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金策



 私が働いている工場で新しい後輩が入ってきました。




 「ノブハラ ベイジ」という、茶髪で明朗な良い青年でした。






 彼に仕事を教えながらの一日・・・・・あっという間の一日・・・・。






 本日の工場での仕事が終了しました。






にしま「あっ何?ベイジお前寮に住んでるの??」






ノブハラ「はい・・まぁ寮っていうかなんというか・・・。とりあえず仲介人のツテで比較的近くのアパートを借りて貰ってます。」






にしま「そうなんだ、そりゃ良い仲介人だなぁー。俺の仲介人は友達なんだけどさ、この工業地帯から住んでいる町中の実家までチャリ通勤だぞ(笑)今朝チャリがパンクしてて直す金が無くて徒歩になっちゃったけどさ。・・・まぁそんなこと言っても仕方ない、待遇は人それぞれだから。またなベイジ。明日も仕事だよね??」






ノブハラ「はい!にしまさん明日も宜しくお願いします!」




 手を振って笑顔で別れる2人・・・・・。






 なんて気持ちの良い若者だ・・・・・・。この歳になって新しい年下の友人が出来たような感覚でした。






 ノブハラは本当に礼儀正しい男でした。今日一日教えて貰った事のお礼、他社員への挨拶や気配りが完璧でした。前に居た会社は零細企業だと言っていましたが、そんな事はありません。彼の姿を見る限り、志のある会社だと感じました。








・・・・・・・・・




・・・・・・・・・






・・・・・・・・・






にしま「あっ・・・もしもし、みなみ?今いいか?」






 帰り道で早速自身の仲介人である、みなみに電話をしました。携帯電話は持っていませんでしたが、みなみから渡されていました。






みなみ「おう、なんだお前かよ。・・・もう音を上げたとは言わせないぞ(笑)工場勤務が嫌になったんか?(笑)」




にしま「まだたった二週間じゃねぇか・・・そうじゃなくて・・・・あのな・・・」






 ノブハラと飲みに行くためのお金を借りようと、自分を工場に入れた張本人であるみなみに電話しました。家に金を入れていない為、家族には頼ることは出来ないし、自分にはもう・・・この男しか頼る事はできませんでした。






みなみ「あっ!!!そうだった!!!俺もお前に言わないといけないことがあったんだよ!!」






にしま「は??・・・何??」






みなみ「ひがしぐちと3人で駅前のデパートに買い物行ったの覚えてるか??高校3年の時。」






にしま「ん?・・・・あぁ・・・・あぁ!行った行った!ひがしぐちがゲーセンで小遣い全投入したやつだろ??あれは笑ったよな(笑)」




みなみ「そうそう!それはいいけど、あの時に俺が欲しいTシャツがあって、金が足りなかったんだよ。にしまにその時金借りたの覚えてる?」






 みなみから思わぬ言葉が飛び出しました。これはラッキーだ・・・・やはり人助けというものはすすんでやるものなのです。






にしま「おぉ・・・みなみ・・・・・・そうそう!そんな事があったな!俺が貸しつけたんだっけな!・・・で、それはどうする気??」






みなみ「ネットからお前の給与口座に振り込んどくわ。あー・・・・なんか俺の中で何かがずっと引っ掛かっててな。ようやく今日思い出したんだわ。あーよかった!」






にしま「おぉそれはよかった。」(俺も良かった・・・・。出来ればこいつから金は借りたくない!そんな事をすれば、一生言われ続ける。)






みなみ「なんか・・・・すまんかったな長い間借りてて。ちゃんと色付けて振り込んどくから!」






にしま「おうおう。別にいいって。困った時はお互い様。」






みなみ「これから一緒に仕事やるんだ。お前は他の友人達と違って特に確執は無いけど、そういうとこはしっかりしときたいから。ほんじゃ。」






ピッ!!






 よかったぁ・・・・・・とりあえず・・・・お金が入ってくるぞ・・・・。






 ただ問題は、俺が高校3年の時みなみにいくら貸したかだ。






 この高校3年の時の投資が活きるかどうか、それが今日試されるのです。






 物欲やこだわりが無かった為、他の仲間達よりお金の優先順位は低かったです。はっきり言って当時は、どうでも良かったのです。貸すなり奢るなり、あげるなり。






 友人のひがしぐちが欲しい物の為にいくらでも小遣いをゲーセンに投入している姿を見るのは楽しかったですが、何故そんなに夢中になれるのか、何故そんな事に対して夢中になれるのか、TVゲームや他の趣味に対してもそうですが、自分には全く意味が分かりませんでした。




 しかし、ふと思い出しました。




 結局小遣いが全部無くなった後、ひがしぐちは半泣きでした。






 何もできなくなっていました。






 今の自分のように、何もできなくなっていました。




 後輩と飯にもお酒を飲みにもいけません。






 今履いているサンダルもボロボロです。






 とぼとぼと歩いて帰宅し、転勤で居なくなった兄が置いていってくれたノートパソコンを開いて、インターネットに入りました。






 銀行口座を作った時に勧められた、インターネットバンキングに登録し、みなみが振り込んでくれた金額を確認する必要性がありました。






にしま「えー--っと・・・・こうやるのか・・・・・。」






・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・








4500円・・・・・・・






にしま「・・・・・色付けて1万円くらいあるのかと・・・・・・。」






 ここで、こんな所でこの高校時代に行ったみなみへの投資を引き出すんじゃなかった・・・・・・。






 自分の4畳半の部屋に戻り、机の上にあった貯金箱を手刀で叩き割りました。






 バキッ!!


