第四話
ルギー亭にようやく到着。
相席ならすぐにでも、と言う事だったので相席に。
「どうも」
感じのいいお嬢様って感じの人と強面二人。どういう関係なんだ? と勘ぐりたくなる。
「ご注文はお決まりですか?」
無表情にメニューに見入っているクレア。
ちらっと見たメニューに目が行ったのに決めた。
「僕はシェフにお任せで」
考えてもしょうがない。作る本人が薦めるのだから自信があるのだろう。
「私は・・・・・・」
言いかけて悩むクレア。
「一緒のでいいだろう」
僕には早く食べたい一心しかない。
「うるさい」
「コレ。美味しいですよ」
困る店員さん。悩むクレア。
見かねたお嬢様っぽい人が指差した写真をみて、目の前にある物を見比べて、
「これで」
同じ物を注文した。
ルギー亭での食事も終わり、街灯の下ゆっくりと歩いて駐車場へと戻る。
ゆっくりとしか歩けない。が正解だ。
「多いな」
「ここはこんなモンらしいぞ」
正直、知らないがそう言っているのを聞いた。
クレアが小さくため息をつく。
「そうじゃない。警官だ」
言われて見れば巡回や路地路地に無線を持った警官二人組が立っている。
「あっちこっちに・・・・・・何かあったのかな?」
「クレア、少しは新聞を読めよ」
「お前は偶然知っただけだろう」
クレアの言葉は当たっているがそのまま流して、
「三日後にディートにマグニフ平原のお偉方が集まるからその警備とかが理由だろうな」
「ふーん」
「なんでも」
声を落として、耳元で囁く。
「港で殺人があったらしくてな。その犯人もまだ捕まって無いらしい」
「ひゃっ!?」
首をすくめて、耳を押さえるクレア。
「何をするんだ!」
顔が赤い。
「物騒な事を話すにはこうするだろう」
「貴様・・・・・・!」
赤い顔で睨んでくる。
普段は大人びて見えるが、年相応な表情が見えたのが新鮮でなんだか楽しい。
「さて、帰るか」
「フン」
ドン、と背中に衝撃がくるがそれもまた楽しい。
そして、不機嫌なクレアを乗せて長い長いドライブが始まった。
聖堂の人に駅まで送ってもらい、駅近くの喫茶店で朝食を取る。
「クレアは?」
「私は済ませてきた」
「いつの間に」
「お前が起きる前に。だ」
コーヒーを啜りながら、仕事へ学校へと急いでいる人込みを眺めているクレア。
「起こしてくれても」
一口、ハンバーガーを食べようとして目が合った。
「起きなかったんだ」
抑揚の無い発音にいたずらを隠している様子の表情。
「お前、起こそうとしてないだろう」
口元に微笑を残したまま、横を向く。
「まったく。なんてひどいヤツだ」
かくいう僕の声も笑っている。
駅は通勤ラッシュとは違う空気に包まれていた。
あちこちに無線で連絡を取り合っている警官。報道関係らしい連中が通勤時の混雑を更に忙しなくさせている。
「おい。お偉方が集まるのは昨日、三日後って言わなかったか?」
「と言う事は、今日からだと二日後だな」
「間違いを認めるのなら、この状況を説明する義務が生じるな」
「いや~。僕に聞かれても。事前交渉とかそんなんで先に来るんじゃないの?」
納得したのかしないのか、クレアは人込みに紛れていく。