偉大な言葉をリスニング
「……さて、どうしてこうなったのだろう」
私は王の御前で考える。思い出していく。
あの後私はアリンドル様に連れられて城内、それも選りに選って王座に連れてこられたのだ。そこには超ダンディーでイケメンなおっさんが王座に座り、その隣に馬を連れて行った執事おじがいた。おじ×おじである。てぇてぇー。
これまでも酷いがその後もそれはもう酷かった。
「ルイ ガカ スルー カイ クイアセリ……カク カイ シル……! スネ! カイ スネ!!」
知らない言葉で永遠に感謝らしきものを伝えられたかと思いきや、アリンドル様はブチギレられるし変なゴージャスな剣は貰うし!! というかアリンドル苗字だったし!!!!
ちなみに名前はリアルーナだった。
おそらく彼女は勝手に城を抜け出して盗賊に襲われたのだろう。アレクサがクビにならないか心配である。私が養ってあげるからね、なーんて。
そんなことはどうでもいい。
なんか剣を渡された。重いよ。物理的にも精神的にもね。明らかに実戦用には見えない装飾された剣である。宝剣って言うんだっけな。違ったか。
「ルイ ガカ スルー ツロ ライ ノ リサリ ガキ。ルイ ガカ カイ シル サリ……ルイ コ スルー キウイ イサリ ガキ。」
王は、もうすっかり慣れてしまった謎言語で何かを言う。そして執事が私に何かを持ってくる。私は死んだ当時からずっと着ていた制服の上から『いかにも』な上着を着せられた。ちょっと暑い。校長先生のお話ハードモードってやつだ。突っ立ってるのも結構しんどいんだぞ。……今更だがこれ跪いたりしなくていいのかな……?
とりあえず正座でもしようとしたのだが、カーペットに足を引っ掛けて普通に転んだ。アレクサは笑いを堪えきれていなかった。普通に怒られてた。
ああ、そういえばうちの学校は制服がお洒落なことで結構有名だ。それでいて結構頭もいい学校だ。私はまぐれで受かっただけの馬鹿だが。
――この良さげな制服のおかげで舐められずに済んでいるのかと思うと感慨深い。女1人でここまで生きて来れたのも宝くじが当たったのも宇宙に生命が誕生したのもうちの学校のおかげだ……!!――
まあ、今考えると生きていてもどうせいつかは勉強についていけずに留年して、そしていつかは自主退学していただろうし、こうなっても別に何ら損はしていないのである。
〜〜
「あ、でもゲームはしたかったな」
ここにきて未練が見つかってしまった……!
王の話をフルシカト……はまずいので適当に相槌を打ちまくった後、私は『それっぽい服』と『それっぽい剣』を装備したまま、城の一室へ連れられた。どうやらここに泊めてくれるらしい。多分だけど。
部屋は豪華絢爛……とまではいかないがやはりかなり高級感に溢れている。端々から感じるのである、ゴージャスを……!
「よし、探検だー」
そしてあわよくば高値のものを掻っ攫う。勿論盗っても怒られなさそうなものを、だ。
部屋は5畳ほど……とかカッコつけようとしたが、私はそんなに詳しくないから分からない。学校の教室くらいの広さだ。これって何畳……?
窓からは夕陽が射している。
部屋の四隅にはそれぞれ、ベッド、本棚、ちっさい机&鏡がある。ベッドが隅にあるのは嬉しい。真ん中にあったりしたらちょっと窓から飛び出していた。一つ何もない角があるのがとても素晴らしい。すみっこ大好き!
まずは机の引き出しから……と思ったが、普通に何も入っていない。がっかりして天を仰ぐ――仰ごうとした。
つまり、最終的に私が天井を見ることはなかったということだ。しかし、かと言って後ろから刺客に首を落とされた、とかではない。断じて無い。
「……え?」
ただ、驚いて固まってしまっただけである。引き出しから天井までの過程、つまり机についている鏡が原因だ。いや、正しくは鏡に映った姿が問題だ。顔立ちに変わりはなかったのだが、私の長い黒髪の一房が白く変色していた。
いや、正確にはそれも大した問題ではない。何なら目も青みがかってるし。そう、私の姿は問題ではないのである。
「お前は誰だよ……」
鏡には、私にバックハグをキメる謎の美少女の姿があった。
私は天を仰いだ。
そしてまた私は鏡に目を止める。何も映っていないのである。もう驚かなかった。
そう、何も映っていない。
先ほど映ったメイド服の女も、黒髪ロングに白メッシュと化した私の姿も、何も映っていない。
私は天を仰いだ。
それからは意外性もなく、変化した私の姿に見惚れることができた。この鏡は信用できないので髪を一本抜いてみたが、しっかり白かった。髪はきっとストレスで白髪が増えたんだな、きっと。目は知らん。
次は本棚だ!
適当に表紙を見ていく。超お洒落な表紙絵の本ばかりだ。絵本などがないかと思ったのだが……残念ながら見当たらない。
「このまま暮らすなら読み書きも練習しないとだしなぁ……」
子供向けの絵本を所望する私。とても惨めである。
それから私は、適当に選んだ本を適当にパラパラと捲り、挟まれていた乾燥剤……らしきものを盗り、置いてあった角砂糖を三つほど、制服のポケットにあった予備ボタンが入っている小さなポリ袋に保存して盗んだ。見た目はちょっと……何と言うか超違法なアレみたいだが、行為もちょっとどころではない犯罪だ。生きるためとはいえ申し訳ないなー。
砂糖は確実に高く売れる。
私は上着を脱いで寝た。明日も頑張って生きろ私!




