激動
こちらは作者のエイルが運営しているブログで書いていたブログ版作品です。(ブログ版は小説家になろう専用で公開しています。)
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ナナイ「・・・・・・」
ナナイは自分の部屋で新聞を読んでいました。
「激闘!!ふぇにっくす VS こばーず!!」
自分達の記事が地方のスポーツ紙に載っていました。
7回裏、守備時のアクシデントで深津が脳震盪で離脱しました。
こばがキャッチャー、ナナイがピッチャーの即席バッテリーを組むことになりました。
7回をなんとか守り切り、延長戦に入ります。
8回表 相手ピッチャーが交代し、代打攻勢でランナーをなんとか出すものの得点出来ず。
8回裏 再びこばがマウンドに立ちます。ナナイをキャッチャーとし、他も守備を変えながらの総力戦。こばのストレートが冴えわたり3者凡退で抑え込みます。
9回表 4番こばが先頭ヒットで出塁。しかしバント失敗が2回続き、後が続かず攻撃は終了。
9回裏 またも守備を入れ替え、こばは続投。3塁までランナーを進めるものの味方の守備に助けられ、なんとか抑える。
10回表 更に代打攻勢。こばーずはベンチの選手全てを使い切ります。総力戦です。・・・しかし点が入らず。
10回裏 ピッチャー再びナナイに変わり、キャッチャーはこば。
最後は押し出しのファーボールでした・・・・・。
相手は勝ちにこだわりました。満塁で一番背の低いバッターを代打で送ってきたのです・・・・。
ストライクが入りませんでした・・・。
ナナイ「くっそぉぉ!!!・・・・」
悔しくて地面を叩くナナイ・・・・。
こば「・・・ここまでか・・くそっ・・・くそぉ・・・・・ナナイ・・・・・。」
こばとバーフィーはナナイを起こします。
パチパチパチパチ・・・・・
鳴りやまない拍手・・・・
両親や、応援に来てくれたチームメイトの両親までも泣いていました・・・。
相手チームが喜んでいる声が聞こえます・・・・・。
様々な感情が、この球場を包んでいました・・・・。
4-3
こばーず!!県大会二回戦敗退!!
チーム全員で一生懸命戦いました。しかし、その思いは届きませんでした・・・・・。
深津が離脱しても、こばーずナインの心は一切折れませんでした。
全員全力で戦いましたが、ここでやられてしまいました・・・・・。
敗退したという事は、残念ながら全国大会への切符を掴むことが出来ませんでした。新聞で見た、同期のにしまやみなみ達との試合は叶いませんでした。
こばやナナイの最後の大会は終わってしまいましたが、勝ち残っているチームの大会は続いています。
群雄割拠です。
みなみ「・・・くっそ・・・」
唾を吐いて、自分を整えます。今日は得意ポジションのショートではなく、ピッチャーでの出場です。
雨の中、みなみがたった一人で投げ続けています。
キーン!!!
打者「よしっ!」
勢いよくボールは外野に抜けていきます。
みなみ「はー・・・・はー・・・・・・・やるな、くっそ・・・・」
肩で息をするみなみ・・・。
にしま「・・・・・・・・」
苦戦しています。あれだけ強いチームでさえも苦戦しています。
自分たちが敗退した後も、まだまだ各地では熱戦が行われているのでした。
病室で話す深津とこば・・・・。
深津「こばさん・・・来てくれたんですね・・・・。」
こば「当たり前だろ。ん・・・どうやらナナイとバーフィーが先に来てるな・・・・。」
深津の病室にはナナイとバーフィーが持ってきたであろう、果物とまんじゅうが置いてありました。
深津「こばさん、俺は・・・どうせ、どうせどこかで負けるだろうと思いながら、試合をしていたんだと思います・・・。最後のこばーずでの試合なのに・・・・すいません・・・俺のせいで・・・・・。」
どうせどこかで負ける。遅かれ早かれ・・・・。もし綺麗事抜きで言えば、深津の言う通りなのかもしれません。総力戦でチームメイト全員極限状態でした・・・これでキレが増す人間も居れば、プレーが狂う人間も居ます。
倒してもまた更に強いチームが現れ、次から次へと強者が我々に襲い掛かってきます。どこまで戦っても、また明日には次の難関が、明後日も明々後日も・・・。自分自身にはっきりとした自信が無くては、次に進むことを許されないのです。そういう集団だけが勝ち上がるのです。
深津は5年生唯一スタメンで、しかもキャッチャーで5番打者を任されていました。俺やナナイと比べると、試合経験豊富とは言えません。4年生からベンチ入りをしていたからと言っても圧倒的に少ないのです。物凄いプレッシャーの中で戦っていました。
こば「深津・・・」
深津「俺のそういう心の弱さが、どこかで出てしまったんだと思います。・・・こんなチームメイト、チームに要らないですよねはっきり言って。」
こば「それは違うな。お前は絶対に必要なんだ、お前やみんなが居たから初めて地区制覇ができたんだよ。・・・・そういえば監督が珍しく褒めてたぞお前の事、よかったな(笑)」
試合結果を深津に伝えた時、深津は大声で病室で泣き、かなり責任を感じていたと深津の母親からこの病室に入る前に聞きました。
誰よりもあの試合に勝ちたかったのは俺やナナイではなく、移籍を決断したこいつ(深津)だったのかもしれません。俺は何故、最後の俺達の為に何としてでも勝とうと奮起してくれた純粋な気持ちに、あの時気付いてやれなかったのだろう。
チームを辞めると言った時に、深津にとってもうこのチームでの試合は消化試合で、勝ち上がる事を完全に諦めていると思い込んでいました。
こば「・・・お前にはホントに助けられた。ありがとな、深津。」
深津「・・・こばさん・・・・・」
深津は再び、むせび泣きました。
あれから、2ヵ月の月日が流れました・・・・。
誰も居ないグラウンドで、たった一人練習している男が居ました。
この物語の主人公のこばです。また、こばです
県選抜に内野手で選出されました。今回は本職のピッチャーでの出場は無さそうです。
同じく内野手で選出されたナナイと共に明日、県外の試合に出発する事になっていました。
カツカツカツ・・・(階段を下りる音)
バーフィー「あれ?・・・こば!!お前練習してたのかよ?!」
チームメイトのバーフィーが駆け寄ってきます。
こば「おおお、バーフィーか!!」
バーフィー「なんか久しぶりだな!こばとナナイ以外は引退したから、会わなくなっちまったもんな(笑)」
学校が違う為、久々にバーフィーに会いました。
こば「まぁ、中学に行ったらまた嫌と言うほど一緒に野球出来るしな!バーフィーも練習しとけよちゃんと!!レギュラー取りに行こうぜ!!」
こばは素振りを始めます・・・。
ぶんっ!
