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肉体言語でフィーリング


「うわああああああ!!!!」


 ――ドンッ!!


 語るまでもないなんやかんやがあり、私、異瀬琴波の一生は幕を閉じた。学校帰り、信号無視のトラックに轢かれたのである。

 別に未練があるわけではないが、流石に短すぎる一生だったなー、とは思う。



 

「なんだここ……」




 ……とまあ、こんな死に方すれば転生するのは分かりきっていたことだろう。意識を取り戻した私は、見知らぬ草原に横たわっていた。


「キュイキュイ!」

「うえ!?」


 上体を起こして辺りを見渡していると、突然近くから何かの鳴き声が聞こえた。咄嗟にそちらを見れば、隣に可愛らしいウサギがちょこんと座っているではないか。赤い瞳でじっとこちらを見つめているのがなんとも愛おしい。


「……立派なツノが生えてなければね」

「キュイィ!!」

「うわああああ!!!」

 

 殺人ウサギが私目掛けて突進してきたのでガチダッシュで逃げた。異世界、こえー……


「はあ……はあ……もう追ってきてないか……」


 撒くのにかなり走ったがそこまで疲れがない。というか走るの滅茶苦茶速くなってた。疾風迅雷すぎた。


「これも異世界転生の……なんだ? ボーナス的な奴?なのかなー」

 

 というかせっかくの異世界なのだ。思いっきり魔法とか乱射してみたいものである。試してみようかな!!!


「魔法、出ろー!!」

 

 その瞬間。穏やかな草原は灰燼と化した。


 のどかだった風は吹き荒れる熱風となり、草木を燃やす。ちょろちょろと流れる、透き通った優しい川は濁りきって爆音を奏でる大洪水となった。生きるものは逃げ惑い、その末に安息の地はもうどこにもないことを知り、絶望して炎に焼かれるだろう。何とか目を開けて辺りを見渡す。そこにあったはずの山々は地平線を映し出す空と化した。熱気で揺れる世界を、巨大な肉の塊がその身を焼き、骨となりながら、転がるように歩き回る。空は赤く染まり、三つほどあったらしい月は粉々に砕け散ってこの地に降り注ぐ。

 

 煙が肺を焼き、思わず咳き込む私。

 綺麗に焼けて素敵なステーキと化した殺人ウサちゃん。

 悲鳴をあげて苦しげに身を捩る森の木々。

 


「流石異世界、ゲホッ。月がみっづゴホッゴホッもあるなんでね……」



 はい終わった異世界終わった!!! 見える範囲全滅び祭りーー!!! いつの間にか毒沼っぽいのもできてるしー!!! もう死ねーーー!!!!



 なんか暑さにも熱さにも慣れたから、燃え盛る元草原に寝転がって瞼の裏を眺めていると、神々しい光が瞼を貫通し眼球にダイレクトアタックしてきた。


『やばいだろ……お前……』


 ダンディな声でドン引きされて思わず目を開けると、そこには数分前と寸分違わぬ姿の穏やかな草原が広がっていた。ツノの生えたウサギの群れがぴょんぴょん跳ねている。天国か? ここは。



 ウサギは共食いしていた。


 

「やべー、ありがとう神様!!」



 さて、今後魔法は使わないようにしようかな。とりあえずお腹減ったし人探してご飯恵んでもらおう。


 さあ冒険の始まりだ!!というタイミングでウサギの丸焼きが目に入る。


「お前は残ってるのね…………食べましょう!!!」

 

 ウサギ肉に手を伸ばしたところで、私の中指に高級感のある指輪がついていることに気づく。

 

 宝石の類はついていないが、すげーもだんでちょーいかしてる、といった印象を受ける。


「薬指だったらウサちゃんの耳に引っ掛けてポイ捨てしてたわ。あぶねー」


 ウサギ肉は不味かった。あと、ツノは売れるかもしれないから取っておいた。



〜〜



「お?」


 歩き続けて数十分。なだらかな丘を超えたところで、何やら大きな壁に囲まれた城が見えてきた。巨人でも攻めて来るのかな。そして、城下町が栄えている……ように見える。


「行ってみればわかるか」


 ついでに一文無しだが、このツノをぼったくればなんとか生きられはするだろう。適当なこと……そう、これは伝説の神獣ユニコーンのツノだ!とか言って貴族に高く買わせるのさ。


