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理解し難い遺体


「ゴメン、ゴメン?」

「ううっ、うぐぅ……ぐすん」


 私は、何故か疑問形で、しかもいつか仕込んだ日本語で謝ってくる残念に抱きしめられていた。

 怖い、怖いよぉ……年甲斐もなく、人目を気にせず泣くくらい怖いよぉ……


 どうやったのか、残念は私の膝を枕に寝そべる形で登場したのだ。そして満面の笑み! 無表情とドヤ顔差分しか見せてこなかった残念の満面の笑みは、少なくとも私にとってはとても不気味だった。


 あの気色の悪い笑みをもう2度と見せないようになんとか言い聞かせた私は、あの茶髪メイドっ子を探していた。

 なんだかちょーっと気にかかるのだ。別に私は何も関係ないのだが乗りかかった船……船で例えるならば不法乗船のようなものだが、まあ、兎に角あの子がどうなったか気になるのだ。気になるったら気になるの!


 と、まあ1人で言い訳しても仕方がない。私は残念と共に城の中へと戻った。するとあの子はすぐに見つかった。

 ちなみにリアルーナちゃんは、先程茶髪メイドを叱っていた赤髪メイドが連れて行った。何かのお稽古があるらしい。

 


 習い事やお稽古についてはそれなりに思い出があったりなかったりするなあ、と少し感傷に浸ってみる。感傷……?

 中学校は住んでいる地域もあってか、お嬢様……とまではいかないまでも、かなり裕福な子供が多かったように感じる。

 因みに、私が裕福な男児を指す言葉を使わず、お嬢様という名称を用いたのは、単純に思いつかなかったのもあるがやはりあのクールでキュートな先輩の影響もあるのだった。

 


 時間にして5分程度だろうか。暇つぶしに残念と軽く小突きあっていたら普通に見つかったので……なんというか呆気なかった。


「…………」


 仮称茶髪ちゃん――残念はどうやら彼女の名前を知らないらしかった――は俯きながらも黙々と掃除をしているらしい。遠目でよく見えないがモップか何かを手に持っている。


「いや、モップにもたれてる感じがすごいな……?」

「……?」


 残念も何か違和感を感じたらしい。茶髪ちゃんは体調が悪いのか、様子がおかしいのだ。というかよくみると手が動いていない。モップを杖にしてやっと立っているようにも思えた。




 其れも其の筈、茶髪ちゃんの目の前には死体が転がっていたのだった。


 


〜〜




 思わず、吐き気を催すようなその光景を目の当たりにして、私がとった行動は他人の反応を見ることだった。


「…………」

 

 残念も流石に険しい表情でじっと一点を見つめている様子だった。



 正直、私は私自身を冷静に見ることさえ出来なくなっていたのだろう。



 残念は私の目を見て何かを言っていたし、口の中には苦みやえぐみが広がっていた。



 さっきまで残念と話して、少し気分が良かったのが功を奏したのか、少しの目眩と嘔吐で済んだ。

 部屋に戻って休みたかったが、その気力は一瞬にして霧が晴れるように散り、直ぐにその場に座り込んで動くことができなくなった。

 気力は霧散したが、視界は霧に包まれたようにぼやけていた。





〜〜





「あ」


 目が、覚めた。

 夕陽が目に痛い。

 下校中の小学生の話し声が聞こえてくる。

 もうすっかり見慣れてしまった私の部屋の天井が目に映る。ここに越してきたのは一ヶ月も前だっただろうか?

 そうだ、全部夢だったのか。

 視線を下げると、いつものようにクローシュが置いてある。中身はきっとパンだ。


 ふと、クローシュから何かが漏れ出ているのが見えた。



 血だった。



 


〜〜

 




 さて、どこからどこまでが夢だったのだろうか。見えた天井は見るからに中世風といったような、綺麗な模様が描かれた、見慣れたものだった。


「…………やっぱトラウマ確定かもな」


 あの光景がフラッシュバックする。

 それにしても私はなんでここにいるんだろうか。残念が運んでくれた? ならお礼を言わないとだね。





 何にせよ頭が回らない。

 一旦、一旦寝よう、そうしよう。

 なぜ探検しただけで死体を見る羽目になっているんだろうか?


 ――そういえば、この世界に来てから、妙に眠い気がする――


 夢、全部夢かも。でも、目が覚めたらまた学校に行かなきゃなのか……


 ――学校、友達は少なかったけど居るには居た。そう、彩音、元気かな?――


 頭から毛布をかぶってみよう、そうしよう。そうしたら安心するんだ。



 人の命は私が思っているよりずっと早く、私に向かっていたのだ。レーザーで消滅させるような、非現実的なあんな死に方が私を麻痺させていたのだ。あの時消し飛ばした盗賊、敵幹部枠みたいな男、血まみれの彼らが脳裏をよぎる。影も残さず消えていった彼らは私を恨んでいるのだろうか? 彼らに家族はいなかったのか? 最後まで、私に憎悪の目を向けていたのではないか?


 そう考えると、ぞっとする。存在しないはずの、私が残さなかったはずの彼らの死体が、瞼の裏に焼きついて離れない。



 残念と共に死亡現場の第一、いや第二第三の発見者となってからどれほど時間が経っているのかわからない。前言、と言っていい程度の時間経過なのかはわからないが、前言撤回。

 私は割とメンタルにダメージを負っていたらしい。

 


 何にせよ、私はこの日、一日中城を探索するつもりだったし、それが叶うことはなかった。私はあの死体に関係ないし、私は殺していない。


 そして私は、震えながらベットにうずくまっていた。

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