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襲撃ハプニング


「空はあおい……」


 少しの体幹トレーニング的レッスンを受け、またもや見放された私は木陰で空を眺めていた。

 ガラスの葉が光を反射して目が痛い。木陰陰無しバージョンなのである。

 

 練習に熱中する剣士たちとそれを三角座りで眺める私……

 私は中学時代のとある先輩を思い出していた。



〜〜

 

 

 あの先輩と出会ったのは中学校に入学してすぐのことだった。噂自体は入学前に聞いていたのだが、彼女は想像を超えてきた。

 誰もが振り向く脅威の美貌から生み出された体力テストの成績がこれだ。

 

 50メートル82秒

 持久走測定不能

 腕立て伏せ30秒に2回

 腹筋30秒で0回

 ソフトボール投げはマイナス2メートルで失格


 ……これだけでも明らかにおかしいのだが、彼女の本質は別にあった。

 

 運動音痴な癖に未経験のはずの柔道の授業では無敗

 筆記テストはほぼ全て正答率9割以上をキープ


 そう、何故か動きを見切ってぎこちない動きで確実に攻めてくる彼女はもはや伝説だった。もはや優秀すぎる成績が目立たないレベルのおかしさ。

 中学生にしてあまりにも整った端正な顔立ちも相まって、不気味と思われてもおかしくない日々を送っていた彼女だったがそれは、普段は無口、口を開けば少し抜けた発言、という持ち前の人の良さ?でカバーされていた。


 体育の授業を毎回見学する様子を窓からずっと眺めていた身としては只の可愛さ余って面白おかしい先輩、というだけだったのだが、少し話してみると恐ろしいほど引き込まれてしまった。

 驚くことに、先輩は自身を取り巻く様々な噂を一つも把握していなかったのだ。それどころか自らの行動や言動の何がおかしいのかも理解していない様子だった。

 天然にも程がある先輩を前に、私には庇護欲が芽生えていた。


 それからの中学生活は楽しかった。が、今考えると滅茶苦茶迷惑だったかもしれない。まあいいや。

 毎日のように先輩に付き纏い、お節介を焼くようになった私は徐々に人間味を帯びていく彼女に好意を抱いていた。もちろんライクの方だけど。



〜〜

 


「はぁ、柔道でもなんでもいいから教わっとけばよかったかなー……」


 先輩はド素人らしいし、異世界で中学校の授業で習うレベルの柔道が役に立つかわからないが、無いよりはマシだっただろう。


 まあ実際あの謎先読みスキルは本当に教わっておくべきだったと思う。護身とかにもなるだろうし。


 

 

 そういえば、スキルで思い出したけどこの世界にはファンタジーでよくあるスキルとかって――


 

 と考えたところで金属同士が打ち合うような甲高い音がし、思わずそちらを見る。

 


 ……どうやら私と相対したカカシは四天王の中でも最弱だったらしい。


 私の目に映ったのは鎧を着たカカシの姿だった。

 数体並んだそれは兵士たちに剣で切り付けられている。なんと恐ろしい光景だろうか。まるで罪人達の処刑場。カカシが可哀想だ。


「でも剣で全身鎧、それも金属製の物に切り掛かってなんの意味があるのかね」

 


 ――――ィィィン!


 

 疑問を口にした瞬間、空気を裂くような鋭い音と共に真ん中に立っていたカカシの上半身と下半身が泣き別れした。


 ……ごめんなさい。


 思わず心の中で謝罪する私だった。



「……?」

 


 ふと、いつの間にか隣に座っていたリアルーナちゃんが何やら空を眺めているのに気づく。


 リアルーナちゃんはあの剣術に興味がないのだろうか? さっき体験して飽きちゃったのだろうか。だがまあそれも仕方ない。なんたって今日は雲ひとつない晴て……ん??


 リアルーナちゃんの視線の先に何かを見つける。


「あれは……ドラゴン?」


 どこまでも青い空の中に一つの黒い点が浮かんでいる。


 これでも私は視力に自信があるのだ。一瞬鳥かと思ったがこの距離にしては少し大きく感じる。

 

 やっぱいるんだなー、ドラゴンって。野生で飛んでるってなんか相当やばい気するけど。


 久しぶりの真っ当なファンタジー要素に感動していると突然の光に目を焼かれる。


「ぐわー!?」


 視界は紫の閃光に染まり、まるで太陽を直視したような痛みが走る。


 な、なんだ!? こどものころからたいようはみちゃいけないって教えは守ってきたのに!!


「コトハ!!」


 徐々に視界が回復し、真っ赤な炎が近づいてきていることが分かった。


 あれは……火の玉?

 ……なるほど。上空から火球を吐いて攻撃してきたんだね。


「おい、ゴミドラゴンじゃねえか」


 私は空に中指を向けた。

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