第一話
水平線の向こうに朝日が顔を出す。
ディート市海浜公園。
人口およそ五百万人が住む港湾都市。ディート。
東に大海を望み、都市部を抜けると、スティ湖と呼ぶ湖に囲まれている。
スティ湖から海に流れるリアブル河を挟み、広がるリアブル河を挟み南北に広がるディートの街並。
その南部にはロトニ川が流れ、その先にはマグニフ大平原が広がる。
北部は平原を横断する『クラセド街道』の起点であり終点でもあるレード港に集まる物資は海を越え、
また海を越えてきた物が街道を通り大陸に広まる。
歴史を感じさせる街並。ディートと平原を分かつジーアズ城壁がディート開拓史におけるマグニフにある
部族との戦争を教えてくれる。
いくつもの狭い路地が大きな街道に碁盤の目のように繋がるディート北部から事件は始まる。
夜明け前の港。朝靄立ち込める中を二人の男が歩いていく。
無人の港。聞こえるのは自分たちの靴音だけの静寂。
「今日も異常なし」
おれ達が所属する自警団の任務である毎日の夜間の北部市街巡回の最後、レード港。
そのレード港も一巡して、入り口で確認をする。
「異常なし」
復唱して車に向かう。と。
「何か、聞こえた?」
お互いの顔を見合わせる。
聞こえたのは声。
「どうする?」
先輩の声が震えている。
見回りの直後の声。ついさっき、数分前に終わった見回りの最中にも人影は無かった。
考えている間にも恐怖が増していく。
「どうするも何も」
車に積んであった剣を持ち、勇気を振り絞って音のする方へと足を向ける。
立ち並ぶ倉庫郡を横目に剣を構え進んでいく。
「声は、こっちから」
あれから声も聞こえない。僅かに聞こえた声を頼りに歩く。
「せ、先輩」
影が動いた。
遠く揺れていた影が近づいてくる。
「そ、そこで何をしている!」
先輩が震える声で叫ぶ。
影はぴたりと止まり、おれ達にも分かるほど殺気が広がっていく。
やばい。
これはやばい。
いつの間にこんなに汗をかいていたのか、シャツが肌にべったりとくっついている。
影がゆっくりと近づいてくる。
出て来たのは、背の高い細身の男。
手には赤く染まった剣が二本。
「な、なにを」
「残念だったね」
いつの間に近づいたのか、男は目の前にいた。
直後に先輩が倒れるのを見た直後に、おれも立ってられなかった。