るくさせるような心地良い魔力だ。


 にしてもこれは……。


 悠斗の魔力を調べ終わり、離れるボク。そのまま悠斗を見上げると顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。



 「……? 風守くん、どうかした? 顔真っ赤だよ……?」


 「い、いや……。 なんでもないっ!  」 

 


 「……? 熱でもあるの? 計ろうか?」


 

 そういってもう一回おでこをくっつけようとするボク。 悠斗の大丈夫は信用出来ないからね。


 

 「い、いやっ! 本当に大丈夫だから!! これ以上近づかれると流石に色々不味いというか……っ! そ、それより俺の魔力性質はどうだったんだ?」



 無理矢理話題変えて誤魔化そうとしてる……。ど、どんだけ修行続けたいのさ……。風邪なら修行切り上げて、早めに帰って安静にしたほうがいいんだけどなぁ……。



 まぁこれ以上体調が悪化するようなら、治癒魔法かけてから家に帰そう。



 「なぁ……? 俺の魔力は……。」



 「悪くはないよ。 ただちょっと偏ってるね。」


 「……?」

 

 

 悠斗の魔力性質は、風10、土1、水1、火9、雷6、攻性魔法適正8、非攻性魔法適正2 だった。


 

 「攻性偏重型の敏捷、火力特化。 かなりの機動力と攻撃力。それに加えて、高めの命中精度が得られるダメージディーラー。 その代わりに防御が紙だわ。 非攻性魔法の適正も低いから、後衛向きでもないわね。」


 

 完全な脳筋だ……。


 

 「防御が紙なのは辛いな……。だが、当たらなければどうという事はない……!! それより攻性偏重型っていうのは?」


 「……最初に説明した通り、魔法は指向性と属性の組み合わせなの。」



 いくら属性値が高くても、攻性適正が低いと、身体強化も攻撃魔法も満足の行った成果が得られない。 逆に非攻性適正が低いと、支援や補助魔法の効果が落ちる。


 攻撃魔法も身体強化も支援魔法も、全ての魔法は指向性と属性の掛け算だ。



 「大雑把な説明をすると、あなたの戦闘能力は各属性にあなたの攻性魔法適正値を掛けたものになるわ。 」


 各属性に攻性適正値を掛けた値が闘魔法を用いた悠斗のステータス。つまり――


 風(敏捷値)     80

 土(物理防御力)    8

 水(精神、魔法防御力) 8

 火(物理火力)    72

 雷(命中精度)    48


 ――こうなる。破格の機動力と火力を備えているけど、防御が紙。


「数値化されると自分の能力が偏ってるのが分かるな……。」


「強いけど、一つの判断ミスが命取り。そういうステータスね。」


「……だな。ちなみに君の魔力特性はどうなんだ?」



 ボクは光属性の加護がある。これは恐らく《純白の乙女》の加護によるものだろう。ただそれに付随したデメリットもある。


 風7、土1(≒0)、水6、火1(≒0)、雷8、光10 攻性魔法適正1、非攻性魔法適正10。これがボクの魔力適性値だ。つまり闘魔法を用いたステータスは――



 風(敏捷値)      6

 土(物理防御力)    1(≒0)

 水(精神、魔法防御力) 8

 火(物理火力)     1(≒0)

 雷(命中精度)     3

 EX) 光属性所持       

 攻性魔法適正が無いので、身体強化も魔法攻撃能力もほぼ皆無なのだ。



 「なるほど、君も大概偏ってるな。」


 「そう、だね……。」



 悠斗が少し意地悪そうな顔でからかってくる。確かにボクも支援にほぼ全ての適性を持って行かれていて、ピーキーな能力値だ。



 「この前のデモンとの戦闘で、敏捷値を強化してたように見えたけど、あれは闘魔法じゃないのか?」



 「あれは、《純白の乙女》のユニークスキル《加護魔法》による身体強化だね。」


 

 ボクは攻性魔法適正が低くて、闘魔法での身体強化がほとんど意味を成さない。だが、加護魔法による強化なら話は別だ。


 加護魔法の効果はボクの非攻性魔法適正に依存する。つまり風属性が7のボクが敏捷強化の加護魔法を使うと、敏捷値が70になるということだ。


 逆に火や土の加護強化を使っても、基本属性値がほぼ0のため、防御力も物理火力もほとんど強化されない。


 「それって他人にも掛けれるんだよな……。」


 「もちろん。それがこの魔法の真髄だからね。」


 貧弱な魔力適正のボクは10掛けしても大したステータスにならないし。


 

