人間って恐い
ここまでがストック分です。
今川家が動き出したようだ。周りが凄く慌てているので嫌でも情報が入ってくるがどれもいい情報ではない。城が落ちたとか裏切り者が出たとかだ。利家さんや木下藤吉郎も慌てているから相当なんだろうな。僕等はこれからの事を考えているけど、どれも戦に参加しよう!に繋がってしまう。桶狭間は勝ち戦だけど戦は戦だから何があるかわからないのに!
「だから今川の大将首を獲って出世しようぜ綾人!」
「ちょっと待ちなさいよ!こいつやあんたが死んだら誰が面倒見てくれるのよ。無難に参加してそこそこの手柄を挙げてきなさいよ!」
「だが篠原、これはチャンスだぞ。ここで二人が出世すれば生活は楽になるのは確かだし、これから生き残るには力は必要だろう?」
「僕は参加するけど無理はしない方向で「「「駄目に決まっている!!!」」」・・・そうですね。」
こんなんばっかりだよね戦国時代ってさ。だけど早いうちに手柄を立てて後方で指揮が出来る様な地位に就くのは確かに安心できそうだな。
「二人とも居るか!・・・なんだ居るではないか?」
「どうしたんですか利家様?」
「嫌な、逃げ出すものが多くてな、、、お前たちをみかけなっかたものだから逃げたのではないかとな。」
頭をかいた利家さんが悪いと謝ってきた。そんな必要のに、、、勝つんだから。
その日は早めに寝て夜には起きて具足の準備をする。緊張してきたな、、、
カン!カン!カン!
鐘が鳴るとそこらじゅうで慌しく人が動き出した!僕も優斗と一緒に集合場所に向かう。途中には多くの武士たちが同じように向かっていた。みんな顔が引き締まり真剣そのものだ。
「これより今川に奇襲を掛ける!者共奮戦せよ!」
「「「おおおおお!!!!!」」」
一度神社に行き必勝祈願を行うと縁起が良い事が起きたとかで戦意が上がってきたようだ。僕等にはわからないけどこの流れが大事なのだろう、、、たぶん。雨も降ってきていよいよ奇襲の条件がそろったとかで周りも神のご加護がとか言っている。
森に隠れるように進軍すると、今川の兵士の斥候に何度か遭遇するが全て始末していく。正直人を殺したことが無い僕等には見ていられない光景だがこれから同じ事をするかと思うと恐ろしいし、殺されたくないとも思う。前を行く優斗も顔色が悪い。
「・・・止まれ。見つけた様だな。」
信長様が四千にも満たない兵に指示を出していく。突撃の指示を出すのを待つ中で辺りには今川兵の酒盛りの声しかしていない。今回は槍働きだからと弓は持ってきていないが、、、弓隊も居るようなんだけど?どうしてここに配置されたのか聞いてみたいがそんな暇も無いしな。
「突撃せよ!!!」
「「「「「うをおおおおお!!!!!」」」」」
一斉に突撃する見方の前にフライング気味で飛び出した僕は慌てて居たが止まると見方に串刺しで遅いと見方の邪魔になる。一人で突っ込めば敵に囲まれる。最悪じゃないか!!!!!
「な、何だ!どこの部隊だ!」
「織田か!」
「早く大将に知らせよ!」
慌てている今川兵を無視してひたすら走ると天幕が見えたので突っ込んだ!其処にはなんと偉そうな武将が鎧も着ないで立ち尽くしていた。体当たり気味に槍を突き出したが余裕な体裁きで避けられ転んでいるうちに刀を持っていた。
「この麻呂を追い詰めるか、、、信長の奴を甘く見すぎたか!だがただでは死ねんのでな!」
斬りかかって来る敵将の一撃を転びまわりながら避けて立ち上がり槍を構えなおしお互い向かい合う。お互い時間が無いのに僕だけ焦りが出ているのか息が荒い。汗で槍が上手く握れない気がするし、自分が殺されるイメージしか浮かんでこない。そんな中天幕に人の近づく感じがした。敵将の後ろに味方が現れたが一太刀で切り捨てられた!今しかない!
