仲の悪い人も敵が居れば仲良し!
もう9話ですね、、、楽しんでいただけたら幸いです。
ついでに『ゲームの世界』で戦国時代ではありません。
足利義昭が織田家を頼り朝倉家から此方に向かっている時に僕は武具の用意や人を集めるでもなくお土産を持って挨拶回りだ!他の事は一豊さんや千代さんに任せて織田家の有力な武将の家を回っている。正直疲れるが先生が付き添いで来ているので逃げ出す事もさぼる事も出来ない。
南蛮の甘いお菓子は有効で大体の家は歓迎してくれる。残りの二軒が問題だけどね。
「良く来てくれた秋山、で何用じゃ?」
・・・柴田家に訪問すると優斗も来ていた。だが喋ったり等せずに座っているだけだ。堺の話を済ませると先生に言われた通りに『オルゴール』を渡した。
「なんじゃこの玩具は?」
「南蛮のオルゴールです。」
「貰って置いてなんだが、こんな物を貰ってもな、、、似合わんだろう?」
小さな箱を持つ勝家様がオルゴールのゼンマイを回している姿はなんだかほのぼのしている。
「確かにそうですね。南蛮でも女性に送るそうですよ。」
「はっきり言う、、、女子に送るのか!しかし何だ貰い物を、、、いやだが、、、」
お市様に送ろうか悩んでいるな?先生がなんでこれを選んだかわかった気がするな。
「先日は信長様の謙譲した物の中にはオルゴールは有りません。それにもう勝家様の物ですから、、、」
「そうか!・・・いや、すまんな。うん、有り難く頂いておこう。」
屋敷を出ると優斗も出てきた。なんだか疲れた顔をしている。
「綾人にしては気が利いてるけど、、、先生の判断でしょう。」
「あれれ?わかちゃうかな。そうなの!気に入ってくれるかしら?」
わざとらしい!普段の余所行きの笑顔で言われたからか優斗も溜息をして話し出す。
「まあ、いいでしょう。家の勝家様の欠点でも有るんだけどこればかりはどうにもならないしな。・・・ああ、このお菓子ありがとうな!家の『さよ』にも渡しておくよ。」
そう言って歩き出した優斗を見送り今度は木下家を目指すんだけど、、、気が重いよ本当に!
歩いている途中に茶屋が有り其処で休憩する事にして座ると先生は笑顔のまま話し出す。
「・・・前に言った事は憶えているかしら?」
「・・・首飾りの事ですかちゃんと持って来てありますよ。でも何で篠原先輩なんですか?」
「立花さんが良かったの?・・・冗談よ睨まないの。意味は、、、何時かわかるわよ。其れと少しは強引に行きなさい。受け取らなかったら無理やり渡して、受け取るなら秋山君が首飾りを着けてあげなさい、、、いいわね?」
先輩達の話は正直思い出したくないが、、、僕が悪かったのなら謝ろうとも考えていた。斎藤先輩には謝りたくは無かったけどな。
木下家の屋敷に着くとねねさんが美人でテンションが上がったが通された部屋に立花先輩がお茶を持って来てくれたが、完全に無視されて上がったテンションは下がりまくりだよ!・・・しばらくすると木下様に、、、斎藤が部屋に来た。睨むなよ!
「堺の土産にねねが喜んでいたぞ!それにしてもお前が家に来るとは珍しいな。何か相談事か?」
「い、いえ挨拶に来ただけです。それに南蛮の新式銃『魔法銃』の事も伝えようかと。」
「そうかそうか、ならば真人と話すがよい。その手の話は任せきりでな。それにこれから所用で出掛けなければならん。すまないが真人に任せたいが良いかの?」
「は、はい。此方は問題ありません。」
出て行く木下様を見送ると一気に静かになった。・・・先生はニコニコしているが助けてはくれない様だ。此方を睨む斎藤に事務的に話を切り出すがどうも話が噛み合わない!
「新式銃の話は俺も聞いているが値段が高過ぎる。織田家では採用しないな。」
「火薬が要らないんだ。多少高くても買うだろう?それに決めるのは僕らじゃない。」
「今の織田家では鉄砲隊を持つのは家くらいだ。その隊を指揮する俺の意見は重いと思うけどな?それともお前の方が偉いのか?堺で何かの功績を立てたからって誰もお前の言う事なんか聞かないと思うけどな。」
・・・別に家で採用するかしないかの話をしてるんじゃ無いんだ。ただ、こんな物が有るがどう思うかと聞いたつもりなのに!大体だ!斎藤は実戦に出ていないから其れこそ意見が通らない事が考えられるじゃないか。
「・・・そう。わかったよ。」
「どうした早く帰らないのか。」
「この世界に来てからの事を、、、謝りたいんだ。すまなかった。」
ドッゴ!
