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火龍


ノブハラ「・・・・・・・」






ハネダ「・・・・・・・・」






ハク「・・・・・・・・・」






 私達は暫くの間無言でした。雨の中フードを被り、ハネダの横で体育すわりで下を向いていました。






ノブハラ(・・・兄貴・・・・・みんな死んじまったな・・・・・。)






 ノブハラは舵をとりながら、うつむいていました。






 私のリュックに入っていた船の鍵というのは、船自体の鍵ではなく、船の車体を括りつける為の特殊な南京錠の鍵でした。






 左舷標識と右舷標識の下にロープが有り、劣化防止のビニールに包まれた折り畳みボートを隠していました。




・・・・・・・・・




・・・・・・・・・




・・・・・・・・・






 ・・・・既に私達は海の上でした。悲しむ暇もなく、どうしようもなく海の上でした。






 漂うように私達のボートは本土へ向かいます。進んでいるのかはわからず、方向もよく分からぬまま3人で出向しました。






 私達だけ生き残ってよかったのでしょうか・・・・。全員島で死んでしまった方がよかったのでしょうか・・・・。






 希望を持って進むべきなのですが、どうしてもそれらを押し消すような苦痛と恐怖が私達を襲っていました。






・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・






イツキ「おい・・・起きろ・・・・。アカマツ!!!」






 海岸沿いで倒れているアカマツを起こしているイツキ。






アカマツ「・・・・・うう・・・・くそ・・・あのアマ(女)・・・・。」






 アカマツは生きていました。ハクとハネダの攻撃を食らってもなんとか海岸に辿り着き、生き延びました。






イツキ「おい!!・・・あいつらどこ行った!!あと何人だ!!」






アカマツ「娘と・・・・小僧2人です・・・。ダマテは・・・やりました・・・・・。」






イツキ「逃がしたんだな?!」






アカマツ「ここに居ない・・・という事はあいつらもう海の上かもしれません・・・・・。隠しボートを用意したと思われます・・・・。」






イツキ「・・・おらボケっ!!!お前が戦って倒せないなんてこの島に来た意味がねぇじゃねぇか!!」






 イツキは憔悴しているアカマツを蹴り飛ばし、携帯電話で連絡を取りました。






イツキ「おいコウツ!!!湾沿いを固めろ!!!3人逃げた!!・・・・・いや辺見やダマテじゃねぇ!!逃げてんのはガキ3人だ!!」






コウツ「え?!・・・そうなんですか!!分かりました!!必ず仕留めます!!」






イツキ「あと誰か俺の船を出して迎えに来い!!!!俺が仕留めてやる!!!」






コウツ「わっ・・・分かりました!!直ぐに用意させます!!」






イツキ「サキヅカとテンがやられた!!絶対にぶっ潰してやる!!!」






コウツ「そんな・・・・・・・サキヅカまで・・・・・。」






 相手も必死でした。こんな少数の集団相手に幹部候補の人間が2人もやられています。






 責任問題です。幹部のイツキにとっては責任問題です。






・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・




 雨は強くなっています。予報通りの大雨。






 あとどのくらいで本土に着くのだろうか・・・。真っ暗の中を舟は進んでいきます。






 私は降っている雨を見上げていました。






 この雨が全て流してくれるだろうか・・・・・。






 島を振り返ります・・・・。






 ・・・島が・・・燃えています・・・・。






 もう・・・二度と戻る事はないのだろうな・・・・。戻る事は出来ないのだろうな・・・・。






 朝になったらきっと世間的には私達のせいになっていて、追われる身になるのだろうな・・・・・。






 父が教えていた元部下たちが、私達の住んでいた島も人間も滅茶苦茶にしました。全ての思い出である島が終わりを迎えている。そんな気がしました。




・・・・・・・・・






・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・








 アリタ・・・・あんたが誕生日プレゼントで買ってくれたこのリュック・・・大事に使わせて貰ってるよ・・・・。一緒に脱出出来なかった事が、悲しい・・・。ごめんね、私の会社に入っちゃったからこんな事になったのよね・・・。仕事仲間としてでなく、普通に友達として出会う事が出来たら・・・と今になって思う・・・・。






 ダマテ・・・・最後少しだけ笑ってくれたね・・・・。本当に仕事でもいつも・・・・頼もしかった・・・。ダマテの勇気に励まされた時が多かった。そんな性格じゃないのに、不器用に私に気を遣ってくれていたのもなんだか嬉しかった。もし私に兄と呼べる人間が居たなら、間違いなくあなたよ・・・。最後まで私を、私達を守ってくれてありがとう。






 ペンちゃん・・・・お店で会ったのが最後になっちゃったけど、きっとペンちゃんはいつかこうなる事を予想していたんだよね。ボートも私達の為に、用意してくれていたんだね。お父ちゃんの相棒としてこれまで会社を支えてくれてありがとう。みんなを統率してくれてありがとう・・・・。子どもの頃から面倒を見てくれてありがとう・・・。もうなんか・・・ペンちゃんにはお礼の言葉しかか言う事ができないよ・・・・。








 お父ちゃん・・・・・






 お父ちゃん・・・・・・・・・・。






 ・・・私は空を見上げながら、大泣きしました。雨に打たれながら泣きました。この雨に紛れるように私は泣きました。






 さっきまで平気だったのに、ここにきて肉親である父のことを思うと、涙が止まらなかったのです。






ハク「・・・へっ・・・・へっく・・・・・お父ちゃん・・・・・・。」






ノブハラ「・・・・・・・・・・・」






 ノブハラはそっとハクを抱き寄せました。








 俺だって・・・・・悲しい・・・でもここは・・・ハクの方が悲しいに決まってる・・・・。








 俺のような人間が涙を流すわけにはいかないんだ・・・・・。






・・・・・・・・・・・・・・・・






ドーン・・・・






ドーン・・・・






・・・遠くで大きな爆発音がしました・・・・。








 ノブハラは再度、島の方を見ました。






ノブハラ「・・・・・・・・・・」






 遠くに見える私達の島が空までそびえ立つ火柱に変わっていました。






 火柱は空へ向かっていました。






 天に昇る龍が島から離れる私達に覆いかぶさってきました。






 炎を纏った龍が、小さなボートに乗った私達を追いかけてきます。








 傍観するだけでした。下を向いて泣いている私とハネダを尻目に、ノブハラはただただ無表情で島を眺めていました。

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