「抜かった!」
斬り返された敵将に向かって投げた槍は見事に切り捨てられたが、懐には潜り込めた!刀を抜いて居合いの様に放たれた刀には確かな感触がある。胸に深い傷を作った敵将が倒れると
「まさか雑兵に斬られるとは、、、だが、、これも、、、」
「はあ、は、ハハハ、ハハハハハ!!!!!討ち取ったぞ敵将を討ち取ったぞーーーーーー!!!!!」
その後は向かってくる敵を斬り捨てて見方が来るまで笑い続けていたとか言われたがほとんど覚えていない。利家さんや優斗が駆けつけて取り押さえるまで刀を振り続けていたらしいが、、、後は斬り捨てた武将が大手柄だったくらいかな。
・・・今川義元や数人の重臣を討ち取り信長様の前に出た時にはかなりやつれていた。だが周りは大騒ぎだったな東海一の弓取りを討ち取ったと、、、
優斗が数人の手柄をくれと頼んできたから適当に優斗が討ち取った事にして報告した。その後は宴会騒ぎだがあまり気が乗らないと早めに帰った。土産に貰った料理を先輩たちに渡して家から離れてひたすら涙を流して吐いていた。正直きつ過ぎる、、、こんな経験は慣れたくないが『経験値255倍』のお陰か吐く気すら起きなくなって来ているのに腹が立った。・・・身勝手すぎるともわかっているだけに気持ちが辛くなって来る。
次の日には忙しい日々がまた続いていた。戦の後片付けなど雑用しかしてないが、聞けば逃げ出した者たちも帰ってきたりしているが明らかに扱いが違う。僕が仕事で報告に行くと身分の高い人を待たせて対応してくれたので聞いてみれば逃げ出した者で戻っては来たが誰も相手にはしていないらしい。
こんなにも扱いが変わるものなのかと考えさせられたが、上のほうでも徳川が今川を裏切り織田と同盟を結んだりと色々とごたごたしている様だ。
「で、褒美とか無いの?あれからしばらく経つんだけど。」
篠原先輩が食事中にその話を切り出すと優斗も思うところがあるのか不満を口にする。
「篠原先輩の言いたいことはわかりますけど、別に先輩が貰うわけじゃあ無いんですから。」
「食事の仕度とかしてあげているじゃない!」
・・・最近は何時もこうだ。何かに付けてしてあげてるとか、仕方なくとかを繰り返し言ってくる。確かに助かるが苛々してしょうがない。他にも服や金を強請る時だけ猫なで声とかして来るのにも飽き飽きしている。最初はうれしくなって貸していたが渡したとたんにいつもの性格だ。舐められるのは仕方ないがもう少し何とかならないのだろうか。飯も微妙なんだしさ!食えなくは無いけど不味いぞこれは!
「昨日くらいから領地の分配が始まっているみたいですからもうすぐじゃないですか?」
適当に話を切り上げると外に出て槍を振るう腹が立つときは身体を動かして発散しないと戦から戻ってから狂いそうになってしょうがない。まるで身体の一部のように槍を振るえる様になると気持ちがいい。刀も振るうことも有るが戦は基本的に刀は使わないからな、、、
家に戻ると先輩たちは寝ている様だから起こさないように布団に入る。最近の夢は斬り捨てた武将たちに追いかけられる夢ばかりだからぐっすり寝られないんだけど、、、
城に着くと割りといい服を着て信長様の前に出て褒美を受け取る事になっていた。頭を下げて挨拶を済ませると御付の人が武功を述べてそれについての報酬を述べていく。まるで形式だけのやり取りだ。領地じゃなく給料を貰いたいと事前に言っていたから何を貰うかも大体わかっていたしね。
「どうだ秋山、何か欲しいものはあるか?」
「・・・欲しいものですか?そうですね、、、部下が居ないので部下が欲しいですね。」
「秋山!信長様に向かってなんだその口の聞き方は!」
「良い、そうか部下か、、、山内やら数名を貸そう好きに使え。」
こんな簡単に決めて良いのかと考えたけど気にしたてもしょうがないから考えるのをやめて自分の家に帰った。帰るとすぐに引越しの準備に取り掛かる。隣の優斗も確か褒美が貰えて加増されていたから引越しのはずだよな?
