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手紙


最愛の娘 ハクへ


 ようやく少し落ち着いて手紙を読んでいる頃だと思う。

 急に様々な出来事が起きてしまって混乱しているだろう。申し訳ない。お父ちゃんが気づくのが遅かった。

 平和な島に居て決して平和ボケしていたわけではないが、この島の利権に、お父ちゃんが昔居た職場の関係者が絡んでいた事がわかった。

 それがハイバラという人間だ。俺が若い頃、あの化け物を叩き上げて育てた。

 俺には当時沢山の部下が居たが群を抜いてハイバラは賢く、強い。その部下も頭が出ている者はよく覚えている。今やハイバラの恐怖政治によって相当鍛えられているはずだ。

 今のハイバラは辺見のおじちゃんやダマテよりもきっとうわてだろう。悔しいが今のお前達の力だけではあいつを討つことは非常に難しい事だろう。その証拠に、たった数日で島を完全に牛耳ってしまっている。


 ノブハラと一緒に逃げなさい。


 ここまで仕事をして会社を大きくしても、所詮相手にとっては捕食される立場側であったことは、本当に申し訳ないと思っている。お父ちゃんは情けない。

 お前は、俺や会社の他の人間とは違う「女性」であるということを忘れないで欲しい。女性は女性であることが最大の武器だ。男性とは違って女性は強運で頼りになる。やり方次第では沢山の友人や仲間を救う事だって出来る。だからこそ自分の幸せを願って良いんだ。男性とは違って女性にはその権利がある。

 今回の件の復讐や仕返しなどせず、今そこに一緒にいるであろうノブハラと新しい人生、きっとそれがいいだろう。お前たちは仲が良く、明るくて優しい家庭作ることが出来るからだ。孫が見れなかった事やハクの花嫁姿を見れなかった事は本当に残念だが、お父ちゃんには孫を見る資格も幸せになる資格も無い人種だ。これまでの人生のことを考えると、お父ちゃんには幸せになる資格など微塵も無い。それほど娘のお前に言えないくらいのことをやってきた。悪い事はいつまでたっても悪い。良い事はいつまでも助けられた人達の心に残っている。

 悪いことを随分してきたわけだが、たった1つこんな悪人の俺でも分かった事がある。それは娘を大事にしない父親というのはこの世に1人も存在しないという事だ。

 最初はここから始まったと、それを胸を張って堂々と言えること。お前がそう言っても恥ずかしくない職場に俺はしたかったんだ。


 いつかお前たちの疑いが晴れた時、胸を張ってそう言うことが出来るような未来を信じてる。もし、お前の兄貴分のダマテが生きていればダマテに後始末は任せて、お前やノブハラが復讐にさえ向かわなければ、もうすぐそこに明るい未来が待っているってことだ。


 あと1つだけどうしてもお前に言っておかないといけないことがある。

 それは家族の話だ。お前にはお父ちゃんとお前が幼い頃に病死したお母ちゃん、それともう一人いる。


 お前には年の離れた腹違いのお兄ちゃんがいる。辺見から聞いた情報が正しければ、ここより更に北の町で暮らしていると聞いた。これも当然ながら言ってなかったがお前が小さい頃にたった1度だけ会っている。無理にこれから会う必要は無いが、本当に悩んで困った時は探してみるといい。腹は違えど血が繋がった兄妹なんだから、必ず力を貸してくれるはずだ。この手紙を見せて協力するようにお兄ちゃんに言ってくれてもいい。


 いいか、色々言って分かっていないようだからもう一度言うぞ。お父ちゃんや辺見のおじちゃんの事など忘れ、ダマテとは縁を切って、アリタやハネダとはもぉ一緒に仕事をするな。ダマテが生きていれば、アリタとハネダの面倒を見るようにお前の方からお願いしなさい。きっと分かってくれる。だからもう自分のことだけを考えるんだぞハク。ノブハラがもし命を落としていれば、他の仲間を盾にしてでも、例え一人でも最後まで逃げなさい。絶対大丈夫。

 そう考えると今は絶望かもしれないが、その反対の希望というものがもし、まだあるとしたらそれは恐らく、絶望を潜り抜けて来た少数の人間だけが辿り着くことが出来る。そこに辿り着くまでは絶対に諦めるな、俺の娘であるというなら諦めるな。何故ならお前にはそれが出来る力量があるからだ。小さくてもいい、その希望の光を掴むまで絶対に諦めるな。諦めるということは人間であることを辞めるということだ。人間である以上たとえどういう運命であったとしても受け入れて進み続けなければならない。挑戦をやめるという事は人間を辞めるという事に等しい。


 生きろ、ハク。本当に言いたい事はそれだけ。生きて最後この世界がどうなったか、いつかお迎えが来た時に俺に教えてくれ。楽しみにしてるからな。


 お前は大人だ、様々な事を自分で見定めて考え、これから生きてみるといい。


 もう守ってやる事は出来ないが、今までの事を考えてみれば分かる。たしかにお前はずっと昔からお父ちゃんのそばに居たんだ。もうお父ちゃんがそばに居なくとも、お父ちゃんが言っている事など全てわかっているはずだ。


 お父ちゃんより








 いつになく、・・・優しい父の手紙でした。




 不器用かと思っていた父がこんなに長く私宛に手紙を書いてくれるなんて初めての事でした。










 ノブハラは震えています・・・・。目を瞑って必死に何かを後悔しています・・・。






 私は何故、自分の命を絶とうとしたのだろう


 私はずっと父の一番そばにいたのに、誰よりもそばに居たのに・・・。

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