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日持ちしない気持ち


 今日も良く寝た異瀬琴波であった。完。


 ではない。今日から頑張るのだ、色々とな。



「……あしたからでいいかなぁー……」


 

 とまあそんな決意をしたところで結末はわかっていたもので、私はふかふかなお布団でおねんねしていた。



「……コトハーコトハコトハー、ことことことこと……」



 しかし、気持ちよく寝ていた私は残念に叩き起こされていた。



「残念は目覚まし時計だったのか……!?」



 かなり前衛的なアラーム音にうなされながら、ポカポカと殴られる私の姿がそこにはあった。全開になった窓から射す光はポカポカだった。

 

 私は毛布の中で考える。ぬくぬく。

 朝に弱い人間は二種類に分けられる、と思う。



「起きるのが嫌いな人か、朝が嫌いな人か……」


「コトハー?」



 私は起きる、という行為が嫌いな人の方が多い様な気がする。そして、私もその1人なのだ。



「もうすこし……もうすこしあたたかくいさせて……」


「むぅ」



 誰しも一度はそう考えてしまった事があるだろう。そして、かくいう私もその1人なのだ。


 残念はその整った顔立ち、そして特徴的で親しみを感じさせるジト目をより一層ジトジトとさせ、不機嫌そうに私を起こそうとしていた。


 朝方の毛布の暖かさは恐ろしさを孕んでいる。その恐ろしさに飲み込まれた者は帰ってくることができないとされている。そして、かくいう私もその1人であるのだが。


 しかし私は睡眠に関して友人とあまり相容れない思考を持っていた。

 私は眠る瞬間と眠りから覚める瞬間こそが最も素晴らしい時間だと考えているのだ。ああもちろん平日の目覚めはカスだ。眠ってる間はいつでもクソだ。何もできないし何も感じない。時間を無駄にしている様な気さえしてくる。肝心の夢を見るのは目覚める瞬間らしいし……

 そういう点で私は夜に目が覚めることを許容している……いや、夜に目が覚めることを渇望している。


 ああぁー……いい感じに眠たくなってきた。



「ぬーーー!!」



 おっと、残念よ言語の壁を貫通する呻き声をやめたまえ。意味のわからない言語を話された方が私の眠りが快適になるのだから。


 段々と苛烈になってゆく残念による殴打を甘んじて受けながら、瞼を下す。


 そして私は中途半端に続いた考えを一気に無に返し、心地の良い眠りについ(二度寝し)た。



〜〜


 

「おはよふ」



 2度目の目覚めに残念の姿はなかった。

 なんだ、少し残念だな、と思いながら隣を見るといつも通りの料理が置いてある。

 今日はなんだろうか。



「……ん?」



 クローシュへ手をかけた瞬間、何やら手帳のようなものが目に入る。

 一度行い始めた行動を止めるのは無駄が多い。蓋を開け、中身の目玉焼き(のようなもの)を確認した後で問題の手帳を手に取った。

 パラパラとページをめくると、端に描かれていた猫のような動物の絵が奇妙なダンスを踊った。



「……残念の仕業だな」



 下手くそな絵を見てそう判断した私は胸ポケットに手帳を仕舞う。

 

 手帳にペンは付属していなかった。


 よし、残念を探そう。



〜〜



「いた」



 残念はすぐに見つかった。



「へへへ」



 あいつのことだからキッチンにでも忍び込んでるだろうと思い向かうと、案の定彼女は居た。

 何やらかがみ込んで気の抜けた笑い声を出す残念。



「おーい」

 

「ぴゃぶら!?」



 肩に手を置くと残念は珍妙な鳴き声をあげて飛び上がった。心なしか顔が赤い。それにいつもの無表情が崩れて口角が緩んでいる。



「……おさけか」



 まあ酒を飲んでいようが飲んでいまいが残念は残念なままだろう。このままペンを奪取しましょう!



「なあ残念、これ、この、あー……ペン?」



 私は手帳を開き、何かを書く仕草を伝える。

 


「……? あ、トノハ カフ ゼ」



 ポン、と手を叩く残念。


 残念は服をまさぐり何かを探す。


 ペンを探してくれているんだろう。


「そう、私の服をまさぐってね……!!!!!」



〜〜


 

 その後、結局、当然、ペンを見つけることができなかった残念はトテトテと何処かへ駆けて行った後、一本の棒を持ってきた。


 私に黒い……鉛筆のような形をした棒が差し出される。



「ふーん……変なの」



 格好つけてペン回しをしようとして取り落とす。


 謎の棒が硬い地面と甘いキッスをキメた瞬間、カシャン、と小さな音を立てて……丁度何か引っ掛かりを生むような突起が生える。



「……はい?」



 ……拾い上げ、手帳につけてみる。

 すると、突起はクリップとしての素晴らしい役割を果たした。


 現代日本において一般にシャープペンシルと呼ばれるものに似ているような気がするなあー。すごいなー。



 そこまで考えて、ふと、黒い棒の尖っていない方を使い慣れたシャーペンのようにノックしてみる。


 トン、側面からナイフが飛び出る。


 トン、鍵が生える。


 トン、ビー玉の様な形に変形する。


 ひあ。


 私は腰を抜かした。



 〜〜



 残念に背負われて自室に運ばれた私は、ベッドの上で謎黒棒――ペンでいいか――まあ何というかそれを、カチカチと、トントンと、単純に、連打していた。


 すごいな、これ。


 カチカチ音を立てるたび、形を変えるペン。


 ナイフ、鍵開けetc。それ以外の用途は分からなかったが、明らかに犯罪に使われるそれらの中に混じる最後の一種類、それがペン。


 犯罪道具オールスター、アホのスパイ道具、詰め合わせ重犯罪。


 パッと思いついただけでもこれだけ渾名が思いつく。




 残念?私を世界的大犯罪者に仕立て上げるつもりか??



 

 それはそうとして、ベッドに座らされてしまった私は一日堕落けた(だらけた)。昨日の気持ちはどこか遠くへ旅立ったのだ。アディオス。

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