第五話
比較的空いていた改札を抜け、ホームへと向かう。
「ここからのルートは一本じゃなかったんだな」
マグニフ横断だけかと思ったら、市内にも複数の線路が延びているらしい。
僕達が乗るのは、スティ湖を眺めマグニフ平原を横断しティング丘陵を越えてジェリラックを目指す。
ホームに近づく程、物騒な警官が多い。
「不愉快だな」
クレアが呟く。
「ま、向こうもお仕事だし」
「気にはならんのか?」
「気にする事はないさ」
呆れたのか、関心したのか。クレアはため息を吐いた。
ホームは更に混雑していた。
「はぁ」
思わず出るため息。
「待たせた」
クレアが飲み物を買いに行っている間も見飽きた連中を眺めていた。
「もう一日か、会議が終わるまでここに居るってのも良かったかも」
「今更だな」
「確かに」
アナウンスがもうすぐ列車が来る事を伝える。
ベンチに座り、あちこちに動く報道関係と警官を眺める。
「あれ」
クレアが指差すほうに夕べ相席した女性が強面に守られるように立っている。
目が合い会釈で挨拶を済ませる。
「何してんのかな?」
「父上が来るそうだ。昨日言ってただろう」
「そうだった?」
全然覚えてない。
「お前と言う奴は。彼女は今度の議会に参加するレイリッシュ卿の令嬢だそうだ」
「ふーん」
レイリッシュ卿を知らない。
「で、お出迎えと言う訳だ」
「よく覚えてるな」
「おい。夕べの事だぞ?」
「僕は強面に睨まれてた事しか覚えてない」
列車が到着し、降りてきたお偉方に群がる警官と報道陣。
それを横目に列車に乗り込もうとした時、爆音と悲鳴が轟く。
次いで銃声と怒号。
目を向けると、報道陣は逃げ散り、警官が次々と倒れていく。
クレアを庇う様に砂塵の前に達、目を細めて状況を確認する。
「キカ!」
呼ばれた瞬間には剣を抜き、そっちに走っていた。
倒れているのは五人。その前に両手に剣を持った男が一人。
辺りにはもう報道陣も警官も居ない。
「運が良かったのか、悪かったのか。もうどうでもいいよね」
男は両手の剣を振りかぶり、座りこんでいる二人に振り下ろす。
爆音が轟いてからほんの数秒。その間にあれだけいた人は消えた。
動ける者はそのばから去り、倒れている者は蹲って喘いでいるかそれとも・・・・・・。
「まだいたんだね」
振り下ろされた剣を寸前で受け止め、弾き返す。
振り払い一歩下がらせる。
冷静な瞳。冷たい殺気を纏っている体。両手をだらりと下げて僕を観察する男。
「君の目的も同じ?」
答える代わりに剣を握りなおす。
「それじゃ君に譲ってもいい。結果は同じだから」
体勢を整え、少し足を進めて、
「邪魔するなら容赦しないよ」
言い終わると同時に打ち込んだ。