通訳って大変だよね。
お気に入り登録に感謝です!今回は先生を賭けての勝負ですね。
堺の港は朝から賑わっている。海の上には浮き輪に棒をさしてその上に的が付けられ5つ浮かんでいた。人が多い港では僕等の周りだけ見物人が囲んでいる為に異様な光景を見せている。・・・通訳の人がこちらに来た。
「条件はこの新式の『魔法銃』であちらの的を全てを20発以内で撃ちぬく事だそうです。・・・宜しいですかな?」
「『魔法銃』?何なんですかそれは。」
見せて貰った鉄砲には火縄が無い銃だった。握る場所に宝石が埋め込まれている以外は特に変わったところは無い様だ。
「火薬を使わない銃らしいです。・・・話しか聞いた事が無いのですが南蛮では今の主流なんだとか。」
ニヤニヤと笑いながら先生の横に立つ南蛮人達はこちらを見て通訳の人に何かを叫んでいた。
「・・・20発撃てたらその銃は差し上げてもいいそうです。私が聞いた話ではその状態なら普通の人が5発も撃てないとか、、、」
「・・・それだけしか使えないのに主流なの?」
「普通は補助に魔法石、、、其処にはめ込まれた宝石ですが、もう一つ付けて扱うようです。」
それだけの条件を出してくるなんて、、、先生はどんな物を賭けの対象に選んだんだ?・・・扱い方を通訳の人から聞きながら昨日の事を思い出す。
昨夜の宿で先生が南蛮の若者との賭けについて話してくれたが、、、
「自分を賭けの対象にしたんですか!何を考えているんですか先生!」
「うーん、そんなにおかしいかしら?大丈夫よ秋山君には能力も有るでしょう。」
・・・先生の出した条件は教えてくれなかったが自分を賭けの対象にするなんて何を考えているんだ?それだけの価値が有るものなんだろうか、、、でもその為に自分を差し出すなんて!
「向こうは勝てるつもりの様だから結構な条件を出せたと思うし、、、それにこれからは必要な物よ。」
・・・必要な物が何なのかわからないがこんなに不利な条件で勝たないといけないのか。
説明が終わると通訳の人が弾込めをして渡してくれた。・・・少し重いな、、、構えて一番右に浮いている的に狙いを定め引き金を、、、引く!
パァン!
弾は的には当たらず水面に小さな水柱を作った。反動が思ったよりも大きい!それに何だか酷く疲れる。・・・成程ね、こんなのを20発も撃てるとは思わないよな。
「弾を込めましょう、、、」
「・・・自分でやりたいんですけど?火薬が無いなら詰め込むだけでしょうからね。」
もう一度構えるが次は片膝を着く、、、引き金を引くと弾は外れまた水面に小さな水柱が出来た。
次は身体の気を使い固定するイメージで使用した。波に揺られて的が動いてしょうがない!
パァン!
・・・擦ったか?周りの観客から小さな歓声が上がる中で弾を込める、、、軽く深呼吸をして構えた。
パァン!
「「「おぉぉ!!!」」」
的のど真ん中とは言い難いが確かに弾は的を撃ち抜いた。すぐに弾を込め次を狙う、、、
パァン!
パァン!
パァン!
パァン!
・・・周りの観客は静まり返っていた。8発で全て撃ち抜くとは思っていなかったのだろう。
「・・・通訳さん、彼等にいって下さい。僕の勝ちだと、、、せんせ、川上アリスを返せとね。」
口を開けて驚いている南蛮人達に通訳の人が告げると先生にプロポーズした若い男がこちらを睨んでいたが、正直こんな事に付き合ったんだから睨まないで欲しい。
こんな勝負なんかしなくて普通に口説けばなんとかなったんじゃ、、、先生に付き合っていた人がいたかな?まあ、いても元の世界の恋人だろう。
あの勝負の後に先生は南蛮人から何やら書類を貰っていた。これが必要な物なのかな?
「不思議そうね?なんだと思う。」
「・・・権利書かなんかですか?」
船とか土地くらいを賭けてそうだよな先生は!