鈍い音と共に下げた頭を踏みつけられた!座っていた体勢から下げたから土下座をして踏まれている状態だ。
「さ、斎藤君!止めなさいそんな事、」
「黙っていて下さい!・・・お前らの所為でこんな事になったんだぞ!責任も取らずにのうのうとしていて今頃になって謝りに来ても遅いんだよ!俺はお前達を許さないからな、絶対に後悔させてやる!!!」
バッン!!!
部屋から出て行った斎藤を見たが明らかに怒っている。当然だけど納得できない自分がいるのも確かだ。
「・・・大丈夫?まさかあそこまで子供だったなんてね。此処に来なくて正解だったわ。其れよりなんで謝ったの?」
「・・・え?だって!えっ!先生が僕の所為でこうなったからって!」
急に肩を震わせて笑いを堪えている先生が
「クックク!確かにそれも有るだろうけど出ていたのは斎藤君でしょう?秋山君からお金や物を盗ませておいて其れを当然の様にしているのよ?おかしいとか考えないの秋山君?ついでに言えば、この世界に来たのがどうして秋山君達の所為なのかしら、、、証拠なんか無いでしょう?ゲームを持っていたと言うならそんなの言いがかりよ。だって、そんな条件に該当する人は何万人も居る筈だし、、、ゲーム機に出来る事でも無いでしょう。」
なんだかもの凄く騙された気分なんですけど先生!!!
「別に秋山君だけが悪いんじゃないのよ。それじゃ次に行きましょうか。」
そう言って立ち上がった先生が篠原先輩を探し始める。篠原先輩は裏庭に居ると言われて僕だけで首飾りを私に行った。
「・・・何の用。」
「あ、堺のお土産を渡しに、、、これです。」
「っ!い、要らないわよそんな物!」
目を合わせない先輩にそう言われたけど、こっちも渡さないと不味いんだ!無理やりに手を掴み首飾りを握らせた。
「・・・正直に言えば僕は何が悪かったのかわかりません。でも、、、先輩達には謝らなくちゃって考えたんです。すいませんでした。・・・だから受け取ってください。」
「・・・都合がいいわよね。受け取ってはあげるけど私は君を許さないわよ。」
「はい。・・・それでいいと思います。」
そのまま屋敷を出ると先生が待っていた。渡せたと言うと頭を撫でてくれたが、、、僕まで子ども扱いですか?この人に認めて貰える為には何をすればいいんだ?帰る途中に話をしても篠原先輩にだけ首飾りを渡した話を聞いても答えてはくれないし、、、
「大した理由じゃないわよ。其れよりも今後はどうなるのかしらね。大分私の知る歴史より流れが早いし、既に色々と変わっているから読みにくいわ、、、浅井家をどうするのかしらね?」
「同盟を組む筈じゃないんですか?僕はそう思っていましたけど違うんですか!」
裏切る事は知っているからな、、、でも今までは状況が違うのかな?
「確かにね。・・・でも今の織田家には倒すだけの力が有るのよ。それにそんな織田家を周りが許すかしらね?最悪、対織田家で連合でも組まれたら厄介よね。」
そんな事有るのか?確かに兵力は多いし、物資にも余裕が有る、、、考えなかったなそんな事は。
先生の予想は的中してしまった。浅井家、六角家を中心に組まれた連合軍その数は3万を超えていた。織田家も2万を超えていたが、、、不利な状況だ。そんな中で姉川にて両者が向かい合う形になっている。僕も優斗ももちろん参加だ。斎藤も参加していることだろう。
出発前には先生からは特に何も注意はされなかった。だけど真剣な顔をして、
「秋山君はもう逃げられないのよ。・・・だから生き残りなさい。それだけで良いから、、、先生との約束ね。」
そう言われた。
何処からこんなにも集めたのか六角家や浅井家、、、それに朝倉家に聞いてみたいが今は無理そうだな。軍議では信長様が怒り気味だし、今では木下と柴田の二大看板の織田家らしく意見が割れて大変だ。
「浅井も六角も敵同士の癖にこんな時ばかり手を組み追って!朝倉は名門の維持とでも言ったところか?・・・逆らうなら容赦はせん!」
「殿!先鋒はこの勝家に!」
「いえ、此処は木下隊の鉄砲隊の実力をお見せしましょう。」
互いに戦功が欲しいのか譲らない中で信長様が喋りだす。
