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乗り気満々の石丸は早速友達を呼びに行ってしまった。
「あいつ、明日から、やる気なのか?」
児島はびっくりしている。山田はまな板の鯉状態、どうにでもしてくれといった表情。宇津木は……、ちょっとモジモジしている。山田はそれに気が付いた。
「宇津木さん、どうしたの?」
「えっと、あの。……あ、そうそう、……掃除したいの」
「あ、そうか、わりい」
児島は慌てて着替えを開始した。そしてニヤッとして一言。
「俺は、居てもらってもいいけど……」
「え?」
山田は慌てて、
「あ、宇津木さん、えっと、ちょっと出ててもらっていい?」
「あ、うん」
赤い顔して宇津木は部室を出た。
*
石丸が友達二人を連れて戻ってくると、扉の前で宇津木が立って待っていた。
「どうしたの? 追い出されたの?」
宇津木は『ううん』と首を振ったが、石丸はそのまま部室の扉を開けた。
「桜を追い出してなにやってんのよ! ……」
「……」
「……」
「……」
「……失礼しました」
しばらくの硬直&沈黙の後、石丸はゆっくりと扉を閉めた。再び内側から扉が開くまで石丸は静かだった。
*
「お、おまちどう」
部室の扉がゆっくり開き、私服のジャケットを着た山田が『ヌッ』と顔を出す。中に入ると、児島も着替え終わり、きちんと座っていた。
「ども」
「ども」
石丸と児島がとてもおとなしくなった。
「それで、洋子。私たち、どうすればいいの?」
石丸の友達が不安な声を上げる。石丸は軽く頭を振り、気を入れ直す。
「そうそう、実はさ、かくかくしかじか……」
石丸は簡単に事情を説明した。その間、山田はカチコチに固まっていた。
とりあえずバイトが入っている今週の4日間、やってみることになった。
「じゃ、明日、しのぶ。明後日、麻子。その次、私。その次、桜、ね」
担当が決まった。
「よろしくね。えっと、朝6時に集合ね」
「了解。じゃ、山田君、明日ね」
「ほ、ほんとにやるんですか? すみません、変なことに巻き込んでしまって……」
山田は申し訳なさそうに、大きな体を出来る限り小さくし挨拶した。
「じゃあね、洋子」
そう言って、石丸の友達のしのぶと麻子は去っていった。
「ふぅーーー」
大きなため息は山田だ。
「なんかすごく恥ずかしかった。これで、成果無かったら、更に恥ずかしいな」
「そ、そんなこと無いと思う。気楽に……」
宇津木がフォローする。児島が急に思い出したように再起動した。
「あ、手紙はどうする?」
石丸は眼を背けて目う。
「は、白紙でいいんじゃないの」
「でも、落とした時とか、リアリティとか……」
石丸と児島のなんかぎこちないやり取りの末……
「わかったわよ。じゃあ、封筒は私が用意するから、……お願い、桜、手紙、書いておいて」
「ええ、私?」
宇津木は突然のパスにびっくり。石丸はニコッとしてこう言う。
「だって、サクラの手紙でしょ」
……部室に不思議な霧が立ち込めた。