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魔女狩りに遭ったら、大魔法使いになれと言われました  作者: めしあん
プロローグ

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1/5

1

 闇魔法を使える人が虐げられている国。

 ここはとある西の小さな島国。

 私はこの国に生まれて、孤独に生きてきた。

 理由は私にはどうしようもない。


 『闇魔法を使える』


 ただそれだけだ。


 小さい頃こそ良かったが、大きくなって魔法が使えるようになると、私の世界は一変した。


 「大好きよ」と幼い頃に言ってくれた両親は、11歳のころに私を捨てた。

 闇魔法が使えた、というだけで。

 最初は意味もわからず、泣きじゃくるしかできなかった。

 でも、教会に突き出されなかっただけ、両親は優しかったのだろう。


 教会は、闇魔法を使える人を「魔女狩り」と称して処刑してしまうらしい。


 この世界の闇魔法は単純。

 他者から生命力や魔力を吸収することができる。


 だからこの国では闇魔法は嫌われる。

 「他者から奪うばかり」、「略奪の魔法」なんて言われるのを聞いた。

 私は誰かから奪ったことなんてないのに、先人の誰かのせいだろうか。

 捨てられる直前、聞いた誰かの声に無性に腹が立った。


 でも生まれが田舎の方だったおかげか、追手はこなかった。


 捨てられてから人目を避けて、避けて、たどり着いた山奥にあった小屋に居ついた。

 山小屋には獣用の罠や山の植生を記した手帳などが置いてあり、それに助けられて生きてきた。

 昔に暮らしていた誰かのおかげだろうか。

 正直これがなかったら野垂れ死んでいたと思う。


 この国は海で囲まれた島国だから、私が教会に見つからずに外の国に出るのは無理だと思う。

 なので、せめてこの場所に隠れ住んで、穏やかに暮らしていこうと思っていた。


 闇魔法を持っていなかった頃、両親に教えてもらった知識も役に立っている。

 料理や洗濯の道具も一通りそろっていて、教わったことを思い出しながらやると、意外と一人でもできてしまった。

 それが無性に悲しくなることもあったけど。


 でも、そんな生活もここまでみたいだ。


 ここで生活し始めて3年、14歳になった。

 寂しいし、毎日食料の心配をしながら暮らすのは大変だ。

 闇魔法がなかったら普通に暮らせていたかな、なんて何度も思った。


 そろそろ果物が成る季節だな、と思い、山の中に生える木の元に向かったところ、思いがけず人に出会った。

 近くに人が住んでいる気配は今まで感じなかったの驚いた。


 彼はかなり見窄らしい格好をしていて、服も髪もかなり汚れていた。しかし、よくよく見ると上等なローブを纏っているようだった。

 しばらく観察していると、彼はふらふらと今にも倒れ込んでしまいそうな動きで歩き始めた。


 それを見て、思わず助けてしまった。少し、昔の自分に重ねてしまったのかもしれない。



 それがいけなかったのだろうか。


 次の日、寝起きに家の周りを大量の人に囲まれ、動揺しているうちにあれよあれよと拘束され、連行され、今はガタゴトと馬車の荷台で揺られている。


 私も最初は何が起きたのかわからなかったが、どうやら「魔女狩り」らしい。


 助けた彼が怪しいと思って、教会に密告して、こんなことになっているのだろうか。

 変に情なんてかけたらダメだなあ。でもあの場面で放っておくのはなかなかできない。


 今の私は魔法封じの拘束をされているようで、後ろ手に石でできた手錠がついているようだ。

 色々試してみたがびくともしないし、魔法も使えないようで何もできない。

 助けを求めようにも荷台は木の壁で覆われていて、真っ暗だ。外から私の姿は見えないようになっている。

 荷台には私以外何も乗っていないようだ。


 どうにかならないかと試行錯誤してみたが、手錠におもりが付いてるようで揺れる馬車の中を動くのはかなり時間がかかった。

 いくつか荷物が乗っているが、木箱ばかりのようで、後ろでで開けるられるような物は何もない。


 あれこれやっているうちに、疲れてきてしまったのかもしれない。

 「もう、良いかな」、とぽつりと心に浮かんできた。


 両親にも捨てられ、助けた人からも裏切られるなんて。

 本当に私はいない方が良いのかもしれない。

 諦めてしまっても誰も悲しまないし、もし来世があるなら普通の人になって暮らせるかもしれない。


『こんな力なんてなければ良かったのにな…』


 じんわりと目頭が熱くなった時、外から男の人の叫び声のようなものが聞こえた。


「〜〜!〜〜〜」


 遠すぎて何を言っているのかわからず、声のする壁の方までずりずりと移動しようとした時、急に馬車が止まった。


「おい!危ないじゃないか!なんでこんな道路の真ん中で突っ立てるんだ!!」


 別の声が聞こえた。馬車の御者だろうか?近い位置から聞こえる。