「……馬鹿なこと考えてると馬鹿が見えてきたな?」


 謎の城目掛けて進んでいると、あからさまな盗賊とあからさまな盗賊に襲われる馬車が見えてきた。しかもこっちに向かってきている。何やら大声で話している。多分脅しかな……

 


「ぎゃはは!! ル サイラ ラ ガキ!」

「ル イウー サイラ ラ ガキ!!」

 

 

 とか言いながら馬車と並走し、時には体当たりを喰らわしている盗賊。馬っぽい何かに乗ってるけどあれは自分で躾けたのかな? 馬って高い印象あるけど。


「ルイ スルー ドードー! ライ ガキ スルー ツロ!!」

「ライ セル……うぅ……」


 一方馬車陣営は、銀髪のイケメン風な執事的ポジションの男が剣で盗賊を牽制している。剣だけにね。


 チラッと見えたが、どうやらお嬢様ポジの人に語りかけているらしい。よく見えないがお嬢様ポジの女の子は……んー、金髪のサラサラヘアーが風に靡いて見えた。遠目でも美男美女だとわかる。怯えるお嬢様を守るイケメン執事、映えるわー……

 


 まあそれはそうとして

 

 

 …………えー、はい。重大な問題ですね。言葉が分かりませんよと。

 …………いや!!まあ遠くて聞き取れないだけかもだし……

 


 というか現状が目に見えてかなりまずい。あいつらこっちへ一直線に爆速で迫ってきている。具体的にはもう50メートルもないくらい。


「ッ!! ルイ ケイロ アー ラーリ!!」


 銀髪イケメンがこっちに気づいて何やら叫んでる。逃げろって言ってるのかな……多分。


「いやもうおせえわ」


 私は爆走する馬車に撥ねられて宙を舞っていた。デジャブ。


「ぎゃはは!! シネ!!!」


 盗賊が死ねだの何だの言いながら、地面に打ち付けられた私の横を去っていく。やっぱ言葉わかるんじゃねえか。


 幸い軽傷で済んだので、すぐに立ち上がり十数メートルは離れてしまった馬車と盗賊に叫んでやった。



「お前こそ死ねバーカ!!!!」




 ――ギュオオオオオオオ!!!!

 


 どうやら知らない間に私の可愛い中指さんも立ち上がってたみたいだけどそれはそうとしてだ。



「なんでこうなるんだ……」



 中指についていた指輪から極太のビームが放たれ、空を切って進むビームにより盗賊は消し炭になった。ついでに馬車もちょっと焼き切ってしまった。あと丘は欠けた。


「……流石に中の人無事じゃなきゃ首切って詫びなんですけど」


 ため息を吐いたりウサギの角を撫でたりして落ち着こうとしていると、馬車から銀髪イケメンが降りるのが見えた。私の方へ向かってきているぞ。


「……逃げるか」


 と決心した時にはもう遅い。もうだいぶ近くまで来ている上に、相手は剣を持っている。逃げちゃダメだ。

 

「あー……オレ ガカ ライ スルー クイアセリ ス?」

「俺画家ライスルー食い焦りする?」


 カレー大好きな画家かなるほど、ってそんなわけあるかーい!……はい。


「……? セル……?」

 

 目の前にはガチ困惑する銀髪イケメン。


 無理があるわな。作戦変更だ……!


「ワタシ、コトバ、ワカラナイ。のーあんだーすたんど。おーけー?」


 身振り手振りで言葉がわからないことを伝える。何かを喋るポーズの後、頭を指さす。最後にバツ印を作って完璧だ!!!……あれ? バツって伝わるか??

 

「……? …………! ライ ワカル ゼ ス? セル、セル…… ライ イウー ゼ スルー クイアセリ サイラ……」


 銀髪イケメンは私の話を頑張って聞いていたが、突然表情を変えてこちらに確認を取るような動きをした。伝わったのかと思って答えようとしたが、イケメンはすぐに頭を抱え、自分の世界に入り込んでしまった。


 ああもう無理だこれ。理解諦めまーす。

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