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四天王的なサムシング


 左手中指に嵌められた指輪が蒼く煌めき、空を焼く光束が放たれる。

 これまで地を抉り取ってきたそのレーザーは、晴天を裂き赤く伸びる炎を穿つ。

 初めて明確な決意と共に放たれた光線は青い空を突き進み、徐々に細くなっていき静かにその姿を消した。


 これにて危機は去った。いや去ってない。元凶が残ってるねん。

 火の玉を吹き飛ばして安心しかけた私だが肝心の元凶は滅茶苦茶生きている。

 頬を伝う冷や汗を拭う。


『ギャオオオオオ!!!!』


 ほらきた……


 巨大な竜がこちらへ急降下し陰が辺りを包む。

 先ほど眼前まで迫った火球とは比べ物にならないほどの巨体に思わず圧倒され、後退りをしてしまった。


 ……こんなやつが普通に生息してるの? 嘘だよね? 流石に特殊個体的な?


「!? ……ラ ガカ スルー ツロ リアルーナ!」

「「――――!!」」


 地震と間違うような轟音と揺れを放ちながら着地する黒いドラゴン。つい気を取られる私だったが、大声で指示を出す好青年とそれに応える騎士たちの雄叫びで我に帰る。


「……リアルーナちゃん、立って、逃げるよ」

 

 何言ってるか分からんけどとりあえずここは『逃げ』だ。剣士どもは戦うらしいが私はリアルーナちゃんを守る。

 

 リアルーナは怯えながらも力強く立っていた。


「コトノセ!」

「分からんけど心得た!!!」


 私の名前を呼ぶラベンダー好青年を背に、私はリアルーナ嬢を抱えて走る。

 私の50メートル走タイムは8秒。爆速だぜ。


「ぐああああ!!」

「ぐ、うぅ……!!」


 背後から剣士たちの呻き声が聞こえてくる。

 叫び声は流石に分かる、っていうだけで嬉しいんだけどそんな場合じゃない。チラリと振り返り、惨状を目にした私は吐き気と嫌悪感と罪悪感と共に走り続け――


「……ル ガカぁ イサリ ス?」


 ――ることができなかった。急ぎ足を止める。


「……だれだよ」


 いつの間にか、私の目の前には漆黒の鎧に身を包んだ見るからに邪悪な騎士が立っていた。


 取り敢えず城へ避難しようと思っていたのだが、立ち塞がる鎧は圧倒的な威圧感を放っている。刺々しい鎧は如何にも人を殺しそうな邪悪極まりない見た目で黒く光って見えた。まるでゴキブリのようなその姿はこいつが残虐な悪役だと示しているように思えた。


 ここで戦うなんて選択肢が出てくるのはイカれたサイコパスかイキった中二病だけだ。


 逃げよう。


 だが、黒鎧はそんな私の考えを見透かしたかのようにジリジリと距離を詰めてくる。

 あの見るからに鈍重な鎧に賭けて全力でUターンする手も考えたが……後ろでは大怪獣が暴れ回っている。まるでパニック映画。

 


「ボス戦は逃げられない、ゲームの常識ー!」


 

 ゲームや漫画だと「お前は何者だ!」とか「なぜここにいる!」とか言うシーンなのだが私はそれができない。残念にも程があった。言ってみたかった。


 うーん………………

 


 おかしーーーー!!! 多分中ボスーーーー!!!

 わたしーーーー!!! 戦績兎のみーーーー!!!


 

 ……ふぅ、一旦落ち着こう。おそらくこいつは魔物か魔人か魔族的なものだろう。どれだからと言って変わりはないし対処法もないが。兎に角味方ってことは絶対にないだろう。さっきから殺気ビンビンだ。

 

 リアルーナ嬢を下ろし、後ろに庇う。ドラゴンに関してはラベンダー好青年を信じよう。

 

 ……このままずっと硬直状態というわけにもいかない、私は剣を構える。勿論王様に貰った豪華な方。


「ふっ……」


 何だと? 鼻で笑われてしまった。そんなにおかしいか!!


 私が動揺を表に出さぬようポーカーフェイスで見つめていると相手も大剣を抜いた。


「ふふふ……ははははははは!!!」

「何がおかしい!!」



「ル ガカ() ワカルぅ ゼ トノハ! スぅ??」



 黒鎧は高笑いと共に何かを話す。それだけならただのいつもの謎言語なのだが今回は少し違和感があった。


 うん? なんだ? この感覚……脳に直接としか言えない。


 不快な声で喋る鎧だ、という感想しか出てこなかったはずが、ノイズ混じりで何かが伝わってきたのがわかる。

『理解る』のだ。直接、何かが伝わってくる。気持ちがわるい……!『は』ってなんだよ『は』って……!


