第六話
ふざけた感じしかない目の前の男。
しかし、その手に持つ剣の鋭さは人を寄せ付けない冷徹さを持っている。
触れれば命が絶たれる。
そう印象付けるには充分な鋭さ。
受けては弾き、弾いては返す。起動したレーザーが空間を彩り弧を描く。
いつもとは全く違う光景にパニックになった駅員、通勤通学の為に駅に立ち寄った人々の悲鳴が遠く聞こえる。
斬り上げる剣を避け、一瞬の無防備を突く。
もう片方の剣がその軌道を遮ると、振り上げた剣が振り下ろされる。
にやり、と笑う顔。
それを視界に捕らえた瞬間、振り下ろされる腕を絡める。
そのまま背後に回り、足をかけて押し倒す。
「やるね」
「はぁ、はぁ」
息も切れている僕とは違い、余裕がある相手。
「ここの警察なんかとは全然違う」
小さく笑う声には諦めも自嘲もない。
この状況でまだ何か企んでいるのか。
「君は騎士団かそれとも」
一人喋っている男。
「誰か、警察に連絡を」
クレアが階段へと歩き出した瞬間に、
カチ。
そう音がした。
再びの爆音と砂塵。視界が黒く塗り潰され足元からひっくり返される。
転倒し状況が理解できずにいる思考。
「クレア!」
そう叫ぶ。
「まずは自分の身を守る事に集中するといいよ」
声には殺気。
振り下ろされる剣を本能で受ける。もう一撃を捌いて距離を取る。
視界が広がる。
階段の方を見ると、クレアが頭を抱えて座りこんでいる。
弱弱しく立ち上がり、座りこむ。
ゆっくりと腕を上げ、ピースサイン。
・・・・・・大丈夫そうだ。
「あの子の事は」
レイリッシュ卿がクレアの元に駆け寄って行く。
「微妙に形勢が変わってきたかな?」
微笑む顔の無邪気さに行動の邪悪さ。
「攻守逆転。しっかり守るといいよ」
攻守もなにも・・・・・・。
こっちは巻き込まれただけで、そっちがこんな事しなきゃこうはならなかったんだけど。
という状況じゃないな。こうなったら僕の手で彼を止めよう。
ここでそれを出来るのは僕だけ。
覚悟を決めて剣を握る。
剣を振るう。
隙を僅かでも見出せば迷いなく上下左右間断を入れずに。
反撃の余地など与えない。攻めて、攻める。
一歩引けば一歩進む。
剣を使わず体を動かして避ける。
「呼吸の仕方が上手い。反撃する余地がないな」
右肩に痛みが走る。
「ここ以外」
咄嗟に追撃の剣を払い距離を取る。
痛む右肩。力を込めようにも思うように入らない。
「もう少し頑張るといいよ。応援も来るだろうし」
「そうなると、そっちの目的は」
「来るまでに終わらせるさ」
速い。
一足で間合いを詰められる。