「惜しい!紹介状よ。」
「紹介状?」
「南蛮の商館には普段は表に出さない商品も有るらしくてね。そうね、、、大砲とかさっきの魔法銃の様な物ね。こんなに簡単にくれるとは考えてなかったんだけど、、、まあ、これからの交渉次第では売ってもくれないんだけどね。」
凄いのかそれは?
「通訳さんに話を付けておいて貰ったから、明日は南蛮の商館に行きましょうか。」
次の日は確かに通訳さんを間に挟み話をしたが個人には売れないから大名となら取り引きを考えると言われた。・・・個人で大砲なんか買わねーよ!
信長様宛ての手紙や書類やらを渡され買えそうな物を見て回った。
「この首飾りと、、、甘い物でも買っていきましょう。」
先生が首飾りを買うのか?やはり女性の様だな。
「・・・秋山君がこの首飾りを篠原さんに渡しなさい。仲直りしないとね。」
「え?立花先輩や、、、斎藤の奴には買わないんですか?」
先生が笑顔で金平糖の入った袋を振っている。それを渡すのはわかるんだけど、、、
「良いから、その代わりこっそり渡すのよ。・・・後はお土産にしましょう。」
・・・物凄く買い込んだものだ!かなり重たいんだが先生にそんな事を言ったら何を言われるかわからない。
オルゴールとか使うのかな?
堺では頻繁に能力を使い質の向上をやってお金や物を集めた。コピーすれば良いのに先生はそれをしないでよく店から売り買いをしていたけど、、、楽しんでいる感じでは無かった。
南蛮や明の馬を買ってもいたしな。どうやって運ぶんだよ?
夕方に港の方に歩いていたら一人の少女が近付いてきた。・・・花か?その辺に咲いている花をきれいに編んで飾りにした物の様だ。
「お守りです、、、買って頂けないでしょうか?」
「あ、ああ。」
そう言ってお金を渡すと喜んでお礼を言って、また花を売りに戻った。
・・・丁寧に作った感じがする。ボロボロの服を着て何人かの子供達と花の飾りを売っている様だ。
「なんだこのガキ斬り捨てられたいのか!」
な、なんだ!振り返るとさっきの子供が殴られて地面に倒れていた。
「なにを「####!」え?」
叫ぼうとしたら先に飛びだした南蛮人の若者が子供を殴った浪人であろう男の前に出て何かを言っていた。
あの浪人酒を飲んでいるのか?不味い!浪人が刀に手を掛けた!
「こ、この異人が!!!」
キィンィィ!
すぐに刀を抜いて飛び込み浪人の刀を受け止め、鞘で殴って気絶させた。
周りには野次馬だらけだったが先生が通訳を連れて此方に来てくれるまでなんとも異様な光景だった。
南蛮造りの建物に通され事情を話したら若者の同僚達が慌ててお礼を言って来た。
「あのこの方がアリスさんに謝りたいと、、、掛けの対象にした事を後悔している。許して欲しいと、、、」
「そうですか。私は気にしていないと伝えて下さい。寧ろプロポーズは嬉しかったと、」
通訳を通しての会話はやはりなんと言うか、、、通訳をしている人も時々困る様な内容まで話している。・・・もう通訳の人を許して上げて、と言いたい。
ん?通訳の人が疲れた顔でこちらを見て、
「貴方にも言いたい事が有るそうです。・・・貴様は嫌いだ!だけど負けたから認めてやる。魔法銃は記念にくれてやる!っと言っています。」
「・・・僕も嫌いだけどありがとうと伝えて下さい。」
その後はお互いに握り潰さんばかりに握手をした。
堺から離れる時には暴れた浪人、『浜野安治』を連れていく事になった。理由は人出が欲しかったのと酒に酔って暴れたら時に殴った少女に謝っていたのを見たのも有るが、仕事が無く酒浸りの生活をする様になる前は仕官していたらしい。
「・・・私は力仕事や戦に役に立たないと言われて、、、確かに弱くて苦手ですが算術には自信がありこの堺に来たのです。しかし年齢が、、、42ではどこも雇っては貰えず。」
安治を連れて帰る時はその家族3人も居て息子の『浜野重次』も雇う事に、、、確かに荷物が多いから助かったけど、また人が増えたな。