 ・・・・・






 ・・・・・




 ・・・・・




 228円・・・・・






 そのお金を見てから慌てて、自分の部屋の押し入れを開けました。






 ゲームボーイ・・・謎のキャラクターの指人形・・・・カード数枚・・・・。






 若い頃に物欲がなかったせいで、何も持っていませんでした・・・・・・。






 一瞬、TVに繋がっている休日暇つぶし用のファミコンに目をやりました。






 これは・・・・これだけは・・・・・・。






 幼い頃に兄と一緒に買った品物・・・・・・。






 兄に許可を得れば、当然のごとく良いよと言われるでしょうが・・・・これは駄目だ・・・・。なんとなく駄目だ・・・・。






 唯一、自分一人で買ったソフト1本を握りしめました・・・・・。「柔道物語」・・・・・






 「にしま」






 ソフトの裏に自分の名前が書いてある・・・・・。なんでこんな事しちゃったんだろう・・・・・・・。真面目が出過ぎたというか、名前を書いておかないと誰かに盗られるような気がして書いたんだろう・・・。






 それらの物を慌ててその辺にあったビニール袋に入れて、家から飛び出しました。






 家から少し離れた知り合いの買取ショップへ走りました。






・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・






にしま「おっちゃん!!頼むよ!!」






買取屋の親父「にしまくん、これ名前書いちゃってるじゃない・・・・」




にしま「さ・・・サイン入りだよ!!」






買取屋の親父「ゲームボーイも画面が割れてるなぁ・・・・・。」






 昔、ゲームボーイを友人のひがしぐちに貸して、返ってきたら画面が割れていました。






にしま「あの野っ郎っぉ・・・・・・・」




 一気に怒りがこみ上げてきます・・・・。






買取屋の親父「この指人形はともかく・・・・カードもなぁ・・・・ノーマルだしなぁ・・・・。」




にしま「結構いいでしょ??逆にノーマルなのが可愛かったりしない??」






買取屋の親父「・・・全部で500円だよ。にしまくんだから500円。他の人なら買取しないよ。」






にしま「はぁ?!うそでしょ!?」






 2000円位いくかと思ったのに・・・500円・・・・・。






買取屋の親父「てか、そんなに困ってるの??・・・・それならうちでバイトしたらどう??夜間帯が居ないんだよ。飲みに行けなくて困るよ、っはっはっはっは♪」






にしま「はっはっはっは!」(俺も飲みに行けなくて困ってる!!)






 工場勤務のあと、これから深夜に配送センターのバイトが深夜まであります。その間ならOKかなぁ・・・・・。






 バイトの話は保留にして貰って、結局査定金額の500円を受け取り、手ぶらで帰路につきました・・・・・。






にしま「金を作るのって大変だなっ!!」




 その辺に転がっている空き缶を蹴飛ばします。






・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・






 消費者金融の看板が目に留まります。夜中なのに、まだ電気が灯っています。






にしま「ここに手を出すしかないか・・・・。」






 ピリリリリリリ・・・・・




 電話が鳴りました・・・・。






みなみ「おう、俺だけど。お前の口座に振り込んだぞ。」






にしま「4500円!!」






みなみ「・・・・もう少しの辛抱で一緒に働くことが出来るな。」






にしま「そうだな。これから、夜間の配送センターのバイトにに向かう所だ。」






みなみ「・・・・一つ言っておくけどな。俺達の地元は今・・・・・ソウマという人間が仕切ってる。」






にしま「ソウマ?・・・聞いたこと無いな・・・・それがどうした??きたのの親父が仕切ってんじゃなかったっけ??」






みなみ「いいか、仕事以外の時間は別に何をしたって構わない。・・・・でも、絶対にソウマに関わるなよ。」






にしま「あぁ、遊ぶ金も無いし、趣味も無いし、関わる事も無いさ。」






みなみ「そう思うだろ?俺達ってのはさ、そういう連中と何故かよく出会う人種なんだよ。ソウマに関わると厄介な事になる。くれぐれも問題を起こさないでくれよ。状況によってはせっかくの内定も取り消しになるかもしれない。」






にしま「わかったよ。」






みなみ「ソウマは・・言わなくても見た目で分かる。不精髭、ツイストパーマで色白、一見普通の地元民に見えるけどな。・・・・・あいつは普通の人間じゃない。俺らと同じ地元の出身でもない。・・・・もし揉めたら最悪俺の名前を出せ。なんとかするから。」






にしま「あぁあぁ、分かったよ。大丈夫だってば。」






 ピッ!!




にしま「ソウマ?・・・・聞いたこと無いぞ・・・・今日はもうやめにしてバイトに行くかぁ・・・・。」






・・・・・・・・・






男の声「・・・私の店の前で・・・・どうかされたんですか??・・・もしかして何か・・・・お困りですか??・・・・」






 声の方を振り返りました・・・・・。






・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・






にしま「え?・・・・」






・・・・・・・・




・・・・・・・・




・・・・・・・・








 こいつ・・・・・・・・










 ・・・・ソウマじゃねぇかぁ!!!!






 いきなり出てきました。




 みなみから忠告を受けた瞬間、その男は姿を現しました。






 夜中でしたが眼光が鋭いのが分かり、少し猫背で髪に強めのパーマがかかっていました。みなみが言っていた特徴の通りです。






 ソウマはタバコを吸っています・・・・。つけていた眼鏡をはずしました・・・・。






 後ろに2人程、ガラの悪そうな黒いスーツ姿の連中を引き連れていました。






にしま(な・・・なんだこいつらは・・・・・地元で見たこと無い奴らだ・・・・。今まで出会った人間の中でもヤバそうな匂いがプンプンするぞ・・・・・。)

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