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作戦当日

「よ」


「『よ』って、当たり前のように来ているけど、不法侵入だからね?」


 コトミは、俺の挨拶にため息まじりに行った。


「なぁ」


「なによ」


「昼間は、いつも何しているんだ?」


 生活パターンが、夜型のせいで、基本昼間の時間帯は寝ている。


「ここが何屋かわかる?」


 コトミは、鎖に繋がれた手で頭を抱える。


「見世物小屋」


「その名前の通りよ」


「運営している時の見世物小屋に来たことがないんだが、いつも何しているんだ?」


「まぁー、客には、物珍しそうな目で見られているわね」


「物珍しそうな目」


「そうよ。髪が金色の人種なんて、滅多にいないから珍しいみたいね」


「恥ずかしいとかは、あるのか?」


「最初は、恥ずかしかったよ。だけど、人って環境に適応していくんだわ。だんだんと、慣れて来るのよ」


「そうなんだ」


「ロックは、何しているの?」


「俺は……何しているんだろ?」


「疑問に疑問を返さないでよ」


 盗むときに、盗んで稼いで、それ以外は、基本トッポ達と秘密基地で話し、一人の時は、拾った本を読んで、読書している。


 この生活をなんて、説明すればいいんだ?


「働きたい時に、働いて、寝たいときは寝ている」


「なによ、その生活。うらやましい」


「コトミも来るか?」


「私を買ってくれたらね。その生活に参加するわよ」


 コトミは、笑顔で答えた。


 その後も、コトミと会話していき、時間が過ぎていく。


「ふぁー」


 コトミが、大きく欠伸をした。


「あ、悪い。話過ぎたか」


 気付けば、夢中で話していた。おそらく、数時間は立っているだろう。


「ううん。大丈夫だよ」


 そういうコトミは、うとうとして、今にも寝そうになっていた。


「また、明日来るよ」


「明日ね……」


 コトミは、そう言うと、座ったまま寝た。いつも、この硬い木で作られた床の上で寝ているのか。


「五千万クス。すぐに稼いで、買ってやるからな」


 俺は、そう言うと、見世物小屋から出る。


「明日。必ず、ヘイホーの仇をとってくる。その後に、コトミを買う番だ」


 家族を大切にする心優しい友人を手にかけた殺人鬼を倒してくると心に誓った。



「あそこが、月と黒猫の拠点か」


 次の日、俺達三人は、グレムに言われた建物の近くにいた。


「ロック。人の数が多いぞ」


 トッポの視線の先には、白シャツに黒いズボン、そして、ナイフなどの武器を携帯している構成員が多数みえる。


「もしかして、俺達が待ち伏せされているー?」


 フーミンは、構成員の多さを見て、不安に思っているようだ。


「月と黒猫のボスは、俺達の技術を必要としている」


 俺達を捕まえるつもりなら、とっくに捕まえているだろう。よほど、通り魔事件が解決した後に、残る問題が重要なのだろう。


「トッポ、フーミン行くぞ」


 俺達は、月と黒猫の拠点前に足を進める。


「何者だ? 止まれ!」


 構成員の一人が、俺達の前に立ちふさがった。


「グレムから依頼を受けた、ロックだ。グレムはいるか?」


「グレム様が?」


 構成員の一人は、困惑した表情を浮かべた。


「おい、こいつが言っていることは本当か」


 周りの構成員も、ざわついている。


 パン!


 突然、手を大きく叩いた音が鳴り響く。


「はい、はい、落ち着きなさい。マフィアたるものスタイリッシュに行かないと……ん!」


 建物の中から、シルクハットの帽子を被った男が出て来た。黒のズボンに白シャツまでは、同じだが、黒のベストを着ている。それに、黒の杖を指先で回しながら、出て来た。その杖、意味あるのか?


「おい、なんか、変な奴が出て来たぞ」


 トッポが、若干引け目な態度を見せている。


「こういう、裏の組織で変な奴ほど、上の立場にいるもんだ」


「変な奴とは、失礼ですね。私は……ん! 普通ですよ」


 話す時、いきなり力む奴のどこが、普通な奴だ。ていうか、まだ俺達と距離あるのに、会話聞こえていたのかよ。


「それで、お前は誰だ?」


「おい、ベン様に何て口を!」


 構成員の人が、怒ったような口調で言ってきた。


「落ち着くのは、あなたですよ」


 ベンと呼ばれていた男は、話し始めた構成員を杖で殴打した。


「ぐあぁぁ!?」


 男は、頭から血を流して悶絶している。


 あんな強く叩いたのに、杖が変形していない。あの杖、ただの杖じゃないな。おそらく、杖に見せかけた武器なのだろう。


「あぁー、すいません。ジェントルマンな私が、汚い所をお見せしました。仕切り直させていただきます。私は、この拠点の管理を任せられています。ベンと申します。スタイリッシュな振る舞いを心がけて……ん! いますので、どうぞお見知りおきを」


「ロックだ」


 俺は、ベンと名乗る男と握手を交わした。


「では、グレム様は中で、お待ちしています」


「そこは力まないのか」


 トッポは、唖然とした表情で、リアクションする。


 俺達は、ベンに案内されるまま、ついていく。


 建物内は、比較的きれいだった。綺麗にされた木の床に、汚れ一つない窓、天井を見ても、くもの巣が一つもなかった。


「マフィアの拠点は、汚いイメージがあった。綺麗に掃除されているんだな」


 木の床に、真っ直ぐ敷かれた赤いカーペットも、こまめに手入れされているみたいだ。


「拠点に、よりますよ。私は……ん! いつ来ても、スタイリッシュに対応できるように、掃除を徹底させております」


 建物内を進んで行く。通り過ぎる部屋からは、構成員だと思われる男達の会話が聞こえる。どうやら、拠点内にも常駐している構成員がいるみたいだ。


「グレム様がいるのは、こちらの部屋です」


 ベンは、扉が二枚ついている部屋の前に止まる。今まで、通り過ぎた部屋は、扉が一枚だった。この部屋は、二枚扉。特別な部屋だと、すぐにわかった。


 ベンは、ドアを三回ノックする。


「グレム様。今日の作戦の主役が到着しました……ん!」


「おう、そうか。入ってよいぞ」


 グレムの声が、扉越しに聞こえた。


「失礼しま……ん!」


 ベンを先頭に部屋の中に入る。


最後まで読んでくれてありがとう2023年11月16日

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