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第10話 予兆

今日は第9話、10話の2話投稿しています。 前話を読んでいない方はお手数ですが9話からお願いします。

 悟兄と別れて数分後、駅に着いた。


 ICカードを当てて改札を通って電車を待つボク。なんでも電子化されるのは怖い気もするけど、切符買わずに電車に乗れるのはいいよね。階段を登ったと同時にホームに電車が到着する。



 それに乗って地元桜木町へ向かう。暫く電車に揺られていると、県をまたいでボク達の住む町が見えてくる。


 県境が小さな山になっていて、桜木町は盆地というか、少し低い所にある。


 窓に寄り付いて外の景色を眺めるボク。昔から町の外に出た帰り際、電車から町の風景を見るのが好きだった。


 高い所から観るから、町の全景が見えるのだ。


 


 まだ日が落ちるには時間があるけど、若干空が赤らみ始めていて優しい光が町全体を照らしている。どこか郷愁に駆られるような、そんな景色……。




 「「綺麗だなぁ……。」」

 



 「…………!?」


 ノスタルジックな気分に浸りながらそう呟いたのはボクだけでは無かった。慌てて振り返るボク。だ、誰だろう?


 「っ~~~!?」



 どうして、ここにいるのー!?


 そこには惚けたような顔で悠斗が立っていた。野球の練習試合帰りだろうか。汚れたユニフォームの上から、大きなスポーツバックとバットを背負っている。 



 …………い、いやっ、そんな冷静に観察してる場合じゃないよっ。早く言い訳しないとっ。 


 「あ、あのっ、これは、ち、ちがくてっ……!」



 女装の理由をあれこれと探すけど、上手い言い訳が浮かんでこないっ……。女の子の姿を悠斗に見られた恥ずかしさと、これからの事を考えると頭が真っ白になる……。


 「っぷ……っ!」


 必死に言い訳を考えていると、吹き出したように笑い声を漏らす悠斗。そんな身振りに少しムッなる。



 

 「な、何がおかしいの……?」

 「いや。 大人っぽくて綺麗な人だなぁって思ったら、百面相みたいにコロコロ表情が変わるから、なんか俺の男友達を思い出しちゃって……。 すいません。」


 

 ボクの不機嫌を悟ったのか、笑いながらも少し顔を引き締めて頭を下げる悠斗。



 あれっ? まさか気づいてない? 大人っぽい女の子の格好で、化粧もしてるからバレてないのかなっ?


 

 よ、よしっ、こうなったら……!

   

 「ボ……わ、私は女の子ですっ……!」

 


 

 「いやいや、分かってますよ。当たり前じゃないですか。 隣……いいですか?」


 もう誤魔化しきるしかない。男のプライドは捨てたっ!!女装して出かけてる変態って思われるよりマシだよ……。



悠斗アホだからなんとかなるよね多分……。


  「遊びに行ってたんですか?」

  「え、と……ご飯を食べに……。」

  「へぇ、いいなぁ。 俺はこんな時間まで泥まみれになってボール追い掛け回してましたよ。」


 人好きのする笑顔で、汚れたユニフォームを指しながら答える悠斗。


 

 ……ボクの事年上だと思ってるのかな?悠斗ってこんなにちゃんと敬語使えたんだ。そういえば悟兄に対しては敬語だもんね。



 いつもガサツで意地悪で馬鹿な事ばっかやってるイメージだったから、すごい違和感あるなあ。そのまま暫くボクらの会話は続いた。


 異世界で鍛えられたおかげで、今のところ女の子として振る舞えてるはずだ。


  

 「――じゃあ同い年なんだ。 あぁ良かった。 敬語って使ってても使われても、なんか背中がむずむずするんだよな! 君もタメで喋って! 」


 「あ、はい。 じゃなくて……う、うん。」


 

 やっぱ敬語は無理してたんだなぁ。ていうか女の子と仲良くなるというか、距離縮めるの早すぎない? 手馴れてるっていうかさっ。



 これがイケメンリア充の力なのかな? なんか納得いかない。あほ悠斗のくせにっ! あれ?でも名前とかまだ聞かれてないな。 やっぱ慣れない事してるのかな? 


