たんとお食べパンを
いや!!よくねえわ!!!!!
「いや!!よくねえわ!!!!!」
真夜中、目が覚める。こんな一日を過ごしていては駄目だ!!
上着の胸ポケットに仕舞ったペンらしきあれを手に取る。ちょっとでも調べてみよう。
夜明かりに照らされたそれを眺めてみる。
カチ、ジャキン、ナイフ。
明らか犯罪クリミナル〜。
十徳ナイフとかそういうアレなのだろうか。
というかそれ以前に、
「これ蒼く燃えて、ない……?」
魔法的な何か、いやそれにしては今までと毛色が違うなとは思っていたのだがまさかここまで違うとは。
「蒼い炎がない魔道具? いや、そもそも魔道具じゃない?」
そもそもとして蒼い炎自体が魔法由来の何かなのだろうか?
そう思ってしまうほど手がかりが少ない。
この世界には魔法とそれに準ずるであろう魔道具がある。それによって少なからず私の元居た世界にあった不思議現象の数々は実現可能になっただろう。だがこれは何だろうか。科学どころか魔法でさえ説明がつかない謎……
いや、私にわかるわけねえだろ。
「……ねようか」
こうして私の突拍子もない一瞬の夜は幕を下ろした。
隣に潜り込んでいた残念はベッドから叩き落としておいた。
どんな転がり方をしたのか、2度もガタン、と大きな音がした。
そして数秒後、眠りに落ちる最中、蝋燭か何かの灯が横切った様な気がした。そのまま床で寝ればよかったのに。
〜〜
そしてこれはどういう状況なのだろうか。
時刻は昼過ぎ、私はリアルーナちゃんにわんわんと泣かれながらパンを食べさせられていた。
「ゴドバ〜……」
「高いチョコのブランドみたい」
パンはふわふわで美味しかった。
異世界ということだし、もっとこう……硬くて黒い……って言ったらちょっとあれだけど、ここまでふわふわパリパリカリカリで美味しいとは思っていなかったので正直びっくりした。
私は朝はご飯派、昼もご飯派、夜もご飯派なのだが朝にパンを食べるというのも案外悪いものではないのかもしれない。いや、悪いわけはないのだが。
「とはいえ……」
見渡す限り、パン、パン、パン……
おそらく私が突然のドラゴンにショックでも受けているのではないかと心配していたと思われるリアルーナちゃんなのだが、いかんせん量が多すぎる。私は何だと思われているのだろうか。
……ビームを撃つ時点でまともな人間だとは思われていないのだろうな。
「……ぐすん」
「よしよし。私は大丈夫だからね」
正直に言おう、大丈夫じゃない。多すぎる。パン、多すぎる。
「よ、よーし……ほら、これもこれも……」
「……」
ふはは、ごく自然にパンを食べることを勧めるとリアルーナちゃんは黙々とパンを食べ始めた。
これが、この日の昼の出来事だった。
〜〜
……手伝わせたとはいえ彼女は所詮子供、パンは食べきれなかった。
「わーーー」
ということで、私の部屋はパンまみれになった。
残念は喜んだ。
両手を上げて喜びやがったので右手に一つ、左手に一つ、計二つのパンを持たせた。
「む」
さらに頭の上にもう一つ。
「むむ」
口に一つ。
「んむむ」
困ったな、これ以上置けない。
「……コトハ スネ ゼ」
……何をそんなに怒っているのだろうか?? さっぱりわからないなあ〜。
あ、そうだそうだメモメモ。
「えーと……『 スネゼ→不機嫌、怒る、文句?』と…………何だよ」
私が珍しく……というか初めて真面目にメモをとっていると、残念が後ろから覗き込んできた。
人のメモを勝手に覗き見るなんて酷い奴だな残念は。まあ見られて困るものなどないし今回だけは特別に許してやるとしようか……寛大だなあ私って。
というか何の違和感も持たずに使っていたこの謎ペンだが本当に、マジで本当に安全なのだろうか? いやナイフになる棒が安全なわけないのだが、それ以上にこんなに気味の悪いペンなんて使いたくないんだよね……
ま、残念には悪いが別のペンを探して今後はそれを使うようにしたいな。
この先別のペンが見つかることはないのだが、この時の私がそんなことを知る余地はなかった。
それにしてもこのペン、もうちょっと平和的な道具ならさぞ便利だったろうに。ナイフも便利なんだけど!!!!犯罪臭がね!!!!!
このあと私たちは滅茶苦茶パンを食った。私と残念は運命共同体なのだ。
これが夕方の出来事であり、この日の収穫はパンが食べきれなかったという事実のみである。
これが元の世界にいた頃なら勉強、勉強、勉強で一杯一杯で、今日のような時間を無駄にする一日はとても不快に感じるものだっただろうが……今の私は解放感に満ち溢れている。
焦燥感に追われなくて良い毎日、ああなんて素敵なのだろうか。まるで夏休み1日目がずっと続くような、金曜日の夜が無限にくるような、ガチャで確定演出が来た時のような……最後だけ絶妙にズレていたかもしれないが、そんな細かなものも何ら気にしなくて良いのだ。HAHAHA。