「良かったじゃない!人材が手に入ったんだから。・・・其れに重次君は秋山君より年下だから命令しやすいでしょう。」
「命令とかそんな事、、、」
荷台に乗っている先生の目が鋭くなる。
「秋山君はもう何人もの部下がいるけど最近得に『様』付けや礼儀を嫌うわよね?良い傾向では有るけど、、、それで良いのかしらね。」
・・・駄目なのか?無理に畏まれるよりは良いと思うんだけど、、、
「・・・厳しくしろとかは言ってないのよ。ただこの世界の文化を無理に変えても駄目よね?」
「優しいのはいけない事なんですか?」
「優しい?甘いだけでしょう。舐められるわよ。重次君は良いけど、安治さんは気を付けなさい。甘い顔をすれば付け上がる人ね。」
真面目そうな人なんだけどな?大体雇うと決めたのは先生なんだけどね。
「僕には似合いませんけどね。」
「・・・そう。」
久し振りに家に帰るとなんだか安心する。すぐに城に行かないといけないが、、、
「綾人様、お帰りなさいませ。」
「あー、うん、ただいま。」
慣れないんだよこの状況が!『様』付けを辞めてくれと言ったら皆が反対するんだ!立場を考えて下さいとか、礼儀だからとか、千代さんには叱られたしな、、、
「堺はどうでしたか?」
「凄かったね。新式の武器に食べ物に特に南蛮船!大きかったな、、、何時かは乗ってみたいよね。」
感想を言っただけなのにやけに皆が嬉しそうにしているが何でだ?・・・珍しい話なんてしてないぞ感想なんだから。
「後で子供達にでも話してやって下さいませ。それとあの3頭の馬はどうされたのですか?随分立派な馬の様ですが、、、それからあのお方達は雇うのですね。」
「馬は信長様に献上するんだ。大きいのも異国の馬だからかな?それから浜野家の皆さんだけど雇うよ。安治さんと重次君だから面倒見てね千代さん。」
「・・・ハア、またその様な、、、」
溜息をする千代さんが何かを言おうとして止めたから話を切り上げて風呂に入る事にした。僕が一番風呂じゃないといけないんだとか、、、そんな必要ないのにな。
風呂も済ませ部屋で書類仕事に目を通していると僕が居なくても仕事は問題なく回る様だ。其れがなんとも言えない気持ちになる。僕は必要なんだろうか、、、自分だけでは満足に能力も使えず迷惑を掛けるだけの存在だと実感してからはそう考える事が多くなった。
縁側に出るとまた星が綺麗に輝いている。眺めていると先生が子供達に堺での出来事を話していた。
「先生告白されたの!」
「そうよ。南蛮人の男の人で格好良かったんだから!」
「凄いなー、私も告白されたい。その人も家に来るの?」
「異国の人だから、、、それに先生断ったわ。」
「なんで!なんで?」
・・・子供に何話してるんですか先生!それにしても今日も星が綺麗だ、、、元の世界でもこんなに見た事無かったなのに。
「あやとさまが先生を賭けて勝負したの?やっぱ凄いなあやとさまは!」
「先生とは何時結婚するの!」
「何時かなー?先生にもわからないなー。」
な、何の話してんだよ!無いぞ!無いからな!絶対に其れは無いからな!
次の日には城に報告しに行ったが城の中が慌しい。やたらと女中が忙しそうにし、皆がそわそわしている感じがした。報告時に信長様に馬や魔法銃等を謙譲を終えたから確認してみた。
「なにか有ったのですか?城の中が騒がしいのですが、、、」
「ん?おお、秋山は知らんか。実はな足利義昭が織田家を頼って来るのよ!これで大儀は我等に有る。・・・お前も準備しておけ、京を押さえたなら南蛮の商館との繋がりを強化せねばならん。まあ、お前がここまでするとは考えてなかったから今は取引など出来ないがな、ハハハ!」
・・・ついに上洛を目指すのか、、、皆に相談しないとな。
次回は先輩達との絡みです。ハーレム斎藤先輩に対する対応とかどうしよう?後は主人公にもう少し部下が欲しいのですが、オリジナルか実在の人物がいいか悩んでいます。