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この作戦は次の日も行われた。今日は石丸の友達、麻子である。
「ねむい、だからなんで俺まで」
依頼者の児島はやる気を見せない。担当の麻子はちょっと緊張している。石丸は鞄からちょっと大きめのハートの書かれたかわいい封筒を出す。
「どう、麻子が渡しそうな封筒にしたよ」
麻子が返事をする前に、石丸の話は次へ。
「桜、手紙は?」
「あ、はい。書いてきたよ」
「どれ」
石丸が見ようとすると、宇津木は慌てて隠す。
「あ、だめぇ」
宇津木はそう言って、石丸の持っていた封筒を取り上げ、手紙を中に入れ、封をしてしまった。
「あ、はい。あ、いえ、麻子さん、お願いします」
一度石丸へ渡そうとし、最終的に麻子に渡した。
「あら、らしくないスピーディーな動きね……デジャヴー?!」
昨日と同じ手筈だ。
流れが落ちつき始めた。いよいよ例の彼女が現れる時間だ。児島たちは山田のほう見ている。まだ、合図はない。
人通りがパラパラになった時、山田が動いた。右手を小さく動かし、指差す。3人が一斉にそっちを見る。遅れて、児島が見る。
「おはようございます! ごくろうさまです!」
来た、うわさの彼女だ。確かに、一人一人、挨拶している。元気がいいし……
「うお、やっぱ、かわいい」
児島は思わずつぶやく。その瞬間、石丸が足を踏む。
「いてっ。またかよ」
「ふん!」
「麻子さん、お願いします」
「あ、はい」
バタバタである。
彼女がちょうど一人前の警備員に挨拶をして次に行こうとする時に、麻子は山田のところに到着した。
「こんな馬鹿なことに付き合ってもらって……、すみません」
「ううん。なんかスパイごっこみたいで楽しいですよ」
こっそりと会話をして、例の封筒を受け渡しし、麻子はコソコソとうれしそうに、その場を離れた。封筒にはでっかいハートが書かれている。山田はその封筒にビックリしているような顔をしてみせる。
「おはようございます! 今日もですね、すごいですね」
うわさの彼女の挨拶に大きな変化が現れた。
「よし」
隠れて児島と石丸はガッツポーズ。宇津木もちょっとうれしそうだ。帰ってきた麻子はドキドキ感を堪能したようだ。
「麻子、100点! 大きな変化あり、よ」