 「……やべーな。 チートかよ…………。」



 今の説明だけで加護魔法とボクの非攻性魔法適性とのかみ合わせの良さを悟った悠斗は流石ゲーム脳というべきかな。


 他人の身体能力を強化する時もボクの非攻性魔法適性10が適用される。つまり悠斗に5属性全部の加護身体強化を施すと、


 風(敏捷値)     80+100

 土(物理防御力)    8+10

 水(精神、魔法防御力) 8+10

 火(物理火力)    72+90

 雷(命中精度)    48+60


 ――となるという事だ。 ざっと全能力が2倍以上になる。 ボク単体に戦闘能力は無いが、ボクが加護を掛けると戦力が2倍以上になるのだ。 



 この話を聞いたら、ボクが一人でいるのは明らかに不自然だ。デモンの存在を知っていて、魔法に関する知識がある少女。悠斗にとってボクはどう映っているのだろうか。



 悠斗の事だから色々余計な事を考えていそうだが、《約束》があるためか何も言ってはこない。 そうだ、それでいいんだ。




 「とりあえず闘魔法は魔術戦闘の基礎よ。全属性で意識的に身体強化が出来るようになるまで、攻撃魔法の練習はお預けね。」


 「ええ、そんなぁ……。」



 情けない声を出す悠斗。だが中衛以近の基本的戦闘スタイルは闘魔法による近接戦闘だ。これが出来ないと、攻撃魔法を詠唱する余裕も無く殺されてしまう。


 「じゃあ、まず自分の魔力を全部封印する練習から! 魔力封印と魔力開放は、自分の魔力を詳細に感知出来ていないと出来ないからね。」



 「ひえぇ……。」



 異世界イェーンザイツにおいて、全ての人が持っていた魔力。それ故に彼等はデモンに襲われた。 だが逆に考えると、彼等は魔力が漏れ出していなければ襲われる事は無かったのだ。



 何故彼等は魔力封印をした状態で生活しなかったのか。――出来なかったのだ。魔力封印は、体中にある魔力回路を全て閉じる行為。それを行うためには、高い魔力的才能が必要だった。



 また他人の魔力回路を感知し魔力封印を行う技術は更に高度だ。ボクは出来るけど。だから上流階級や一部の金持ち以外は、魔力封印によってデモンから逃れる事は出来なかった。



 そして魔力封印を行っても完全に安全を確保出来るとは言えなかった。何故か?それは人型の上級デモンや、魔王軍幹部――六魔侯の存在によるものだ。 


 奴等は高度な思考能力、判断力を備え、目を覆いたくなるような残虐な手法をもって、人間から魔力を搾取した。

 

 ……小手先の魔力封印などで、彼等の目は誤魔化せなかったのだ。



 幸い上級以上の人型デモンは今の所この街にはいない。デモンが存在すると知ったあの日ボクは、家に帰る前に街全体を覆う程の魔力探知を実行した。


 先程悠斗に行った魔力共鳴レゾナンスの質を落とし、広域に散布する事でそれを可能にした。


 他にデモンが存在すれば、こちらの魔力波を探知し襲われかねない、危険な手段だったけど、現状を詳しく認識するためには必要な事だと思ったのだ。


 

 結果として、数百名の人間の魔力反応が検出されたが、それ以外に探知に引っかかったものは無かった。



 

 ひとまずこの街は安全。それが分かった。だけどデモンの存在を確認した以上は、いつまたデモンがこの街に侵入してくるか分からない。



 また上級以上の魔力封印を見破れるデモンの襲来があれば、ボク達の安全も保証されない。




 だからボクは決断した。悠斗の訓練に並行して、ある作戦を実行する事を。




 町全体を特定の対象に認識出来なくさせる結界魔法。


 ――上級光属性 非攻性魔法  広域結界 乙女の聖域(サンクチュアリ)


 これが発動すれば、桜木町はデモンから認知されなくなる。もちろん上級以上のデモンからも。


 

 結界を発動するには複雑な手順が必要で、結界を維持するには定期的にボクが魔力を流し込む必要がある。つまりこの結界で守れるのは自分の街だけ。だがそれでいい。慈善でやるわけじゃないんだ。

 


 ――桜木町防衛作戦始動


そのうち用語集などを作って纏める予定。優希が攻撃はからっきしだけど、支援魔法は優れているという認識があれば、適当に読み流して大丈夫です。

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