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兄妹


 見る限り行き止まりの防波堤を全力で走っていました。






 ハク、ノブハラ、ダマテ、ハネダの4人はそこにボートがあると信じて走り続けました。






 ボート用の白い大型のシートが見えたのです。もう信じるしかありません。






ダマテ「俺が迎え撃つ!!!任せろ!!」






 ダマテは三人を先に行かせて振り返り、日本刀を構えました。






アカマツ「舐められたもんだぜ・・・・・。」






 アカマツは懐に忍ばせていたボウガンを構えました。






 ダマテはみんなを守るように大きく手を広げます。






ダマテ「絶対に通さん!!!!」






・・・スパーーーーン!!!!!






・・・・ザン!!!






ダマテ「!!!!」








 ダマテの左胸にボウガンの矢が刺さりました。






ハク「・・・ダマテ!!!」






ノブハラ「ハク!!戻っちゃ駄目だ!!!」






 私はノブハラに引っ張られるように防波堤の先に進みます。






アカマツ「・・・ダマテ、てめぇコラ・・・。テンとサキヅカをよくもやってくれたな・・・・。」






 アカマツはダマテの胸ぐらを掴み持ち上げました。






ペッ!!!






 ダマテは血交じりの唾をアカマツに吐きかけました。






ダマテ「・・・・へっ・・・・・。」






アカマツ「なんだてめぇこの野郎!!」






・・・ガンッ!!!




 そのまま地面に叩きつけられます。怪力で体がデカいアカマツはダマテをぼろきれのように振り回し、地面に叩きつけ続けました。




ダマテ「・・・ここは・・・絶対に通さねぇぞ!!!」








・・・・・・・・・・






ハネダ「・・・・・ない!!!・・・ボートなんかない!!!」






 先頭を走るハネダから絶望的な声が聞こえました・・・・。






ハク「そ・・・・そんな・・・・。うそでしょ・・・・。どこにあるのよボートなんか・・・・。」






 私は力なく・・・その場に膝をつきました。






ノブハラ「嘘だろ・・・・」






 ノブハラもハネダが居る防波堤の行き止まりの位置に到着しました。






 海に漂う・・・ただの白いシートでした・・・・。ゴミでした・・・・・。






ハネダ「終わった・・・せっかくここまで来たのに・・・・・。」








 ハネダは涙を流しながらその場で倒れ込みました。






ノブハラ「・・・・・ハク・・・・・。」






・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・






ノブハラ「・・・おやっさん・・・・ペンさん・・・・・・。」








・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・




 入社して間もない頃、ノブハラはこの防波堤にハクの父と一緒に釣りに来ていました。父の船でさっきまで沖に出て魚を釣っていたのですがなかなか釣れず、少し気分転換で島の反対側の防波堤で丘釣りをする事にしました。




ノブハラ「ここ釣れるんですか??・・・なかなか釣れないですね。」






父「ノブハラ。」






ノブハラ「はい。」






父「ちょっと釣り具取って来い。」






ノブハラ「釣り具ですか?・・・そしたら・・・一旦事務所戻りますね、」




 片づけを始めました。






父「・・・・ん?お前知らんのか?そこ。ペンから聞いてないか??」






ノブハラ「えっ・・・はい?」






 ハクの父は防波堤の先を指さします。






・・・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・・・






 リュックをおろす・・・・。






ハク「・・・・ノベタン・・・・何するの?・・・・」






 ・・・・バシャーーン!!!






雨が降る漆黒の海の中に飛び込みました。






ハク「ノベタン!!・・・」






ハネダ「・・・急にどうしたんだノベタン!!」






ノブハラ(おやっさん・・・・・・・。)






