翌日の本線
8日
今日の十時から俺らレベル1の班は日本の東京を模した会場に上空からパラシュートで参戦する。戦争は二日前から始まっているらしい。フューチャー社のレベル1の班と闘う。情報はそれだけだった。
俺は一人で一階の通称 武器販売機に武器を買いに行った。100ポイントで買えるのは…と探しているとクロスボウがあった。片手で扱える小型の弓とハンドガンをかけあわせた様な昔の武器だ。これが30ポイント。そして矢、五十本と矢入れ{腰に巻きつける型}と背中にクロスボウを引っ掛けられるフック。総計85ポイントで買えた。そしてヘリに向かった。全員がこっちに手を振って待っている。集合時間ぴったりだった。俺は彼らの持っている武器を見た。
「あれ?!それ普通の銃?!」彼らは「え、そうだけど…なんで?」俺はクロスボウを見せた。「え?!90ポイントでこれあったのに!」と笑われてしまった。中々命を賭けた闘いに行く会話ではなかったが、緊張していたのだろう。みんな顔が引きつっていた。俺はこんなんで生きて帰れるのかと心配した。
そしてパイロットから全員に戦闘用の服の軍服とヘルメットが渡された。真黒な軍服に真黒なヘルメット。ヘルメットには軍章である金の二本の木のエンブレムが付いていた。
隊長からの話が上空で行われた。
隊長「これからはチームになるわけだが…呼び名はコードネームの短い方にする。上等兵はハッピー。一等兵はラビット。二等兵はドック。」俺はふと思った。「隊長、ドッグでは?」「いや、彼は元医者の学校に行っていたらしい。だからドクターとドッグのシャレだ。」笑えないジョークを聞かされて苦笑いが出てしまう。
「三等兵はラット。俺はタイガーでいい。分かったな?」全員が返事をする。全くの初心者の戦争。何が楽しいのか分からないが、俺は金のためにやる。
パイロット「着地地点に着きました!降下準備願います!」
俺らは隊長の指示でパラシュートを付けた。パイロット「ホバリング!ハッチ、開きます!」標高500メートルという低空からの落下だ。指示士「スタンドアップ!」ハッチが開き、外の冷たい突風がヘリの中に吹き荒れる。ドック「へへっ、俺達死にますかね?」隊長はゴーグルを付けながらこう答えた。「俺の指示をきちんと聞けば大丈夫だ。」ドックの肩をポンと叩いた。俺も耳に通信機を付けゴーグルを装着した。耳元で隊長の声がした。「おい、聞えるか?」みんながOKサインを出した。指示士「レディ…ゴー!」いっせいに両脇のドアから飛び込んだ。みんながみんな叫んでいた。恐怖からか…。ハッピー「た…隊長!いつ開けば!!」隊長「指示を待て!」
隊長は腕に装着されている標高計を気にしながら下を見た。
450…400…350…300!」「いまだ!」隊長の怒号は通信機よりも本人の声が聞えるまでだった。俺はパラシュートを開いた。パラシュートは自動で着地地点に誘導してくれる。
上手く着地し、パラシュートを外して集合した。
隊長「よしみんな無事だな。さて作戦を聞いていたな?あの巨大な塔{今思うと東京タワーそっくりだった。}の東に奴らの動きがあったらしい。行くぞ」と言って武器を手にした。
それにならって俺らも武器を手にした。俺は矢をセットした。フォーメーションを組み、道の影を歩いた。
しばらく歩いていると、ゲームオーナーから通信がきた。
