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決断


〇月×日


私とノベタンと結ばれました。


あと・・・結局その日も・・・まぁ言うまでもありませんが、ハネダは帰ってくることはありませんでした。


私は信じていましたが、ノベタンからは「お前は甘い」と一蹴されてしまいました。もう本当にハネダは死んでしまったのかもしれません・・・・。


本当に残念です。あれだけ大勢居た仲間ももう、私とノベタンの2人だけ。本当に人生ってわからない・・・・。ほんの数日前まではみんなで笑顔で暮らしていたのに。






 私は鉛筆を置くと、すぐ横に集めている食糧を確認しました。






 もうほんの僅かしかありません。缶詰と乾パンが少々。ペットボトルの水が残り1本ともう少しくらい・・・・。




 摂取も最小限。カロリーを使わないように努力しました。






 私のリュックにお父ちゃんが入れてくれていたお金が少しだけありましたが、これはノベタンとの話し合いの結果、ほとぼりが冷めてここを出た後に使う事にしようということになりました。それまでの間は今まで通り質素に暮らそうという事で話が纏まりました。






 ハネダがこの父のアトリエを出て、居場所がバレるのではないかとビクビクして過ごしていましたが、それからも普段と変わりありませんでした。どうやらハネダは口を割っていませんでした。ハネダが死んだという事を仮定すると、今外が騒ぎになっている状況でここを出るのは危険だと私達は判断しました。






 時間も過ぎていますし、食料が完全に尽きてからギリギリの状態でここを出た方が良いと思うようになりました。






 私は始めこそヤりたくてしょうがなかったですが、カロリー消費でお腹が減るので性行為をノベタンに求めるのはやめる事にしました。






 何も無いまま数日が過ぎました・・・・・。時折先日の警備員のような人間が来たり。散歩している近所の人を見かけましたが、特にそれ以外変わった様子はありませんでした。






 当然ながら、追手が来ることもありませんでした。






 その間に奥の小屋にあった父のバイクのエンジンがかかる事をノベタンが確認していました。食料が尽きたら2人であのCB400に乗って逃げる事になりそうです。






ハク「なんかさ・・・・本当に外が騒ぎになってんのかな?・・・・ここに居ると全然わかんない!近所の人は普通に散歩とかしてるしさ!」






ノブハラ「・・・あれだけの事があって騒ぎにならない筈がねぇだろ。・・・お前さ、見た?最後の俺達の島の姿を。」






ハク「え?・・・・最後って・・・あのボートに乗っていた時?」






ノブハラ「ああ、・・見てないなさては・・・。」






ハク「・・・それどころじゃなくて見てなかった!」






 少し考えていたノブハラが重い口を開けました・・・・。








ノブハラ「・・・島が燃えてた」






ハク「・・・え?!マジ?!」






ノブハラ「一つの大きな赤い火柱になってた・・・・。島の各所で爆発が起こっててさ・・・・。なんなんだありゃ・・・・。言い表しにくいんだけど、・・・龍のようだった。」






ハク「りゅう?・・・ってドラゴンの事?あの中国の龍の事??」






ノブハラ「うん、角こそ生えてないけどそんな感じだ。・・・まぁ実際見てないお前やハネダからしたら信じて貰えないとは思うけどさ・・・・。俺は見たんだよ最後の島の姿を。」






 ノブハラは少しだけ怯えながらあの時の話してくれました。






ハク「なんかもう・・・・・全てが信じられないよ。信じられないような事が起こってるんだから。」






 私は頭を抱えました。それをノブハラが優しく抱き寄せてくれました。






 この数日で起こった事を2人で話す度に若干卑屈になるのです。その後は憂鬱で何も考えられなくなるのです。パワーを削がれるような話をしてはいけないのはお互いに重々わかってはいましたが、会話の中でどうしても島の事を避ける事が出来ませんでした。実際に起きた事を話したいのです。どうしても相手に話したいのです。






 私は今回の首謀者であるハイバラの顔を見ていません。父が昔教えていたあの悪魔の顔を一度見てみたいものですが、悪魔の顔を見たら私は全てを投げ出して襲い掛かってしまいそうです。ブレーキが効かなくなってしまいそうです。






〇月×日


今日は大事にしていた食料が全て無くなりました。後は飲み物がほんの少しだけになってしまいました。


後で数を数えて分かった事なのですが、食いしん坊のハネダが缶詰などの食料を少し持って出ていた事が分かりました。在庫をノベタンが確認していたそうです。


たった2人で過ごすのなら、食料はまだあと数日もつと思っていました。しかし、それは難しかったです。・・・・理由は大人だからです。私達は大人だからです。子どもの頃と比べて信じられないくらい体が成長したのです。