 ノブハラはどんどん沖に泳いでいきます。






ハク「ノベタン・・・左舷標識に向かってない?・・・」






 緑色の左舷標識に向かって泳いでいきます。






 防波堤の先には左舷標識と右舷標識というものがあります。これは可航水域であるという目印です。左舷は緑、右舷は赤であらわされています。






 泳ぎが得意なノブハラはあっという間に左舷標識まで辿り着きました。






ハク「何をしてるの・・・・」






ドサッ・・・・・・






ハクの後ろから音が聞こえました。






ハネダ「ハク!!後ろ!!!」






アカマツがダマテを放り投げました。




ハク「ダマテ!!!」






ハネダ「ハク!!走れ!!俺達も飛び込むぞ!!」






 慌てた私は防波堤で大きく転んでしました・・・・。






ハク「・・・いったぁ・・・・」






アカマツ「・・・・手間かけさせやがて・・・くそぉ・・・」




・・・・・・・・・




・・・・・・・・・




・・・・・・・・・












 ダマテ・・・・。何故体を張ったの・・・・・。私達より年上だから?・・・・兄貴分だから?・・・・。






 私は絶対に全員でこの島から脱出したかったのに・・・・・。






 お父ちゃんも、ペンちゃんも、アリタも居なくなっちゃった・・・・・。








 何故みんなを守る事が出来なかったのだろう・・・・。






 私に力があれば、もっとも私達の会社だけ呼ばれなかった常会に対して敏感になっていればこの状況を打開できていました。






 平和ボケです。私は一番初めにそれに気づいていましたが完全に軽く見ていました。結局の所それを上司である父やペンちゃんに報告する事はなく、結局は2人が異変に気付いた頃にはもう遅かったのです。






 後悔しても後悔してももう、あの日には戻れないのです。






 私は・・・・・・この罪を・・・・






 どうやって償っていこうか・・・




 どうやって償っていこうか!!!






 倒れたすぐ横に転がっていた鉄パイプを掴み、急激に立ち上がりました。






アカマツ「・・・なっ!!!」






 身体を左に回転させながらジャンプし思い切り、ハイバラの部下のアカマツに対して振り下ろしました。






バキィィィィィィ!!!!






アカマツ「うわああぁあああ!!!!」






 鉄パイプが見事に顎と鎖骨の間にクリーンヒットしました。






アカマツ「・・・・・・かはっ・・・・・・・・。」






・・・ドンッ!!!!




 そのまま後ろから猛然と走って来たハネダが体当たりを食らわせました。






バシャーーン!!!






 そのままバランスを崩し、暗い海に落ちるアカマツ。






ハネダ「やったぞハク!!」






ハク「・・・・・・ダマテ!!!」






 私は直ぐに倒れているダマテに向かって走りました。






ハク「ダマテ!!しっかりして!!」






 ダマテを包み込むように抱きました。






ハネダ「兄貴!!目ぇ覚ましてください!!」






 ダマテはゆっくりと目を開けました。






ダマテ「あいつを倒すなんて、大したやつだよお前らは・・・・・。ハク・・・お前、やっぱおやっさんにそっくりだな・・・。本当の親子なんだな・・・・。」






ハク「今ね、ノベタンが海に飛び込んでボートを探してるんだと思う!少し待ってて!!ハネダ!!ちょっとノベタンの様子見て来てよ!!人手が居るかもしれない!!」






ハネダ「わかった!!!」






 ハネダは勢いよく走りだしました。










 ダマテは少し笑いました・・・・。






ダマテ「安心した・・・・俺は安心したんだ・・・・。もう俺が守ってやらなくても大丈夫だな・・・・。」






ハク「ダマテ!変な事言わないでよ!!」






ダマテ「いいかハク・・・お前はこれからノブハラ達と一緒に・・・奴らに仕返しを考えているだろう・・・・。それは・・・その役はノブハラとハネダに任せるんだ・・・・。」






ハク「もう喋らない方がいいよダマテ!!」






ダマテ「お前は女だ・・・。本当の・・・本当の意味でこれから女性らしい生活を送るんだ・・・・。それがおやっさんの願いだ・・・。俺は反対したが、今ではおやっさんの気持ちが分かる・・・。悔しい・・・これだけ仲間がやられてしまって・・・・悔しい思いもあるだろうが、一度歯を食いしばって、これからの自分の人生を前向きに生きて行って欲しい・・・・。復讐の為に生きちゃだめだ・・・・。」






ハク「ダマテ・・・わかったから!!わかったから!!」






 私は大粒の涙を流していました。血を吐きながら話し続けるダマテをどうしても止めたかったのです。






ダマテ「・・・・俺が憧れてついていったおやっさんの娘さん、子どもの頃から可愛がったお前の胸の中で死んでいく・・・・・・・俺は幸せ者だな。・・・これからの新しい時代を・・・悩みも復讐もない・・・新しいハクの時代を想像して・・・くれ・・・・・・おやっさんも俺もそれを・・・願っているから・・・・」








 ダマテは目を開けたまま・・・静かに息を引き取りました・・・・。






ハク「ダマテー--!!!!!ああああ!!!!!・・・・」






 私は血の涙を流しました。月光が私達2人を照らしていました。




 私の兄は亡くなりました。慕っていた兄は亡くなりました。血は繋がっていませんが、私の兄はこの島の片隅で亡くなったのでした。

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