「今ちょうど三社の班が着きました。フューチャー社。ビースト社。ナチュラル社。それぞれ初心者の皆様には制限時間を設けます。明日の午前一時に終了の鐘を鳴らすので、戦闘行為をやめてください。以上。」隊長「三社か…。聞いた情報と違うな…。」ラット「ん?何か聞える」俺{ラビット}「どうした?」ラット「何か聞えませんか?」隊長は耳を澄ました。「これは…銃声だな。」その方向へ行ってみる。道路のT字路の向き合った「ー」の部分で銃撃戦をしていた。ラット「た、隊長・・・」隊長「大丈夫だ。加戦しよう。」ハッピー「良い作戦では無いですね。死亡率が増えるだけだ。」隊長は首を振った。「いいや、右の緑の迷彩のチームはビースト社だ。交友関係にある会社だ。加戦する。その方が効率的だ。分かったな?」ハッピー「…了解」そして迂回して後ろへ回った。
発砲をくり返すビースト社の班があった。走って行った。
隊長「おい」と声をかけると銃口を向けられた。「誰だ?!」隊長「…ナチュラル社だ。お前らの味方をしたい」するとビースト社の隊長が姿勢を低くしながらこっちに来いとジェスチャーをした。姿勢を低くしながら砂の詰まった袋で作ったバリケードの所へ行った。
ビースト社の隊長「よ、よく来てくれた…こちらは昨日からこの状況だ。食料と水がたりない。分けてくれないか…。」
相当腹が減っているのだろう。すぐに受け入れてくれた。さっそく各自持ってきたチョコレートやらパンやらを水と一緒に渡した。ガツガツと食べている。ビースト社の隊長「ありがとう。助かったよ。こっちは二人亡くなった。三人しかいなくて手薄だったんだ。本当に助かったよ。」隊長「ああ、しかし、作戦はブチ当たる事か?」ビースト社の隊長「ああ、これ以上危険を冒したくはないからね」隊長「分かった。奴らも相当体力が削られているはずだ。一気に…。」俺達の耳に聞えたのは、走っている足音だ。隊長「まずい、来たぞ!」おそらく銃声が止んだのを好機と思ったのだろう。突っ込んできた。隊長「構えろ!迎え撃つぞ!」全員が一気に奴らの方を向く。俺にはスローモーションに感じた。俺は一本の矢しか射れない。一人、また一人と敵隊員は全身に鉄の弾を浴びていった。全員のマガジン{弾倉}が空になる。俺は気付いた。三人しかいない。あと二人は…。後ろだ。気配を感じた。第六感というのがこれか。後ろに振り向く。いた!矢先を向けた。トリガーを引き、弓から放たれた矢がまっすぐ奴の腹に向かって飛んでいった。矢の先の鉄製の鋭利な部分が腹に食い込んでいった。不幸な事に腹の筋肉により矢が中に入った状態になり彼はショック死した。彼が倒れた影からもう一人が走ってきた。{くそっリロードが間に合わねぇ!}すると俺の前に隊長が現れた。右の腰からハンドガンを引き抜くと、眉間に一発、撃ち抜いた。隊長「ふぅ、今のは焦ったな。ナイスだ。ラビット、よく気付いた。」俺は何も言えなかった。いきなりって事にもあるのだが、敵を倒したのにゲームのような気持ちの良いものではなかった。相手の人生もあるだろうに…。色々な感情が、罪悪感が自分を内側から飲み込もうとしていた。
隊長に背中を叩かれ、ハッとした。「大丈夫だ。このゲームに参加した時点で彼らは、いや。俺達、参加者は病気はもとい、普通に人生は終わらせられない。」そうだ、彼らも少なからず「死」は覚悟していたはずだ。俺には罪は無い。
ビースト社の隊長「ありがとう。さすがナチュラルの隊員だ。ってまだレベル1か。でも強いよ。訓練はきついんだろうな。それより礼と言ったらあれなんだけど、奴らのカード取って行って良いよちょうど五人分あるし。僕らは収穫ないけど、生きて帰れるだけ良かったよ。」隊長「ああ、悪いな」
そして夜が更け帰る時間になり鐘が鳴った。
帰りのヘリの中で日記を書いている。明日は休みの様だ。
ポイントをチャージ出来た。まずは生き残って帰れた分の100ポイント、そして奴のポイント80。合計195となった。
今日はもう寝よう。精神的にもこれは辛い。