 ……いやまて。


 

「これ 、『私はペンです』とかの『は』……か?」


 

 だとするとこのキショ笑い男は重大な手がかりを持っていることになる。

『ガカ』は『は』なのか?

 ……どうする? どうするどうする??

 こいつは剣を抜いた。ドラゴンと一緒に降ってきて、そのドラゴンは人を襲う。こいつも人を襲う?

 効くかわからないけど撃つべきか?魔法を。

 いや、でも……殺したら言葉の壁は厚いままだ……。

 でもでもでも……


「コトハ……」


 私のスカートの裾を掴むリアルーナちゃん。


 クソーーーーッ!!! どうしてこうなった!?

 昨日までは残念と添い寝したりでウキウキ平和だったのに!! 今日は天気もいいしのんびり寝転がってるつもりだったのに!! まだ朝ごはんも食べてないんだぞ朝飯前の楽勝じゃないバージョンだぞ!!! こんなことになるなら食べてくるべきだったーーー!!!

 お母さーーんッ!!!!! 助けてーーーーーッ!!!!!

 


「よし。撃つ」

「ハハァァァァ!!!」


 空気を震わすデカい声と共に真っ直ぐ突進してくる黒鎧。馬鹿で助かったぜ。


「くらえ! ビーーーム!!……はまずい、から横にスライディングしてからーーーー!!!」

「――――!?」


 突進してくる黒鎧を闘牛士のようにヒラリとかわし、やや左前方に転がることで相手から見て、いや、兜で死角になり見えないであろう右後ろに陣取り左手中指を向けて叫ぶ。


 本日3回目となる光の奔流が黒鎧を飲み込み、消し飛ばす。その光は地を穿ち、轟音と共に辺り一帯ごと黒鎧を襲った。

 巨大なクレーターを恐る恐る覗き込む。

 


「……や、やった……か? 」

「コトハっ……」


 私の名を呼び抱きついてくるリアルーナの目には涙が浮かんでいる。


 華麗に負けフラグを奏でたはずなのだが黒鎧が起きてくる気配は全くない。どうやら完全に消滅させられたらしい。


 そしてなんだか私も疲れた気がする。物理的にも精神的にもだ。


「副作用的な何かなのかな……?」


 魔力を使いすぎた……とか? なんにせよこれからは撃ちどころを考えなければならないかもしれない。撃つことなんてそうそうないとは思いたいけれども。


 だがまあ……それにしてもなんともあっけない終わり方だ。いや楽に済んで安全ならそれはそっちの方がいいのだが。

 ……あいつ、何だったんだろう。ドラゴンに乗ってた? いやドラゴンが人になったのかも?

 ん?


 いや私、何か忘れてるような。


「あ、城削ってないかな?!」


 あのビーム、自分で言うのもなんだけど普通に人殺せる威力してる。いや人殺したし。いや人かわかんないけど……。

 まあ、私が咄嗟に横にずれた理由がこれだった。射程もわかんねえのに真っ正面に打てば最悪城を消し飛ばしかねない。私が困る。


「ふー、とりあえず無事か……」


 危なかったー。危うく砂糖と乾燥剤を転売して生きていく羽目になるところだった。


「……! コトハ!」

「ん?…………ああ?!! ドラゴン忘れてた!?!!!」


 私は間一髪でドラゴンを消し飛ばした。

 


 〜〜



「さてと」


 時刻は夕方。あの後私は好青年に賞賛? された後、王様に呼び出されたがリアルーナちゃんが庇ってくれたため、今は部屋にいる。

 称賛なんかされる立場じゃないんだけどねー。私が考え事に必死になってなければ怪我する人も減らせた筈なのに。死者はいなかったらしいけど少し……いや、かっこつけるのはやめよう。とても罪悪感を感じている。


 ……それと余談だが、あの疲労感は別に魔力の枯渇とかそんなわけではなかったらしい。普通に筋肉痛だったらしい。ドラゴンにも二、三発撃ったけど別に撃った前後で疲れた感覚はなかったし。


「ライ ガカ() スネ〜! カイ スネ〜! ふんふふん〜」


 ……さてと。


 えー、はい。


 残念よ、いつからそんなに言葉が達者になったんだい?

 わたしゃ鼻が高いよ。

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