 

 それから暫くして電車が駅に着いた。二人でホームに降りて、改札から外へ出る。そのまま帰り道が一緒なので必然的に同じ方向へ歩き始める。



 歩きながらも悠斗は色々面白い話をして場を盛り上げてくれる。男のボクといる時は、猫耳とアニメとゲームの話ばっかしてるのに……。


 


 「私買い物があるから、こっち行くね……。」


 ボク達の家とスーパーを分ける道でそう告げるボク。早く別れたいっ。親友の前で女の子の姿をして女口調で話すなんて拷問以外何者でもないよ。 


 さっき崖から突き落としたはずの男のプライドがいつの間にか這い上がって来ている。不死身かコイツ……。


 

 「あ、ああっ。 そうだ!せっかく仲良くなったんだし、名前とメルアド教えてくれない?」


 

 珍しくはっきりしない口調でそう告げてくる悠斗。いやいやいや、教えれるわけないよっ!



 ボクの名前は白峯優希だし、ケータイのアドレスは悠斗のアドレス帳に既に登録されてる。


 

 「ご、ごめんっ……私急ぐからっ! ま、またね!」

 「待って!! せめて名前だけでも!! 」


 後ろから掛けられる声に振り返る事はしない。いやいや、名前だけでも言っちゃったらおしまいだよっ!!


 

 呼び止められる声を無視する事に一抹の罪悪感を感じながらも、ボクは急いでその場後にした。






 

 そのまま歩いて近くのスーパーに向かって夕飯の食材を買い揃えるボク。今日はほんと色々あったよ。



 お姉さんに着せ替え人形にされたり、不良に絡まれたり、女の子の姿で悠斗に会ったり……。



 …………夕飯の準備終わったら悟兄が帰ってくるまでちょっとソファで横になって休もう。


 

 

 スーパーのレジ袋を引っさげて帰路に着く。大体5時半ぐらいかな。今は5月で暗くなるまでにはもう少し時間がある。


 

 今日食べたスイーツを再現したくなって、夕飯の食材以外にも色々余計な買い物をしてしまった……。



 ボクは明日にでも作りたいけど、悟兄が当分スイーツは要らないだろうから、少し間を開けて作ろう。


 

 スーパーを出ると大分日も落ちてきて、身長の低いボクの影法師も細長く伸びている。ボクは夕暮れ時の影法師を眺めるのが好きだ。


 

 長い影法師を見ていると、身長が高くなってスタイルの良い自分を妄想出来るんだよね。……身長低いからこういう所で妄想に浸るしかないのさ……。


 夏至が近いからそこまで大きく伸びないけど、秋の夕暮れの影法師は長く伸びすぎてなんだか不安な気持ちになる。


 だから夏入り前のこの時期の影法師が一番好きだ。 なんかよく分からない拘りだけども……。


 そんな事を考えながら帰路を急ぐ。まだ日が落ちるには時間あるけど、早めに帰って夕飯の用意をしちゃおう。



 しばらく歩いているとさっき悠斗と別れた分かれ道に戻ってくる。そして悠斗が帰ったであろう――ボク達の家がある方向に足を踏み出す。



 ――と、同時に向こうからすごい勢いで走ってくる人影が見える。


 


 「に、逃げろぉぉおおお!!」


 

 ゆ、悠斗っ?! さっきこの道で別れて、恐らくもう家に着いたはずの悠斗が逆走してこっちに走ってくる。 



 な、なに!? 何が起こってるのっ……?!


 

 「き、君さっきのっ……! くそ……!」

 「ひゃっ……!」


 ボクを見つけて、一瞬逡巡したように見えたがそのままボクを抱えて走り出す悠斗

 


 「お、降ろしてっ! 何なのっ……!?」

 「話は後だっ!! 今は逃げるぞ!!」


 


 悠斗!!せ、せめてお姫様だっこじゃなくておんぶにしてぇぇええ!!


影法師の描写で不安感を煽りたかったけど、1人称で書くとただの優希のフェチみたいになったという愚痴。

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