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都市


 ブォーーーーン!!!






 突き抜けるようなサウンドが山間部をこだましていました。






 私はノベタンが運転するCB400のタンデムシートに乗っています。





 ノベタンはアトリエにあった、父が昔着ていただろう深緑のツナギを着てバイクを運転しています。






 父がリュックに入れてくれていたお化粧をバッチリして、ヘルメットもしっかり被って、気分爽快でした。






ハク「きもちぃー!!!」




ノブハラ「ハク!!ごめんな!!」




ハク「ええ?!何が?!」




ノブハラ「俺がもっとしっかりしとかないといけなかったんだけど!!」






ハク「・・・何?!聞こえない!!!」






ノブハラ「ああ!もういいや!!なんでもない!!」






ハク「はーい!!ノベタン♪」






 爽快なエンジン音を聞きながら私達は峠を走っていました。






 風がとても気持ち良かったです。何よりも大好きなノベタンの背中に抱きついている事が嬉しい。






・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・






 山のふもとにあった寂れたセルフスタンドで給油し、街から街へとバイクは進んでいきます。






 約4時間後・・・・






 私達が乗るバイクはようやくビルのある大きな町に出ました・・・・。






 駅を見渡すことが出来る静かな場所で缶コーヒーを買い、2人でその大きな駅を眺めていました。






ハク「大きな町だね!!私は来たこと無い!!本音言うとお金があれば洋服買いに行きたい!」






ノブハラ「ハクなんか・・・・今日のお前凄く綺麗だわ・・・・。」






ハク「ほんと??ありがとノベタン♪」






 私は嬉しすぎてノブハラに抱きつき、ほっぺにキスをしました。






 本当はこのままデートに行きたいです・・・。




 追われている身の立場なので、当然そんな事は出来ませんが・・・。




ノブハラ「・・・ここは昔、俺の家族が住んでいた町なんだよ。」






ハク「そうなんだ!いいとこ住んでたんだね!・・・そういえばノベタンってさ、お兄さん居たんだよね??」






ノブハラ「居たよ。兄貴は・・・行方不明って・・・前にみんなに話したよね。」






ハク「うん、聞いた!」






ノブハラ「実は、・・・まだ生きてんだわ・・・。居場所も分かってる。」






ハク「え?!・・・えっと・・・・それはお兄さんが住んでる場所が分かっていていつでも連絡が取れるって事??」






ノブハラ「ほら・・・・あの人見える??・・」






 ノブハラは駅の端っこを指さします。






 私は直ぐにその方向を見ました・・・・。






 オールバックで茶色いスーツの男が歩いていました。気温的には暑いのに涼しそうな顔で歩いています。傍から見てあまりいい感じがする人間ではありませんでしたが、もしかしてあの人がノブハラのお兄さんなのでしょうか・・・。






ハク「え?・・もしかしてあれがお兄さんなの?・・・背が高くて結構かっこいいじゃん!」






 少し沈黙がありました・・・・・。








ノブハラ「あれが・・・・『みなみ』だ。」






ハク「・・・み、みなみ??・・・・だれなの??その人」






ノブハラ「俺の兄貴は、島に来ていたハイバラの部下であるイツキやテンに騙されて多額の借金を負った。それで一時は奴らに命を狙われていたんだ。」






ハク「そうだったんだ・・・詳しくはよく知らなかったけど・・・結局はそういうことだったんだね!」






ノブハラ「そこで兄貴をかくまってくれたのが、あのみなみだ。どんな人間でも雇ってもらえる働き口を探してくれたんだ」






 ノベタンのお兄さんの恩人・・・・・ということなのでしょうか?・・・・。しかしどうしても私はあの人が人間を救う人間とは思えませんでした。






ハク「ふぅーん・・・。でもなんか、大丈夫なの??あの人。」






ノブハラ「大丈夫・・・ではない。決して大丈夫ではない。・・・みなみは住所不定者になった人間を集めて自分のコネがある働き先に入れて、稼いでる。」






ハク「やっぱり!そんな事だろうと思ったわ!そういう悪い事をして稼ぐ人って本当にいるんだね!」






ノブハラ「実際それで助かった人間が山ほど居るのは事実。」






 ノブハラは何かを知っているようです。あのみなみという人間の底知れない闇を知っているようでした。私には未だにその闇の全体が見えてはいないのですが、その時のノブハラの表情を見る限り、恐ろしい人間だという事はなんとなく分かりました。






ノブハラ「ハク、みなみに接触しろ。」






ハク「うん・・・・わかったよ!」








ノブハラ「あいつに近づけば、間違いなくハイバラに辿り着けるはずだ。ハイバラどころじゃない、おやっさんの過去にも辿り着くことができるかもしれない。」






ハク「そうだね!・・・やってみるよ!」






 プリペイド携帯電話をお互いに所持しました。






ノブハラ「準備が出来たら、電話する。この携帯電話が鳴る時・・・・その時が・・・・・。」






ハク「うん!!わかったよ!!」






ノブハラ「俺は、おやっさんの手紙に書いてあったハクのお兄さんについて調べて来る。あまり無茶は出来ないが、俺が良いネタさえ持っていけば接触は出来そうな気がするんだ。」






ハク「お兄ちゃんね・・・。正直お父ちゃんにそう言われても実感は全く無いのよ!ひとりっ子だとずっと思って過ごしてたからね!!」






ノブハラ「ハク・・・・お互い元気な姿でまた会おうな!」






 私はノブハラと接ぐをしました。名残惜しくなるので次に会う時までキスを我慢しました。






 笑顔で手を振って別れました。




・・・・


・・・・・




・・・・・




ノブハラ(・・・ハク・・・・・・)






 ハク、出来れば待っていて欲しい・・・また再び一緒になる事が出来る日まで、ハクには恋人を作らずに待っていて欲しい。




 ・・・・でもそんな事、言えるはずがありませんでした。






 最後の最後に俺は、ハクに対して気を遣ったのでした。




・・・・・・




・・・・・・




・・・・・・




 昨日一晩、2人でよく話し合いました。




 決めた事です。








 ノブハラと一緒に逃げなさい。




 復讐や仕返しなどはせず・・・・




 生きろ、ハク。






 父の手紙を読んで、私も父の気持ちがよく分かりました。






 それは家族だからです。父親と娘という関係性がある家族だからです。






 しかし、私はどうしても逃げる事は出来ませんでした・・・・。どうしても父の言う事全てを素直に聞くことは出来ませんでした・・・。






 お父ちゃん、ペンちゃん、ダマテ、アリタ・・・・・・。






 父は銃殺。


 辺見は吊し上げられ


 アリタは爆死。


 そして兄貴分のダマテは串刺しで私の胸の中で死にました。








 これだけ苦楽を共にしてきた仲間達が死んで、そのままトンズラする事など、私の体の中に流れる血が・・・・父の血がそうする事を許す事が出来なかったのです・・・・・。






 家族なら分かるかもしれない・・・・私にももし子どもが居たら、必ずお父ちゃんと同じことを言うんだろう・・・。






 定めなのです。これはもうこの家庭に生まれ育った私達の定めなのです。






 始まろうとしている。目標が揺るがない私達の心が大きく動き始めようとしている。

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