「秋山様、山内一豊にございます。」
「・・・ああ、上がってくれ。」
もう来たのかよ!まあ楽で良いけどさ。
「これよりは秋山様の指示に従えと大殿より伺っております。つきましては挨拶にと、、、」
そうか挨拶か!忘れていた。前田さんの家にも挨拶しておかないといけなかった。
挨拶に行くとこちらも忙しそうだ。屋敷が変わるから仕方ないのと、新しく人を雇わないといけないみたいで忙しいのだろう。僕も人を集めないといけないけど、宛てがほとんどにしどれくらい集めれば良いのかわからないしな。
「秋山殿、これは気付きませんで!どうかなさいましたか?」
まつさんに礼儀正しくされるなんてなんか逆に怖いぞ!
「え、いえ、引っ越すのでその前に挨拶でもと、、、大変そうですね?」
「うれしい忙しさですよ。殿も無事でしたし加増されたのですから喜ばなくてはなりません。秋山殿も出世なさったのでしょう。おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます!」
何だこの違いはうれしくて涙が出そうなんだけど!・・・それにしても人が多いな?こんなに雇う必要有るのかな?
「・・・皆、前田を頼って来てくれたのですが、、、正直抱えきれないのです。戦死した者の家族や家臣に逃げ出した者の縁者と、、、子供も多いので何とかしたいのですが加増されたからと言え流石に困り果てています。」
確かにみんな暗いな、、、女子供の方が圧倒的に多いし、、、
「あ、あのまつさん!家に来てもらうのは駄目ですか?家事など出来れば言う事無いのですが。」
「・・・わかりました。元々頼みに行く積りだったのですから此方からお願いいたします。どうかこの者達の事をよろしくお願いいたします。」
「はい。」
屋敷が変わると急に広くなったから困る上に優斗とも離れてしまった。優斗にも家来が出来たから安心といえば安心なんだろうが、問題は家だ!
「ここは秋山様のお部屋です!なんですかあなた達は働きもしないで、それでも女子ですか!」
「私達は働かなくても良いんです!秋山も何とか言いなさいよ!」
「!!!仕えている身でなんという、、、秋山様!この者達を追い出しなさいませ。これならまだ幼子達の方が役に立ちます!」
・・・確かにそうだけど、、、先輩達もいい加減にして欲しいよな。千代さんが家に来て取り仕切ってくれているからなんとか家は回っているのに二人とも働かないから千代さんの怒りが半端ないんだけど!
「ハア、それより千代さんその幼子達は?」
「読み書きを教えていますが、、、秋山様も毎回この話題を逸らさないでください!それともこの者たちと結婚する積りなのですか?」
「はあ!何で私達がこんな奴なんかと!」
「無いな。」
・・・泣いて良いよな?本当に泣きたいんですけど!!!寝転ぶ先輩達に冷たい目で見られるまでして保護しないといけないんだろうか?本当に嫌になってきた。
「秋山様、お客様です。斉藤様と名乗られていますが?」
斉藤?・・・知らんぞそんな奴、
「真人よ!迎えに来てくれたのよ。」
「やれやれ、ようやくか。」
おいおい、なんだこの物分りの良さは!
客間に行くと確かに真人先輩だった。本名が『斎藤真人』だったとは今初めて知ったな。
「麗と楓を返して貰いに来た。」
・・・え?
「真人、、、待ってたわ。」
「まったくだ、随分待たせてくれたものだ。」
・・・なんなのこの感じ、可笑しくない?僕が悪者扱いなんだけど、無駄に格好良い真人先輩が説明している傍で僕だけ着いて行けないんですけど!!!
「二人を引き取りたいならどうぞご自由に、この者たちにそれだけの価値が有るかは疑問でしょうが有りませんけど!」
千代さんが追い出すように急かす中で先輩達は仲良さそうに歩いて出て行った。あれ?真人先輩の服は僕の無くした服に似ているような?・・・前から服や物が無くなると思ったら先輩達が渡してたのかよ!
「これで清々しました!秋山様もこれに懲りたら女子には十分注意してくださいませ。」
「あ、ああ。」
・・・身に染みて理解したよ。
先輩達、、、