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ガチでただのゴブリンに転生したんだが

掲載日:2026/03/20

気がついたら、俺はゴブリンだった。

「えっ、マジかよ」

声が出た。それも、鳴き声じゃない。日本語だ。

……いや、まぁ。

まずそこに安心してる時点でどうなんだとは思うけど、とりあえずは良かった。

でも、手はゴツゴツしていて皮膚が深い緑色だった。それに爪が放置された便座ぐらいに黄ばんでいた。あと、なんか臭かった。

これが自分の体臭と考えるとちょっと気持ち悪くなった。果たしてこれは慣れるのか。いや、慣れたくないな。

俺——転生前は加藤 一愛いちか、享年31歳、過労死——は、ファンタジー世界のゴブリンとして第二の人生をスタートさせたのだ。

ちなみに、残念ながら走馬灯は特になかった。

強いて言えば、最後に食べた晩餐がコンビニのおにぎりがツナマヨだったことだけはやけに覚えてる。

……もっといいもん食っとけばよかったな。

最後の飯くらい。

まぁ、いいや。

過ぎたことだしな。

よし。ここからだ。スキルを確認しよう。

なろう小説で見た知識が正しければ、転生者にはだいたい何かしらの特典があるはずだ。

スライムやゴブリン、暗殺者や王女に転生したやつだって、最初はどう見てもただの雑魚だったのに、気づいたら何でも吸収して最終的にはラスボスに喧嘩売ってたし。

あれがアリなら、この雑魚ゴブリンだって何かあるだろ。

「ゴブリンキング」とか「魔王の器」とかさ、そういうやつな。たぶん。

少しばかり期待をしながら、ステータス画面を開く。

【ステータス】

名前:ゴブリン

種族:ゴブリン

レベル:1

スキル:なし

称号:なし

「……なし?」

見間違いかと思って、再び見たんだ。

...なかった。

本当に、何もなかった。

目を疑ったよ。

「いやいや、隠しスキルとかあるだろ。ほら、ピンチになったら覚醒する系のやつ」

それっぽいところを一通り確認してみたけど、やっぱりなかった。

隠れてすらいなかった。

なんかもう、ちょっとだけ泣きそうになったよ。

でもゴブリンってどうやって泣くんだ。よく分からない。

泣けないのもそれはそれでしんどい。

……まあいい。

スキルがなくても、俺には前世の知識がある。

現代日本でそれなりに生きてきたんだ。役に立つことも、たぶんある。

農業とか、建築とか、詳しいわけじゃないけど、ゼロよりはマシだろ。

文明の基礎知識だってある。火の起こし方とか、"甘い"や"しょっぱい"っていう味も調味料を作って現せられるし。

たぶんなんとかなる。たぶん。

ゴブリンから始まる成り上がり。

別に悪くない。むしろちょっと熱い気もする。

……よし。

とりあえず、外に出よう。

俺は洞窟を出た。

森が広がっていた。

朝日が木々の間から差し込んでいて、思ってたよりちゃんと綺麗だった。

空気を吸う。

うまかった。なんか普通にうまい。

コンビニのおにぎりより、たぶんこっちのほうがいい。

まずは食料だ。

適当に何か食えるものを見つけて、それから拠点を——

ドスッ。

「あ」

早過ぎて何が起きたのか、一瞬わからなかった。

気づいた時には遅かった。

体が全く動かなかった。

視界の端に、人間がいた。

太陽に照らされ光輝く剣を持っていた。

ああ、これか。

痛いとか、なんでとか、そういうのを考える前に終わっていた。

洞窟を出て、森見て、少しばかり深呼吸して——それだけだった。

余りにも短すぎるだろ。

俺の人生。

走馬灯は、なかった。

二回目だから省略されたのかもしれないな。

いや、流れるほどに生きていなかったのか。

知らないけど。

それが最後だった。



────


【冒険者ギルド・依頼完了報告】

依頼内容:ゴブリン討伐(1体)

報酬:銅貨3枚

備考:特になし。洞窟から出てきたところを仕留めた。妙にキョロキョロしていたが、特に強くはなかった。

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