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因果


ハネダ「松明の灯りが消えてる・・・。」




 息を切らしながら獣道を歩く最後尾のハネダが、時折下の道を確認していました。あの大岩がかなりのダメージをもたらしたようです。






ノブハラ「・・・なぁハク、おやっさんのボートの件だけど、お前は昔から知ってたのか??」






ハク「・・・いや、わかんない。ダマテがよく知ってるみたいだけど、私は全然知らなかった!私は、お父ちゃんの秘密を何一つ知っていないって事が今回の事で分かったよ!」






 本当にそんなものがあるのでしょうか・・・。そういった不安が私達の中でよぎりました・・・・。






ダマテ「ここから下りだ。」






 歩き始めて数時間、ようやく山の峯に到着しました。






 私達は仲が良かった島民達に襲撃され、殺されかけました。産まれてから今まで平和でしたが、たった一日で島民は変わり果てました。






 まるで悪夢を見ているようです。






 ノベタンが私達の居場所に気付き助けてくれなかったら、きっと私もダマテも死んでいました。






 ああ・・・・お風呂に入りたい・・・・。






 本当に・・・お風呂に入りたい・・・。






 先程つかまって犯されかけた時、・・・私の体中に島民達の体液や血液がついているのです。足の指先までベトベトでした・・・。






 なんともいえない匂いが、鼻をつきます・・・・。






 こんな状況で友人のノブハラやハネダと会えたとしても、テンションなど上がる筈もありません。






・・・さっきノベタンと再会して抱き合った時、私くさくなかったかなぁ・・・。






・・・・しかし・・・・なにはともあれ、助かったのです。ようやくこの山を越える事が出来そうです。








ハネダ「採掘場だ・・・・。」






 肩で息をしているハネダが指さす方に、今回の事件の発端となった鉱石の採掘場がありました。






 この石やら金属やらが島で見つかった事で、私達の島に謎の連中が出入りするようになりました。






 父やその仲間達と静かに暮らしていたのに・・・・。ずっとこの平和な生活が続くと思っていたのに・・・。壊されたのです・・・・。






 私は特産物で島が潤ってくれるのはとても嬉しいのですが、確実に本土との利権争いに負けてしまっているような、そんな状況であることは分かっていました。






 本土の大きな力が働いて、この小さな島の名産品を取り上げようとしているのです。






 そもそもその鉱石を島で加工できる技術が無かった事、そして最初に見つけたのが旅行兼仕事で来られた本土の学者さんだった事がそもそもの原因ですが、それにしてもたったそれだけで噂が噂を呼び、ここの所一気に島に人が押し寄せて来ました。見た事もないような人々です。私達が所有している港の駐車場にまで多数の不法駐車があったくらいですから、車を捨ててもその分の利益は出るという考えもあったのでしょうか。こちら側は大迷惑でした。






 あれから何台レッカー移動したことでしょうか・・・・。明らかに「どうぞ廃棄にして下さい」と言わんばかりのオンボロ車が駐車されていた事もありました。






 人間というのはお金が絡むと変わってしまいます。人間ではなくなってしまうのです。これも人間の進化過程なのでしょうか。






 私は採掘場付近に転がっていた、幼い頃からよく見ていた青っぽい石を拾いました。






 これが・・・・今回の火種・・・・。この島の最後の灯・・・・。






 島の漁業も、他の民芸品も後継者不足で生産も売り上げも大きく落ち込んでいました。






 それを打開するための特産品でした・・・・。これを守るべくやっていた父の会社の活動は、本土の人間達からしたら一番目立っていたのかもしれません。






 利権を獲るべくして乗り込んだ時に、たまたま父が居る事がわかったのでしょうか・・・・。






 父の昔居た会社の人間が乗り込んでいるとしたら、成功して会社まで経営していていい気はしないでしょうが、島を守ろうとしていた私達の会社の行いが悪いと言われるのは違うと思います。






 それとも随分前から私達がここに住んでいるのは分かっていた事なのでしょうか・・・・。






ノブハラ「こんなものがあるからいけないんだ・・・・。おかげで俺達は完全に目の敵になってしまったようだ・・・。」






ダマテ「集会で何があったかは知らないが、間違いなくハイバラの野郎が島民達に何かを吹き込んでやがる。あれだけ温厚だった島民が人が変わったように・・・・。生贄なのか俺達は・・・・。」






ハネダ「俺達は・・・何も悪い事してない・・・。だってあの採掘場を取り上げようとしてきたのは本土の奴らじゃないか・・・・。」






 少し冷静になった所で、今までの私達の行いを振り返りました。絶対に間違ってない・・・・この島に恩返しする意味でも・・・・絶対に会社をあげてメジャーな特産物にしようと・・・そう考えていました・・・。






 ふと、ダマテは岩場を指さしました。






ダマテ「あそこだ、あそこにあるはずだ、おやっさんのボートが。」






ハク「・・・・・あの岩場?・・・私・・・あそこまで行ったことあるけどなぁ・・・。お父ちゃんのプライベートボートなんてあったかしら・・・・。」






ダマテ「ハク、お前のリュック上部のポケット開けてみろ。」






 私はポケットを開けました。中には鍵がキーリングされていました。






ハク「これ・・・・。船の鍵ね!・・・・。」






ダマテ「そうだ。この鍵で逃げるんだ。」






ハク「というか、こんな大事な物私が持っていていいの?!またさっきみたいになったら・・・。」






ダマテ「ハクが持ってないと駄目だ、意味が無い。最終的にはお前がそれを使ってボートに乗って逃げるんだ。」






 戸惑いました・・・・。こんな大事な物を私が持っていました・・・・。






ハク「これは・・・島を脱出する最後の手段なんでしょ??・・・・・」






 この中で一番非力な私がこれを所持するのがどうしても納得いきません。もし私がやられた場合、全員脱出が出来なくなってしまいます。・・・責任重大です。






ノブハラ「ハク、それはお前の物だ。ペンさんにハクを守るように言われてる。1人でも行ってくれ、俺達やダマテの兄さんの事は・・・・その時はもう忘れてくれ・・・。」






ダマテ「その通り、頼むぞ。」






 ダマテに強く肩を叩かれました。






 私一人で逃げる事なんてやはり出来ません・・・。みんなここで死ぬのであれば私もいっそここで死んでしまいたい・・・。その考えは変える事が出来ず、本土に渡った後の私自身の人生なんて・・・とてもじゃないですが、考える事は出来ません。・・・・どうしても笑顔でこれから過ごしていく自信がありませんでした・・・。






 希望を捨てたわけではありませんが、私は周りにみんなが居て、それで楽しくてこれまで生きてこれたのです。






 1人になって私には一体何が出来るのでしょうか・・・・。






 とっくにハク以外の3人の気持ちは切り替わっていました。自分が助かろうなど思っていないのです・・・。






 もうすぐ、目指していた目標の船着き場に辿り着きます。なんとか無事この4人であの場所まで辿り着きたい・・・・。






 ハイバラ達がいつ襲ってくるか分からない状況の中、私達は再びを歩を進めました・・・。

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