ハク「はー・・・・」






 私は鉛筆を置き、再び外を見ました。




 それまで、一張羅の服をたまにシャワールームで洗濯して干していましたが、そんな気力もなくなりました。






 あと、生理がきました。ノベタンとの間に赤ちゃんは出来ませんでした。






ノブハラ「・・・あぁハク、そろそろ見張り変わるわ。」






ハク「・・・うん、ありがとう。」






 私はソファーに腰掛けました。少量のペットボトルの水が机の上に置いてありました。






・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・






〇月×日


今日はいよいよ水がなくなりました。


シャワーから出る水を飲もうと考えましたが、これは雨水か井戸水であり、どうやらそのままで飲む事は出来ないようです。


ノベタンがライターで木を燃やし、煮沸させ、それを飲みました。


あぁ・・・季節的に暑くなってきたから冷たいお水が飲みたいなぁ。






 噂は75日という言葉があります。せめてそこまで持ちこたえたかったのですが、このままでは難しそうです。






ハク「あれ?・・・あれれ??」






 カップに水を入れようとシャワーの蛇口を捻りましたが、水が出なくなりました。






ノブハラ「マジか・・・・・。もしかしてもう随分雨が降ってないから、枯れたのかもしれないな・・・。」








〇月×日


水が完全に無くなって何日かが経ちました。


毎日暑いです・・・・。






 私達はもう交代で見張りをする事もせず、寝転んでいました。外に出る気力も無かったです。






 せっかく恋心を寄せる大好きな相手との生活、楽しいはずの生活。なのですが、食べ物も飲み物もなく、電気も無くガスも無く、蒸し暑い毎日で室内に虫も湧いて出てきました。そんな劣悪な環境の中での生活でした。








 こんな形で2人の生活が終わりになるなんて・・・・・・。










 私とノベタンは、この小屋の梁に小屋にあった頑丈そうなロープを括りつけました。






 椅子の上に立ち、ロープの輪っかを自分の首にかけました。






 直ぐ横を見るとノベタンが居ます。






 ノベタンが居てくれるなら全然怖くありません。






 手を繋いだまま、お互いの顔を見て少しだけ笑いました。






 そして、私達は乗っていた椅子を蹴りました。






 ガタンっ!!!






 椅子が倒れました。








 うっ・・・・・・






 ・・耳が聞こえない・・・・・・








 苦・・・しい・・・・






 横でノベタンの足がバタバタしているのが分かりました。






 ギュッと・・・・手を握る力が強くなりました・・・。






 これで終わり・・・・・終わりなんだね・・・・・。この私の物語はここでおしまいなんだね。最後に大好きなノベタンと一緒に・・・居る事が出来て良かった・・・・








 良い・・・人生・・・だったなぁ・・・・。






・・・・






・・・・






・・・・・






・・・・・






・・・・・・








バキッ・・・・






・・・・・






ミシミシミシ・・・・






バキバキバキ!!!!!・・・






バキッ!!!・・・・・・・・・・・






ドンッ!!!!












 私達は物凄い音と共に勢いよく地面に叩きつけられました。








ハク「う・・・・ゲホッ!!ゲホッ!!・・・・」






ノブハラ「・・・おえっ!!・・・・」








 梁が腐っていたようで、私達二人の体重を支えきれずに折れてしまったようでした。






ハク「・・・・うう・・・・いったー・・・」






ノブハラ「・・・ハク・・・大丈夫か??」






ハク「・・うん・・・ノベタンは?」






ノブハラ「こっちは大丈夫・・・。・・・あーあ!!・・・簡単には死ねないもんだな!!まだやらないといけないことでもあるのかな。」






 その場でダイノジになって寝転がるノブハラ・・・・・。






私はそんなノブハラを見て、横で体育座りで座っていました・・・。






 その目線の先にリュックがありました。私のリュックです。一緒に仕事をしていたアリタに買って貰った頑丈で少し大きめのリュックです。






ハク「・・・・・・・・・・」






 リュックの口が開いていました。






 もうこの小屋に来てから何度も、リュックの中身は確認しました。しかし、どうしても違和感があったのです。






 え・・・・・・・






 こんな所に・・・ジッパーなんかあったっけ・・・・・。






 上部のポケットには何かあった時に直ぐに持ち出せるようにフェンスの南京錠鍵を入れていましたが、その中の部分に小さなジッパーがあることを私は知りませんでした。






 私は立ち上がり、そのリュックのジッパーを開きました。






 ジップロックの中に折り畳まれた数枚の白い紙が入っていました。






ハク「えっ?・・・なにこれ・・・・・」






 なんとそこには・・・・・私の父の名前が書いてありました。






ハク「・・・の・・・・ノベタン!!!見て!!これ見て!!!」






ノブハラ「え?・・・どうした??」






ハク「これ・・・お父ちゃんの字だ・・・・間違いないわこれ!






ノブハラ「え?・・・おやっさんの?!」






 私達は全てが嫌になり、一緒に死ぬことを選びました。






 そう・・・・私達は1度死んだのです・・・・。






 愛する父のアトリエで一度死んだのです。

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