第4話
科学によって発展を遂げた――9番世界。
数多の世界の中でも、とりわけ多くの生命がひしめき合う世界。
その中心にあるのが、地球だ。
だが、繁栄の裏側で静かに進行している問題がある。
それが――他世界からの転生者流入による、人口と資源の圧迫。
地球は今、飽和状態だった
* * *
「ねぇ、海堂くんって明日暇?」
不意に声をかけてきたのは、セシリアさんだった。
透き通るような白い肌に、サラサラに輝くブロンドヘアー
驚くほど小さな顔に、整った目鼻が収まる美少女
――それがセシリアさんだ。
「明日ですか? 特には……どうかしました?」
「実はね……東京に行ってみたいの!」
「東京……?」
「うん!」
笑顔が眩しい。
そして、仕草がいちいちあざとい。
「でも、セシリアさんが行っても、そこまで楽しめる場所は……」
「私、”魔装姫”に乗ってばっかりだったから……あんまり遊んだことなくて」
セシリアさんは女性が8割を占める18番世界――
インフィットからやってきた騎士だ。
なんでも、女性しか適応できない”魔装姫”という兵器に乗って戦うらしく
セシリアさんはその中でも飛び抜けて優秀な騎士だったらしい。
「その……“びる”っていう建物も見てみたいし」
「まぁ、他世界の方から見たら、地球はかなり発展してますからね。良かったら観光ガイド用意しましょうか?」
「それはありがたいんだけど…………」
指先をもじもじさせる。
……視覚的暴力だ。
「でもね」
セシリアさんは、一瞬だけ視線を逸らした。
「……できれば、海堂くんに案内してほしくて」
「え? 僕ですか?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「海堂くん、日本出身でしょ?」
「そうですけど、正直東京は詳しくないですよ」
「……だめ、かな?」
その上目遣い、反則です。
嬉しい。
でもそれ以上に、目立つ。
物理的にも、色んな意味でも。
「……わかりました。明日、案内します」
「ほんと!? ありがとう!」
両手を取られて、ぶんぶん振られる。
……柔らかい。
いや、違う、そこじゃない。
「詳しいことは後で連絡するね!」
スキップしながら去っていく背中を見送る。
そんな東京観光楽しみなのかな。
(入管職員なら、いくらでも行けるだろうに……)
僕はPCに向き直る。
(まぁ、今日は早く帰って、東京の下調べでもするか)
この時の僕は、まだ知らなかった。
――この「東京観光」が、
入管の想定すら超える事態を引き起こすことを。