 怒鳴りつけるような声だった。


「〜〜〜〜〜?」

「はあ?そんなことできるとでも?寝言は寝て言うんだな!」


 再び御者の怒鳴り声が聞こえた。

 道を塞いでいる人が何かを言っているようだが、声が小さくて聞こえない。


「は!?お前、ちょっと待て、やめ、ごぽっ、がっ、おぼぼぼぼぼぼ!」

「おい!何を!あっっがっっっ!ゴポッ……ブクブク…」


 先ほどと同じ人物と、もう1人、御者台から声が聞こえる。どうやらもう一人乗っていたようだ。

 外の様子はまったくわからないが、どうやら二人しか御者席におらず、それ以外の声は聞こえなかった。


 1人目が急に水に溺れたかのような声を出したかと思えば、もう1人もごぽごぽとした音がした後静かになった。


 なにが起きているんだろうか。

 急に御者達は何者かに気絶させられてしまったようだ。

 逃げた方が良いだろうか。


 しかし、魔法封じの手錠がついているのでまずはこれを取らなければなにもできない。

 とっさに近くにあった木箱の裏ずりずりと隠れる。

 見つかってしまったら命乞いするしかないかもしれない。もし私のことを殺すつもりだったらどうしよう。


 ザッザッと足音が近づいてきて、馬車の後ろに回る。木箱の隙間から荷台のドアを警戒する。ガチャガチャと戸を前後したかと思うと、急に勢いよく扉が蹴り飛ばされた。

 扉は大きな音を立てて中に倒れ込んできた。


 外から光が差し込んでくる。


 あっけに取られていると、しばらくして舞っていた土煙が収まってきた。

 視界がはっきりしてきて、荷物の隙間から外に目をこらすと、蹴り飛ばした人物の姿が見えてきた。


 どうやら相手は一人しかいないらしい。

 背の高い男性のように見えるが、逆光ではっきりとはわからない。


 男は中は入り、荷台をぐるっと見ると、私がいる場所に目を止めた。


「良かった。怪我はないかい?」


 低く落ち着いた声だった。怒鳴るでもなく、命令するでもない。

 当たり前のように、私の方を向いて話しかけてきた。


 私は一瞬、言葉が出なかった。

 状況が呑み込めていないし、急に目が合ったのにも驚いてしまった。


 彼の服装から察するに、彼はきっと、教会の人間でも、兵士でもない。


 戸惑っていると、彼はゆっくり荷台の中に入ってきて、私の近くまでやってきた。


「大丈夫?動ける?」

「……だ、大丈夫です。たぶん」


 そう答えた途端、喉の奥がひくりと震えた。誰かと話すなんていつぶりだろう。

 心配されるのはもっと久しぶりかもしれない。


 彼は細身の青年で、少し長い、水のような透き通る髪を後ろで結わいていた。

 私より少し年上に見える。


 ふと、以前助けた男の印象に似ているのに気がついた。ローブも似たもののように見える。


 男は私の発言を聞くと、ほっとしたように息を吐き、横にある木箱に片手をかけた。


 その瞬間、空気がわずかに冷たく揺らぐ。

 湿った気配。


 見えないはずの水の流れが、彼の周囲だけを静かに満たしているのが、感覚でわかった。


「良かった。怪我とかはない?見たところ大丈夫そうだけど…、手錠……あー、教会のか…」


 男の視線が、私の背後にある手錠に向く。

 睨みつけるように手錠を見たあと、困ったようにこちらを向いた。


「君、闇魔法が使えるんだよね?」


 心臓がドクンと跳ねた。

 焦りで息が荒くなる。

 なんと答えるのが正解なのだろうか。


「あ、いや、ごめん、僕は外の国の人間だから、この国の人みたいに君に酷いことはしないよ。」


 焦ったように手を胸の前で振り、ふわりと微笑んでこちらを見つめた。

 私は一瞬だけ迷ってから、小さくうなずいた。否定しても、きっと意味はない。


「そっか、うん、良かった。思ったとおりだ。」


 うんうんと頷いて男はこちらの方へ歩みを進めた。


「じゃあ余計に、こんなところで終わらせるわけにはいかないな。」


 次の瞬間、足元に淡い光が走り、見えない水が刃のように形を成す。

 石の手錠がそれに触れると、まるで溶かすかのようになくなってしまった。

 私は息を呑んだ。


「大丈夫。僕は君を助けにきたんだ。」


 そう言って男は、こちらへ向き直った。彼はふう、と息を吐いて安堵したような様子を見せた。


「あー、ほんとに良かった。…ねえ君、名前は?」

「私…私は…エリナ。」


 久しく名乗っていなかったので、自分の名前なのに、なんだか違和感を感じる。でも彼は気に留めていない様子だった。


「そっか。僕の名前はノア。よろしくね。…よし。」


 彼は一瞬言葉を止めた。

 こちらの方に歩みを進めると、目の前で立ち止まった。

 どうしたんだろうと思い彼の顔を見ると、真っ直ぐにこちらを見つめていた。


「君、大魔法使いになってくれ。」


 そう言って、彼は私に手を差し伸べた。


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