ぶんっ!
ぶんっ!
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バーフィー「こば、俺は・・・・中学では野球をやらないんだ・・・。」
こば「え・・・・」
カランカラン!!・・・
バーフィーの思わぬ一言に、バットを落としてしまいました。
こば「て、てっきり俺は・・・またバーフィーと一緒に出来るもんだと思ってたけど・・・。」
バーフィー「俺はこばやナナイみたいに、あんまり上手くならなかったから・・・。別のスポーツをやる事にしたんだ。」
こば「いや、そんなことないだろ・・・。上手いのにバーフィー・・・。」
野球を始めてからずっと一緒にやってきました。なのに何故?・・・・一緒に出来ないの?・・・
バーフィー「勝てよ、こば。」
こば「え?・・・・何?・・・」
バーフィー「勝ってよこば!!いつものお前の野球で!!」
こば「バーフィー・・・・」
何度もバーフィーはそう言います。
バーフィー「勝てよ!!こば!!!」
こば「おお・・・おお!!勝つ!!!じゃ・・・じゃあ応援来いよ!?約束だからな!!」
バーフィーとガッツリ握手を交わしました。ごり押しでした。「はい」としか答えられません。
あの最後の試合中、小手先でその場を切り抜けようとした俺を正しい道に戻してくれたのはバーフィーでした。いつもグラウンドでは俺やナナイ、深津を元気づけてくれました。
ありがとう、バーフィー・・・。
新しい世代が押し寄せてきます。次から次へと荒波のように押し寄せてきます。群雄割拠の時代が終わる事はありません。一つ時代が終われば、また新しい時代が古い時代を塗り替えるようにして押し寄せてきます。
打ちひしがれている暇は無いのです。
困惑している表情で居ると、取り残されてしまいます。
胸を張って、次に進むのです。
心や体は限界で、ボロボロで、投げ出したいです。心底泣きたいです。しかし弱い所を周りに見せること無く、仲間と共に進みます。これだけ毎日きつい思いをしても、残酷な事があったとしても人間は前に進みます。何故こんな思いをしてまで、やり続けるのでしょうか。
あの、新聞で見たにしまやみなみでさえも・・・・
それは同じです。条件は全て同じなのです。
みなみ「にしま、いよいよ明日は選抜の試合だな。なんか作戦考えてる?」
少し考えた後に、口を開く・・・。
にしま「俺はいつも通り。・・・いや、そうだ。俺達はいつも通りなんだよ。・・・ここまで来たからこそ。これから先は自分が今までやってきた事を信じる力、強い信念めいたものが無いと、どう足掻いても無駄。もし今ここ2人で新たな作戦を立ててそれが通用する世界ならそれは甘い、逆に許せない。俺達が求めている「世界」ではないと思う。相手は上手だ。付け焼刃はお見通し。・・・だからみなみ、いつも通りだ。いつも通りの俺。」
みなみ「わかってるよ。それは本当に俺に対して言ってるのか?」
みなみは相棒がそう言う事は分かっていました。どうしても大一番を前に確認をしたかったのです。
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バスに乗り込む前の最終確認をする、こばとナナイ。
こば「内野用のグローブOK(一応アピール用にピッチャー用も入れた)・・・・・よーし、忘れ物無し!!」
ナナイ「行こう、こば!!」
こば「行こう!!」
いつになく、スッキリとした顔でバスに乗り込みます。
俺達は選ばれた。選ばれたんだ。
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もうすぐそこに、新しい時代は迫っています。これより先は実力の世界。こんな経験やひと時がいつか実を結ぶと信じ、何度壁にぶつかっても、それでも前を向き、また次に向かって駒を進めていくのでした。
それがこばです。それがこばという男なのです。
小学生編 完
小学生編はこれで終了となります。人気が出れば続きを書こうと思っています。
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