「・・・浅井は織田の申し出を断った。六角は邪魔で、朝倉は問題外、、、所詮は寄せ集めに過ぎん。勝家は六角を攻めよ!猿は朝倉じゃ!浅井は我自らが滅ぼしてくれるわ!」
「「「はは!!!!」」」
軍議が終わるとすぐに皆が準備に入る。優斗は大丈夫だろうか?僕は生き残れるだろうか、、、、そして部下を失わずに勝てるのだろうか。
僕は部下と共に騎馬隊に配属された。周りには皆強そうな者ばかりが集められ、突撃の合図を今か今かと待ちわびているようだ。・・・僕は震えている手を押さえ前を見る。逃げられない!もうたくさん殺しているんだ!だったらこのまま平和になるまで殺すしかないじゃないか、、、考えていたら馬に乗った一豊さんが近づいてきて声をかけてくれた。
「綾人さま大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫さ。一豊さんは平気なの?」
「・・・怖いですね。しかしそこに行かねば私の目標には届きません。」
「一国一城の主、だったよね。出来ますよ一豊さんになら、」
少し照れくさいのか頬をかきながら一豊さんが答えた。
「それも有るのですが、、、今は他にも有ります。ただ『さん』付けは止めていただけないのですね?」
「・・・似合わないのさ僕には、、、ただの我侭な子供だって先生に言われたよ。」
「そんな事は!」
その時伝令がやって来て状況を告げてくる。
「柴田様、六角家とぶつかりました!木下様も其れに合わせ朝倉に攻撃を開始したようです!騎馬隊も用意せよと信長様の命令にございます!」
始まるな、、、武器を持ち直すと一豊さんも馬を元の位置に戻し突撃に備えた。先頭集団に居る僕はただ開始の合図を待っていると突撃の合図が出された。
「これより浅井に攻め込む遅れるな!!!」
指揮を執る人に着いて行けば前からも騎馬隊に槍を持った兵達が付き従っている。手綱を放すと弓を構えて射程に来るのを待ち、、、放つ!
ヒュッン!
一人が馬から落馬するとその後ろでもたつき出す。其れを繰り返し隊列を崩した騎馬隊に突撃する!・・・此方が優勢だろうが油断できない!弓を構えた次に狙いを定め時に、、、、、大地が大きく揺れた。
「な、何だ!地震か!!!」
馬からは振り落とされたけど僕は運良く怪我はしていないが、敵味方共に怪我人が出た。・・・おかしい!こんなに地面が割れて足場が悪いのは僕等の周りだけだ!それに他の場所ではまだ戦っている。
「なんなんだよ「放てーーー!!!」な!」
その時わかっていたかの様に敵から矢が放たれ、魔法も飛んできた!・・・足場が悪く逃げにくい!魔法は防げるが矢は、、、しまっ!
ヒュッン!!!
「グガアアア!!!」
「一豊さん!!!」
僕に当たる筈の矢を体をぶつけ僕を庇った一豊さんが矢を顔に受けてしまった!
「と、殿!!!」
一豊さんの部下が駆け寄る中で状況は更に悪くなる。敵の騎馬隊による突撃だ!数も多い、、、あれが本命か!
「あ、綾人様はお逃げ下さい!」
「一豊さんなんで!」
数名に支えられて立ち上がった一豊さんの頬からは矢が抜かれていたがまだふらついているようだ。
「ここは私たちが、、、ですから!」
「そんな事!「逃げろといっているんだ!!!」か、一豊さん、、、」
部下の肩を払いのけ槍を敵に構える一豊さんは息が荒く今にも倒れそうだ。
「・・・すいません。しかし逃げて下さい!あなたは生きなければならない。私などよりも、、、織田家には必要な人なんです。ご自身をもっと信じてください!私達はあなたの部下で良かったと、、、信じさせて下さい!」
・・・なんでさ!なんで皆、僕の前に出るのさ!
「この馬ならまだ走れます、、、速く!」
重次もなのか、、、お前まで残るのか?
部下が槍を持ち壁になる中で僕だけが馬に乗せられる。逃げろと!生き残れと!死にそうな部下もこちらを見て速く!とかすれた声で言ってくる。
いいのか?逃げて良いのか?・・・気持ちは苦しいのに、、、どこか、ほっとした自分がいた。・・・・・・・・・・・・もう逃げられないのなら、もう進むしかないのなら、もし自分を信じたいのなら此処では逃げたくない!!!
「・・・重次、、、槍を渡せ。」
主人公の最強チートは『魅力』ですかね?ゲームでは大した特典では無いのにこの世界では大活躍ですね!