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第四十三話 壁打ちの恋文(1)

『奏、もう向こうには着いたかな。アメリカって、どんな感じなんだろう。わたしは行ったことがないから分からないけど……いつか、行ってみたいな。そのときは、奏がわたしを案内してね。


それで……もらったメッセージのことなんだけど。奏ったら、もう、本当に。奏はいつも、わたしを泣かせてばっかりだね。出会ってくれてありがとうなんて、そんなの、わたしこそなんだから。わたしは奏と会えて、友達になれて、奏のことを好きになれて、恋人にまでしてもらえて……本当に、幸せだった。今も、奏と離れていても……ずっと幸せ。だから、わたしは悲しんだりしてないよ。


それに、奏は自分のことをよく弱いって言っているけれど。わたしは全然、そんな風に思ってない。でも、奏はストイックだから。わたしがこう言っても、自分で自分を許せないのかもしれないね。奏が強くなりたいと言うのなら、わたしは応援するしかないじゃない。


だけど……わたしは、どんな奏でも大好きだから。それだけは、忘れないでね。奏は今でも十分かっこいいし、わたしには勿体ない恋人だよ。わたしも負けないように、奏の恋人として、素敵な大人になれるように頑張るね。


奏は、何度も言ったけど……頑張り過ぎるところがあるから心配だよ。ご飯も、いっつも適当なんだから。向こうでは先生の親戚のおうちにお世話になるって言ってたから、それはちょっと安心だけど……きちんと三食食べなきゃダメだからね。夜更かしも、し過ぎないで。自分の身体を、一番に大切にして。……なんだかお母さんみたいなことを書いてるけど、本気なんだから。元気に過ごしてくれなきゃ、怒るからね?


だから、ちゃんと覚えていて。奏のことが大好きだよ。奏のことを応援してる。どんなに遠くにいても、毎日、ずっと思ってるからね。』



『奏。既読が付いてるってことは、無事で、メッセージを見てくれたって……信じてもいいんだよね。


今日、奏のお兄さんから連絡をもらったよ。突然来たから、びっくりしちゃった。奏、お兄さんにわたしの連絡先を伝えていたんだね。お兄さん、奏から連絡が来てないんじゃないかって……心配して、わたしに連絡してくれて。奏、お兄さんにも連絡してないの? ……もしかして最初から、連絡をしないつもりだった? だから、お兄さんにわたしの連絡先を教えていたの?


それに、若葉ちゃん、日菜子ちゃん、冬子ちゃん、ほのかちゃんにも……旅立つ前に、わたしのことをよろしくって、メッセージを送っていたんだよね。わたしが寂しがらないように。四人とも、奏から返事が来てないって言ってた。


奏は何か意志を持って、皆に返事を控えているんだろうね。それは……強くなりたいから? 奏が、もう無理をしていそうで……すごく心配。だけど……奏がそう決めたなら、わたしは受け入れるから。奏が元気でさえいてくれたら、それでいいんだから。わたしは大丈夫だよ。だから、奏は自分の信じる道を貫いて。たくさん気にかけてくれて、ありがとうね。


奏が残してくれたもの、わたしの周りにたくさんあるから。わたしはひとりじゃないって、分かってるから。だから、返事が来なくても、大丈夫。でも……ときどきメッセージを送るくらい、いいかな。ダメだったら、ブロックしてね。奏、大好き。無理、し過ぎないでね。』



『奏、元気にしている? 今日は、大学の入学式があったよ。春休みに、奏と一緒に大学を見に行った日のことを思い出しちゃった。チャペルであんなことして……誰にも言えないよ。あれは、ふたりだけの秘密だからね。……でも、あの時に交わした覚悟は、本物だから。ずっと、忘れないでいてね。


同級生の子たちはみんな大人っぽくて、ちょっと緊張しちゃった。高校とは雰囲気が全然違う。入学式の後にさっそく、学部の親睦会があったよ。たまたま同じテーブルになった子たちが、みんなオシャレで……初対面なのにいきなり恋バナをしていて、びっくりした! 「彼氏いるの?」って聞かれたから、とびきり素敵な恋人がいるって言っちゃった。……ウソじゃないから、大丈夫だよね?


奏は、わたしの世界で一番かっこよくて、かわいくて、素敵すぎる恋人だもん。……惚気すぎ? でも、本当のことだから仕方ないよ。


わたしはずっと奏にぞっこんで、それはきっと、四年後も変わらない。奏以上に素敵な人なんて、どこを探してもいないから。だから、今は会えなくても大丈夫。奏のことが、大好きだよ。大好きすぎて、どうしようってくらいなんだから。


とりあえず、明日からはわたしも、わたしの大学生活を頑張るね。奏に負けないように、わたしも一生懸命頑張るよ。』



『奏、アメリカでの生活には、少しずつ慣れてきた? 奏が旅立って、もう一ヶ月になるんだね。長かったような、あっという間だったような……。四年間なんて、本当は一瞬で過ぎてくれたらいいのに。そうしたら、きっとこんなに寂しくならないのにね。


大学生になってからも、若葉ちゃんや日菜子ちゃん、冬子ちゃんとは変わらず仲良くしてもらってるよ。みんな別々の大学だけど、時間が合う日に集まって、遊びに行ったりしているの。


行動範囲も広がって、最近は都内で遊ぶことが多いんだけど……東京って、本当にすごいね! 地元にはないおしゃれなお店や、美味しい食べ物もいっぱいで、見るもの全部が新鮮でどきどきしちゃう。人も多くて、ちょっと疲れちゃうこともあるけれど……それでも、都会の魅力ってすごいなって思う。


いつか、奏が帰ってきたら、一緒に色んなところへ出かけたいな。行きたいところリスト、ちゃんと作っておくね。奏をエスコートできるように、いろいろ勉強しておくから。……なんて、きっと奏の方がずっと、都会は慣れてるんだろうけど。


相変わらず、奏のことが大好きだよ。風邪、ひかないように気をつけてね。また、メッセージを送ります。』

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